去る10月19日、日経BP社主催のITPro EXPOでJohn Zachman氏を招聘し、約1時間の基調講演と続いてチュートリアルが行われた。私は、Iasa、DAMA、IIBAの共同の開催の世話人の一人としてかかわった。
Zachman氏は、82歳にも拘らずエネルギーが溢れており、すごく元気で、米国の講演先から直接来日し、その翌日には実に身のある講演をしてくれた。
今回は、その講演で特に印象に残ったことを報告したい。
IBMでビジネスシステム・プランニング(ビジネスシステム計画の方法論)のコンサルタントをしていたZachman氏は、1987年にIBM System Journal誌に「A framework for information systems architecture」という論文を掲載した。
ここでZachman氏は、建築物、航空機などの大規模で複雑な製造物が作り出される工程に倣い、ビジネスシステム設計・構築においても計画からシステム開発までの各工程の推進者ごとに“アーキテクチャ”を記述することが必要だと主張した。この時、記入の仕方をマトリックスで示したものがザックマン・フレームワークと呼ばれるものである。
初期のザックマン・フレームワークは、6×3のマトリックスであったが、後に改良、拡張され現在では、6×6のマトリックスになっている。
Zachman氏が主張するマトリックスの基本的な考え方は、組織の複雑な構造を体系的に理解できるよう(定義、観測のため)各要素の範囲や関係を分類・整理したものである。その後段階的に発展して現在の形になり、さらに改良が続けられている。
ちょうどこの時期に、IBM社が、顧客のビジネスシステムの計画・分析のためにプランニングの方法論を使っていることを知った。IBM社の計画手法の裏側では、Zachman氏が、思い悩み複雑で変化する企業あるいは企業活動の「みえる化」に努力していたことを何年か後で知ることになるのだが、当時、近代的・合理的な計画手法を探していた私は、縁があってZachman氏と並ぶもう一人のモデル化方法論の巨匠である、ジェームスマーチン氏に師事することになった。私はジェームスマーチン社に1994年から1998年まで所属しておりザックマン・フレームワークと同様に有名であった統合化方法論であるIE(インフォメーション・エンジニアリング)を学び、多くの日本の顧客に紹介し、導入を推進していった。
Zachman氏が、今回の来日で語ったことで目新しいことを報告したい。
①マニュファクチュアリング手法からエンジニアリング手法
各段階のアーキテクチャを記述すれば、良いビジネスシステムが完成するというものではなく、アーキテクチャを記述することで、より創造的な視点を持ち、上位のモデルから、それに続くモデルへの思考を発展させる方法としてフレームワークを使用することが重要であると言っているのである。とはいえ、70年以上にも亘って使われているマニュファクチュアリング手法はその考え方が無意識のレベルで人々に浸み込んでいる為、アーキテクチャを創造的方法として使うということは(理解されなかったり、反発があったりで)困難が伴う、とも言っている。
②メソドロジー(方法論)とオントロジー(存在学)
まさに、ビッグデータ、クラウド、IoTなどを統合的に推進するためには、Zachman氏が改良を重ねてきたフレームワークの要素を存在学的に理解することが必要である。それは、多面的なビジネスを理解する為の道具としてアーキテクチャを捉えることが大事なのである。多くの人たちは方法論(モデルの整合性)に焦点をあてて様々な活動を行ってきたが、(ビジネスの“みえる化”を完全に実現することを目指すという方向ではなく)“思考の道具”としてフレームワークを活用することが、より重要になることをZachman氏は、改めて主張した。
10月19日ITPro EXPOで、Zachman氏の講演についての参考情報(Iasa後援)
http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/101803031/101900056/
世の中で、様々な方法論の適用、標準化の推進が行われているが、Zachman氏が辿り着いたオントロジー(存在学)としてフレームワークを理解することの意味は、私の感覚とも一致しており、本質を突いていると思う。
さて、弊社開催の ITIフォーラム2016 in 東京 が、1週間後に迫ってきております。
まだ、お申込みでない方、是非、ご参加をお願いいたします。アーキテクチャにかかわる現実的なアプローチについても情報提供いたします。
【日程】2016年11月15日(火)13:30~
【場所】ホテル ルポール麹町
詳しくは、「 ITIフォーラム2016 in 東京 」ページをご覧ください。
是非、会場でお会いしましょう。