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「本物のIT実力者とは、どんな人物かを考えてみた」~ 企業のIT力向上のために ~


 私は30数年にわたり、様々なITの現場をみてきた。私が経験上考えるITの実力者とは、以下のような姿だと思う。実力者として認めるには、人格、物事に取り組む姿勢、コミュニケーション力などの人間力も重要であることは間違いない。しかし、専門の知識と経験がなければ、そもそも専門家とは言えない。

① プロジェクト立ち上げのプロフェッショナル
IT企画、アーキテクチャ、プログラムマネジメントに精通、プロジェクトの立ち上げ段階で信頼できる

② 品質のプロフェッショナル
品質(数値管理、品質モデルの実務ノウハウ)に強く、工程のマネジメントを粘り強くできる

③ メソドロジーのプロフェッショナル
方法論、EAに精通し、工程全般のタスク、サブタスク、成果物、テクニックの設計ができる

④ ソリューションのプロフェッショナル
要求とソリューション定義のプロであり、正当な技術力、判断力、中立性を有する

⑤ 稼働中システムの洞察のプロフェッショナル
稼働中システムの問題発見、改善、改革、マイグレーション設計を提案できる

⑥ 非機能要求適合・検証のプロ(プロトタイピング適用設計)
クラウド、オンプレなど環境を問わず、非機能要求についてプロトタイピング手法などを用いて確認し、柔軟で拡張性のある基盤の設計ができる

⑦ テストマネジメントのプロフェッショナル
大規模開発時の特定の品質目標を定義し、テスト手法・テスト設計・テストマネジメント・テストの自動化の方法を設計できる。テストに関わる理論と実務の高い能力を有する。

 上級の専門家は、まとまった課題についての見通しが利き、現状の問題課題を直感的に判断し、困っているチームや個人に助言やファシリテーションもできるが、その段階から仕事を直接手伝うこともできる人である。

 CIOは、このような人が社内に何人いるか把握できなければならないし、居ない場合は、育成・採用・調達などの手段を進める必要がある。

 ITの専門領域の分類と必要な仕事のまとまりは、通常ずれている。まとまりのある仕事の単位で任せられるかどうかで企業の実力は決まってくる。企業により専門家育成の順序と必要な分類も異なる。だから、CIOには、状況を見通す力が要る。

 ITマネジャは、上記の分類で自分自身も成長し、人も成長させる役割であり、その頂点がCIOあるいはIT部門長であるべきだ。

 残念なことに現実は異なる。それこそが、問題だ。その結果、多くの企業のIT力は向上しないし、人の成長力も低い。

 我々はこの事実に気が付いているが、実際に手を打っている企業は少ない。

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林衛
IT戦略とプロジェクトマネジメントを中核にITビジネスのコンサルティングを行うアイ・ティ・イノベーションのファウンダーであり社長を務める。◆コンサルの実践を積みながら英米のIT企業とかかわる中で先端的な方法論と技術を学び、コンサルティング力に磨きをかけてきた。技術にも人間にも精通するPM界のグランドマスター的存在。◆Modusアカデミー講師。ドラッカー学会会員、名古屋工業大学・東京工業大学などの大学の講師を勤める。

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