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【連載その7 最終回】アイ・ティ・イノベーション18年の軌跡、未来に向けて


【第二創業期・未来に向けて(2012年7月から2016年7月)57歳~61歳】

 全7回に亘ってITI(アイ・ティ・イノベーションの略称)18年の歴史について述べてきた。こうしてあらためて振り返ってみると、いろいろなことを社員と一緒にやってきたと思っている。2~3年毎に新しいことを1つ2つ始め、上手く行くこともあればそうではなかったこともあるが、チャレンジしたからこそ、それなりの成果が出たのだと思っている。
 ITIの18年の歴史を踏まえ強く心に誓うのは、チャレンジし続けるという姿勢だ。これは決して変えてはならない。チャレンジし続けるには、会社や自身が担う仕事に対する強い当事者意識が必要である。加えて、どんなに苦しい局面であっても、それぞれの目標や目的にあるいは競合他社等に対して、あともう一歩前にと歩みを進める粘り強さや努力するカルチャを一層磨き上げていきたい。

 経営者としての私は、現在のITIの姿に拘らず未来の新しいITIの姿を模索し描き出し、現在の仲間もそして将来の多くの仲間も、共に未来に向けて引っ張って行く、これを誓おう。
 こうして7回に亘り歴史を振返ったわけだが、これは我々の現状As Isを確認したともいえる。とすれば、新しいITIのTo Beは、どのような姿にすべきであるか。そしてそれを実現する方策は何か?

・グローバル事業が進化し誰もが納得する会社の主力の事業に成長する。
 インド、中国、マレーシアなどで展開している事業を更に発展させる。様々な国の人が、実際に一緒にプロジェクトを行い、混成チームとして価値を提供できている、というところまで到達しなければならない。我々はこれからもITIらしく泥臭いプロジェクトを数多く実施していく。それにより実力、地力のある組織へと鍛えられる。多様性のある世界ならではの、本当の価値を生み出せるようになってはじめて本物の事業と呼べる。

 IoTビッグデータの開発基盤をインドに用意し、お客様に新たなビジネスモデルの実験の場ならぬスモールスタートの場を創ることである。
ITと自然科学が得意な、優秀なインドのエンジニア。ビジネス・イノベーションに強く拘りを持つ日本の優秀なビジネスマン。彼らが共に、多様性を持ちつつコラボレーションする場を創るのだ。両者の協力関係を構築することで、新たな変化へのきっかけが生まれ、切磋琢磨、有体に言えば、デコボコ、アレコレしながら、そういったぶつかり稽古を通して新たな価値が生まれていく。当然苦労はするが、一旦協調が実現すれば、大きなイノベーションを起こせるに違いない。

 少し視点を変えてみよう。舞台はインド。日本とインドの優秀な人材が今や遅しと控えている。では、舞台装置や脚本はどうなるのであろう。
私は今後のIT基盤という舞台には、非構造化データを含む巨大なデータを対象としたリアルタイム処理が求められると考えているのだが、それには、どのようなアーキテクチャのクラウド環境を選択するかが大切だ。また、データの収集、選択、整理統合、分析、そしてデータを分かりやすく見せる化(グラフ化、動画の扱いなど)を高速で実行できる機能も必要になる。
 脚本家たる企画や設計や関わる者には、今までとは違う洞察力やセンスが必要になる。新たな価値を生み出すためには当たり前のことなのだが、現実にこのようなチームを創ることが容易でないことは皆様十分ご存知であろう。しかし、ここでインドという異文化環境、そして日本とは異なった強みを持ち、異なった経験や発想を有する人材、彼らの存在が有効になってくるのだ。

・ITアーキテクチャ設計に関わる事業が大きく拡大する。
 アーキテクチャの設計をITIの事業の柱にする。アーキテクチャ設計の手法に拘り続け、何度も何度も改良を重ね、中身の濃いサービスを作り上げる。規模が大きくて、複雑なアーキテクチャの設計ならITIに任そう。このようにいわれるような優秀な技術者集団を構築したい。

 今後の事業の技術軸の中核を担うのは、アーキテクチャ設計とマネジメント支援事業である。当社は、PM、PMOの分野では10数年、様々な技術、ノウハウを蓄積し、お客様に提供してきた。これからの時代でより重要なことは、AMO(アーキテクチャ・マネジメント・オフィス)の必要性をお客様に理解していただき、統合的なサービスを確立することである。
(1) AMOの枠組みの中でEA2.0(次世代EA)のコンセプトに基づいてシステムの疎結合化を実現するMDM(マスタ・データ・マネジメント)を支援・推進していく
(2) 更には、トランザクションの統合化も支援・推進していく
(3) その延長線上に、企業のIoTビッグデータの基盤構築とその上で稼動する新たな仕組みの導入にかかる支援・推進を行っていく
(4) この事業には、新鋭のコンサルタントとグローバルの力(上述のインド等)を統合した活力のあるチームが必要であり、そういったチームを編成する
(5) (4)のチームを構成する新鋭のコンサルタントを育成、採用していく(必要な研修なども開発し、同時に顧客にも提供していく)

・社会の変化に逆らわず変化を生かした事業が創造されていく。
 社会的なギャップに注目し、新たなニーズを発掘し事業を実現する組織を創りたい。
このためには、未来に通用する会社の役割、雇用方法を変化させなくてはならない。
(1) 日本における高齢化という課題からは逃れられないが、逃れるのではなく、それを是として、若い人たちやシルバーの人たちが協調できる環境を用意していく
(2) 子育てや介護などの事情で時間制約のある人たちに強みを活かして働ける場を用意していく
(3) 経営は徐々に次の世代にシフトさせる。

 ここでは方策、施策というよりも寧ろ願望的なTo Beが並んだかもしれないが、できる限り楽しく、これらの課題に社員と共に取り組んで行きたい。

これが、今の私の心境である。

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林衛
IT戦略とプロジェクトマネジメントを中核にITビジネスのコンサルティングを行うアイ・ティ・イノベーションのファウンダーであり社長を務める。◆コンサルの実践を積みながら英米のIT企業とかかわる中で先端的な方法論と技術を学び、コンサルティング力に磨きをかけてきた。技術にも人間にも精通するPM界のグランドマスター的存在。◆Modusアカデミー講師。ドラッカー学会会員、名古屋工業大学・東京工業大学などの大学の講師を勤める。

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