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次世代システム部門の組織設計


今回も前回に続きマネジメントに焦点を当てたテーマを取り上げる。マネジメント系第2弾は、当ブログシリーズでこれまで語ってきた“アーキテクチャー主導の企業情報システム”を実践して行く為に、企業内システム部門はどのような組織形態をとることが良いかについてお話したい。

新たな組織設計をするには、最初に、その組織が持つべき役割について再定義することが必要不可欠である。以下に次世代システム部門が持つべき役割を列挙したのでご覧いただきたい。ここでは、ありきたりの業務分掌とは異なり、どのような組織的な強み(ケイパビリティー)を持つべきかを意識したものになっている。言い換えれば、システム部門でなければ出来ない仕事(現在出来ているかどうかは別として)を厳選している。

1.「自社にとって最適な情報処理の仕組みを迅速にユーザに提供する」
ベンダーやマスメディアの受け売りではなく、自社の事業規模、財務体質、文化に見合った情報処理システムを選定、設計構築してタイムリーにユーザに提供する。そしてユーザとは、経営者かつ現場担当であり、経営に資すると同時に現場にも利便性をもたらすものでなければならない。

2.「組織横断的な業務改革(BPR)を提案しビジネスに貢献する」
業務分析~問題抽出~解決策の提案~プロジェクト企画を本業にする。外部の知見を取り入れることはあっても、この部分をアウトソーサに丸投げすることは、自らの存在意義を失うことと等しい。新しい業務形態のデザインは、モデリング手法を用いて科学的に行なう必要がある。また時には、アジャイル手法にて実装までを行うことでリアリティを高めることも必要である。

3.「稼働中のシステムに対して常に高い運用サービス品質を維持する」
SCOPEがどんなに拡大しようとも、企業システムのサービス品質を保証しなければならない。とりわけ提供するデータ品質には気を配らねばならない(DMG*の常設)。また、システムのアーキテクチャー転換サイクルが早まるので、将来を見据えた移行シナリオを絶えず描き続けるチームも必要となる(AMO*の常設)。
DMG: Data Management Group、AMO: Architecture Management Office

4.「 IT-SEEDSはベンダーを活用してタイムリーかつ積極的に取り込む」
激変する先端的なIT部分の研究は、これを生業とするベンダーに任せるものとする。しかし、ビジネスの要請にタイムリーに応える為には、数あるITサービスから自社に最適なものを選別する能力は備えていたい。また、新たなIT-SEEDSの導入によって大幅なITコストダウンを実現する事も多い。新たなIT-SEEDSなくしてイノベーションは起こり得ない。

以上、厳選した4つの役割を掲げてみた。では、このような役割を実行する組織の形態はどのようなものになるのだろうか。図1にその一例を記載してみたので、ご覧いただきたい。システム部門は、ビジネス・イノベーションを企画・実行する”攻め”のユニットと、エンタープライズ・アーキテクチャを維持しつつシステム運用保守サービス品質を管理する”守り”のユニットの2つから成る。(いずれの組織も社員+アウトソーサ人員で構成されるが、組織としては一体で表現している。)

ビジネス・イノベーション・ユニットには、各種のアプリケーション開発プロジェクトと、新たなITインフラを企画する2つのグループが存在し、いずれも次世代システムへ向けて牽引するエンジンとなっている。開発プロジェクトは業務アプリ中心に発生、消滅を繰り返し、インフラ改革チームは文字通り新たなインフラを追い求める常設の組織である。特筆すべきは、ITインフラ企画Grp内の新技術評価チームの存在だ。上記のシステム部門の役割の4.を実践する為に必要不可欠なチームで、たとえ1人になっても潰してはならない組織である。

システム・マネジメント・ユニットは、サービス品質を維持する為の2つの組織で構成される。EA管理Grpは直接ユーザ向けサービスを行なわないが、システム運用と開発プロジェクトの間にあってITアーキテクチャーを維持する役割を担う、システム部門内のサービス組織である。特筆すべきはBA、DA、AAの整合性をとるAMOの存在である。企業システムの大型化に伴って、PMOのようにアーキテクチャーも横串を通す組織が必要となる。なお、TA層は移り変わりが激しくしかも、ビジネスへ直接的パラダイムシフトをもたらす起爆剤であることから、隣のビジネス・イノベーション・ユニット内のインフラ改革チームに位置している。

もう一方のシステム運用Grpは、ユーザ向けに直接提供するサービス品質を管理する役割を担う”システム部門の顔”である。業務アプリを担当するチームとオペレーション品質を担保するシステム運用チームの2つから構成される。特筆すべきは、データ管理(DMG)の存在である。システム開発におけるDBAや、EA組織のDAチームにありそうな組織であるが、成熟した組織では、データ管理は日常運用としての役割でなければならない。(将来のデータ管理組織はシステム部門を越える全社的データスチュワード機能の配備にまでおよぶが、その際のシステム部門側の窓口となる)

以上、今回は次世代の企業内システム部門の組織設計について言及してみた。進化のスピードが速いIT環境を相手にする未成熟なシステム部門の組織設計はかなり流動的に考えざるを得ない。これといった固定的な正解があるわけではないのは承知の上で、自身の考えるシステム部門像を書いてみた。少しでも読者の皆さんのヒントとなれば幸いである。

 


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中山 嘉之
1982年より協和発酵工業(現、協和発酵キリン)にて、社内システムの構築に携わる。メインフレーム~オープンへとITが変遷する中、DBモデラー兼PMを担い、2013年にエンタープライズ・データHubを中核とする疎結合アーキテクチャの完成に至る。2013年1月よりアイ・ティ・イノベーションにてコンサルタントを務める。【著書】「システム構築の大前提 ― ITアーキテクチャのセオリー」(リックテレコム)

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