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次世代システム部員の持つべきスキル


 


今回は、前回の“次世代システム部門の組織“を担う人材が、どのようなスキルを持てば良いかについてお話したい。言わずもがな、ここでのスキルは本シリーズのアンチパターンとして繰り返し登場するシステム開発をベンダーに丸投げしたり、ユーザ・ヒアリングの通りシステム化したりする安直なものではなく、自社の情報システムの将来を真剣に考え、ビジネスに最大限に貢献するシステムを設計する一員としてのスキルに他ならない。

なお、持つべきスキルは多いに越したことはないが、ここでは次世代システム部門の役割を果たす為に必要不可欠なスキルを厳選した。これらは企業内システム部員のもつべきコアコンピタンスであり、他の組織では習得が難しいスキルである。以下にその能力と、それを身につける手段について☞で示した。

1.「自社のビジネスに関する正しい業務知識を有する」

・自社のビジネスの状況を、ベンダーより深く正確に、ユーザより誇張なく客観的に理解できる
☞多くの業務アプリ開発・保守を経験する。現場業務経験も役立つが、必ずしも必須ではない

・上記に加え、一般企業における基幹業務(会計、人事、SCMなど)のセオリーを理解している
☞経営学の書籍や外部講習等の座学により習得可能。(情報源は社外にあり)

2.「モデリングをはじめとする抽象化能力を発揮する」

・データやプロセスのモデリングを通じて自社とその周辺の情報流通のしくみを設計できる
☞異なる分野のモデリングを経験し、“会社“がどのような仕組みで動いているかを知る

・ソフトウエアのパワーの源泉である抽象化能力を身に付けている
☞プログラムコードの基礎知識+各種モデリングによるOJTで抽象化能力を養う

3.「組織横断の全体最適を考えられるバランス感覚を持つ」

・全体最適を考える為に必要な、全体構造(アーキテクチャ)の設計セオリーを身に付ける
☞社外勉強会への参加や書籍により、市販パッケージソフトウェアの構造を知る

・従来のプロマネスキルにプロデューサ的要素が加わったリーダーシップを発揮する
☞プロジェクトのQCDに加えて、プロダクトの出来栄えを重視する評価制度の導入

4.「 新たなIT-SEEDSがもたらすパラダイムを描ける」

・新たなIT製品・サービスを評価できる目利きとしての能力を養う
☞絶えずベンダーから発信される新技術や先進企業の適用事例をウオッチする

・対象が効率化から価値創造へ向かう中、自社の文化への適合度合いを判断できる
☞ユーザ部門(特に現場)との日常の接触を絶やさず、課題の真因を探る

いかがであろうか。上記のスキルは、①自社を知る⇒②システム化企画ができる⇒③業務のBPRが描ける⇒④イノベーティブなシステムにする というストーリーを実践する為に必要な“人材像”を順に追ってみた結果である。繰り返しになるが、他部門でも必要となるプロジェクトマネジメント、戦略立案、ソーシング等のスキルは省略した。

ところで、我が国では2006年にIPAからITサービスを利用する側のスキル標準(UISS)が公開されている。こちらは網羅性に長けた教科書であり、組織の大きさやアウトソーシング度合いに応じて自社用にテーラリングして用いるものである。本ブログは、全体を網羅する事はひとまず置いておき、次世代システム部員のコア・スキルに絞り込んだものである。従って、企業の大小やシステム部員の数は問わない。例えば、上記の1~4の全ての知識を持った究極の人物がいても構わない。

近年、企業システムの大規模、複雑化とともにアウトソーシングが進み、高度に標準化、分業化されたことは、皮肉にもジェネラリストの枯渇を招いたのである。ITの最終受益者であるユーザ企業にとってぜひとも必要な人材である。なお、ここで言うジェネラリストには、技術や業務に関して特段の専門性を持たない”人使い上手”は含まれない。飛び抜けてはいないが、複数の専門性を兼ね備えた人材の事を言っている。

 

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中山 嘉之
1982年より協和発酵工業(現、協和発酵キリン)にて、社内システムの構築に携わる。メインフレーム~オープンへとITが変遷する中、DBモデラー兼PMを担い、2013年にエンタープライズ・データHubを中核とする疎結合アーキテクチャの完成に至る。2013年1月よりアイ・ティ・イノベーションにてコンサルタントを務める。【著書】「システム構築の大前提 ― ITアーキテクチャのセオリー」(リックテレコム)

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