「渋沢栄一 100の訓言」渋澤健著(日経ビジネス人文庫)を読んでいたら、心に響く訓言にあたった。
世の中には、仕事に打ち込める人とそうでない人がいる。
私は、たまたま好きな仕事に出会うことができ、43歳で起業した。
お陰様で、今年で22年目を迎え、仕事が好きなのが高じて、自然に仕事に打ち込むことができたと感じている。
それは、私の中のこだわりがそうさせていると考えてきた。私の場合は、元々、好きな仕事があり、起業せねばならない状況に追い込まれ、仕事で努力した結果を見極めたいとの思いで、ITベンチャー(1998年当時は)を立ち上げたので、自然な流れで会社に寄り添っているのだ。
また、自分が立ち上げた会社というのは、私から見たら、“なかなか言うことを聞かない子供のような存在”であり、無条件の愛情がある。一方、会社には、様々な社員、パートナーが参加して、いろんなタイプの人がいる。参加理由や会社に対する“情”も様々であってよい。
世の中には、いろいろな人がいて、2つのタイプに分けることができる。それは、仕事に打ち込める人とそうではない人だ。
今まで、何が違うのかをなかなか人には説明できないでいた。
仕事の質を高めるための方法を、渋沢栄一は説明している。つまりこうだ。
「味わいを感じる心を持てば、仕事に打ち込める。」ほぉ~。
ここで渋沢栄一が言っていることは、自分の“趣味”のある行動を取っていれば、必ず精神を込めて、仕事をやり遂げるだろうということだ。
では、趣味とは何だろう。趣味とは、好み、楽しみのことであり、理想、欲求といえるかもしれない。言い換えれば、物事の味わいを感じ取る力のことだ。
このことは、人が、人らしく生きるうえで勘違いしやすい大事なことで、“アタマ”で考えることではなく、“ココロ”で感じろということなのだろう。
もし、仕事に味わいを感じないまま仕事を行うとすれば、人に決められたとおり、あるいは、命じられるまま職務を実行することになり、工夫や改善は生まれないし、楽しむことはできないだろう。人間は機械ではない。良い仕事を行うには、仕事に情を込めて行うことが大切だと私は考える。
いわゆるプロフェッショナルであるということは、“趣味”の部分が、仕事の中に存在するはずであり、それがあるからこそ、こだわりが生じて、よりプロフェッショナルならではの他を寄せ付けない結果を生むことができる。
渋沢栄一は、江戸時代に生まれて、現代に残る500社以上の会社を設立した人だ。現代のような、企業の社会が存在しないし、仕事の概念も存在しない時代だった。その時代に仕事の成果の差を、“趣味”という概念が、深く関係していることに気付き訓言として残している。
私にとっては、驚きというしかない。
これから取り組む仕事の中に味わいを感じつつ、経営を進めてゆきたい。このことを人に伝えるのが私の使命の一部なのかもしれない。
忙しい時こそ立ち止まり、仕事に対する“ココロ”を点検してみてはどうだろうか!
以上