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業務システムの伸びしろ(生産管理システム)


今回も引き続き業務アプリの伸びしろについてお話ししてみたい。今回のアプリは生産管理を取り上げてみたい。メーカーに興味がない方でも、計画系の需要予測あたりは関係すると思われるので参考にしていただければと思う。なお、生産管理システムも、御多分に洩れず、製品の種類によって、システム形態はかなり異なるので、ここは、製造リードタイムがある程度の日数を要する見込生産形態でかつ、装置産業を対象にしてみたい。今回もユースケース図を添えたので適宜ご参照願いたい。

まず、生産管理システムの機能は大きく”計画系サブシステム群”と、”実行系サブシステム群”に二分され、前者は如何にして在庫をミニマイズする生産計画を立案するかが目的で、後者はその計画に基づいて出来る限り狂いなく生産を実行しプロダクトを出荷可能な状態にするかが目的である。いずれも今後、他の業務アプリ以上に、新たなITの技術革新の影響を大きく受け、様変わりする可能性を秘めている。

最初に計画系から、その伸びしろを探索してみたい。まず、生産計画の元になる情報は、需要予測である。原材料の調達計画等も全てこれがベースになる。私も前職時代に、過去実績をベースにウインター流指数平滑法なんぞを用いて自社製品の需要予測システムを作成したものだが、いかんせんファジーなマーケット情報は一切その予測因子に加える事ができていなかつた。これに近年のビッグデータ&AI手法を用いる事で、需要に大きく関係する外部データを取り込んだ予測ができれば、予測誤差は従来より格段に小さくなる事が想定される。もちろん予測は予測でありドンピシャリ当たる事へあり得ないが、予測誤差の縮小は、そのまま安全在庫量の減少を意味するので、大いなる改革となる。話はそれるが、近年の天気予報はかつてよりかなり精度が向上しているように思われる。

企業の予測担当者の仕事は、ひたすらこの予測システムのパラメータ・チューニングとなり、異常値が出力された際の解析等が唯一残された業務となる。ちなみに、上記は見込み生産方式の場合であり、発注〜製造リードタイム〜製品完成迄、顧客に待ってもらえる”受注生産方式”の製品においては、無在庫に近い運用ができるので、このような複雑なシステムは不要である。

次に、計画系では上記のタイムスパン(例えば月や週)の需要予測値と直近の在庫情報をベースに、製造日程計画とそれに基づく原材料補充計画に落とし込む。ここでは、製造ラインの競合状況や装置キャパシティ、人的リソース、原材料の状況などを加味して最適な日程計画を組む事が欲求される。この分野でも、従来人手の関与が多かった部分が、AIの活用でより適正なガイドが組まれることになるだろう。話はまたそれるが、近年では、将棋や囲碁の世界で人間がコンピュータに勝つことがニュースになる時代である。それでも現実には計画通りに事が運ばないケースは十分に起こりうる。将来起こり得るであろう全ての因子を事前に察知する事は不可能である。このようなケースでの日程計画変更や、割り込み製造等のシステムも必要となる、が細かい話になるので、ここでは説明を省略する。

さて、実行系における伸びしろはどんなものだろうか?実行系のサブシステムには、日程計画に基づく製造指図、製造工程管理、設備コントロール、製造実績把握、品質管理、製品計上等があるが、いずれも、もはや人間の手を介在する入力画面の殆どが消え失せる事になる。IoTの進化によりマシンToコンピュータのインターフェイスにとって変わり、”入力ミス”はこの世界では死語となる。

工場の現場から人間はほほ消え失せ、管理室でモニターの異常値を監視する数人が稼働しているだけになる。(化学品などの大型で自動化の進んだ工場では20年前からこうなっている)皮肉にもIoTは人員のさらなる削減を加速することになるだろう。ユースケース図を見ていただきたい。もはやUMLユースケース図のアクターが、人型をしている事が不似合いであるとしか思えない程、アクターはデバイス化している。リアルな人間は、ひたすら監視とチェック。パラメータのコントロールに専念する姿が窺える。ただし、どうであろうか、システムが正常に稼働している時は問題ないが、ひとたび異常な状況に陥ったならば、人間がリカバーするしかないのだろうか。そこには、かなりのフェールセーフを考慮した二重化のシステムが必須である。

今後は従来にも増して、異常時のシステム設計が重要な時代に突入する事は間違いない。そして、その設計は必ず業務と密着して行われなければならない。このような設計をする業務コンシャスなIT人材の育成が急務である事になる。「これが難しいので製造をアウトソースしたらどうか?」という声も聞こえてきそうであるが、製造アウトソーサーのミスが発注側の品質管理責任を問われる事は明らかであり、根本的解決にはならない。また、上記の求められる人材が製造部門発でも構わないが、情報システム部門の生産管理担当者はこれと同等に渡り合えることが求められることになる。

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中山 嘉之
1982年より協和発酵工業(現、協和発酵キリン)にて、社内システムの構築に携わる。メインフレーム~オープンへとITが変遷する中、DBモデラー兼PMを担い、2013年にエンタープライズ・データHubを中核とする疎結合アーキテクチャの完成に至る。2013年1月よりアイ・ティ・イノベーションにてコンサルタントを務める。【著書】「システム構築の大前提 ― ITアーキテクチャのセオリー」(リックテレコム)

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