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高校野球100年。夏の甲子園出場49代表が決定しました。残念ながらうちの二人の息子たちの高校は、どちらも甲子園出場は果たせませんでしたが、そこそこの戦績を残してくれました。弟くんはまだ来年もチャンスがあるので、引き続き甲子園目指してがんばる日々が続きます。今年以上の活躍が出来れば、決して甲子園も夢ではない!と、その気になっていることでしょう。。。
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さて、前回は演出家の宮本亜門氏のトークから、あの手この手を使ってプロジェクトの成功を演出するという話でした。もちろん、高校野球もさまざまな性格の選手たちを率いて、野球に対するさまざまな思いをもつ指導者、OB、父母、学校関係者などに囲まれる中で、甲子園出場という目標に向けたシナリオを描き、いくつもの壁にぶちあたりながら、あの手この手を使って前にすすむ姿はプロジェクトマネジメントそのものだと感じます。(※1)
高校野球の監督さんを「甲子園への道プロジェクト」のプロジェクトマネージャーとみたてた場合、学校の先生である大人が私の息子たちを含む高校生たちを教育指導するという構図でもあります。システム開発プロジェクトにおけるプロジェクトマネージャーとプロジェクトメンバーの関係を重ねて考えてみると、、、そうですよね。プロジェクトメンバーへの教育指導と子供たちへの教育指導には類似点があるということは、プロジェクトマネジメントの仕事に携わっている多くの方から同じ意見だと聞いたことがあります。
たとえば、教育心理学の用語として「ピグマリオン効果」というものをご存じでしょうか?(※2)
ピグマリオン効果については、人間は期待された通りに成果を出す傾向があることの現れとされ、1964年にアメリカ合衆国の教育心理学者ロバート・ローゼンタールによって実験された。
人間は自分で勝手に限界を設けてしまい、それ以上のことはできないことが多いものです。したがって、教師や指導者たちが「君ならここまでできる!」「おまえたちなら必ず甲子園に行ける!」という期待を示し続けることで、本人が勝手に設けた限界をぶち壊して、期待通りの成果を達成してくれる可能性が高まるということです。
「ピグマリオン効果」は、当ブログの全体的な基調として示している「自発性」の発揮にも通じるものと私は考えています。上司やプロジェクトマネージャーが決め付け型の指示や指導に終始した場合、部下やプロジェクトメンバーは「指示待ち型」となってしまいます。不確実性の高いシステム開発プロジェクトにおいては、あちこちに内在するリスクの識別とその対応が必要ですが、「指示待ち型」のプロジェクトメンバーにはリスクへの対応は期待できず、後手に回ることで、プロジェクトの成功確率が低くなります。(※3)
プロジェクトを成功に導くためには、「ピグマリオン効果」を活用して、プロジェクトメンバーたちをその気にさせて、自発性の発揮を促すような演出を心がける必要があるのです!
「ピグマリオン効果を活用し、プロジェクトメンバーをその気にさせて自発性の発揮を促そう!」
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前回ご紹介した3つの演出例も、各ステークフォルダーをその気にさせるための演出と言ってもいいでしょう。今回は、私が過去のプロジェクトにおいて実際に試みたことのある演出の具体例をいくつかご紹介します。
と言っても、ここに紹介する具体例は、どのプロジェクトや組織でも普通に行われていることだと思います。ただ、それらの施策を、プロジェクトを成功させるという目標に向けて、具体的な意図や目的をもって実行することがポイントになります。
なんとなく施策を実施するのではなく、意図をもって実施することで、施策が功を奏すれば、意図した通りにプロジェクトをコントロールしているという実感を得られるはずです。もし功を奏さなかったとしても、その経験は次回への反省材料となり、より効果的な演出力を身に着けるための糧となるはずです。
< プロジェクトメンバーをその気にさせるための演出例 >
1.定期的な席替えの実施
1年以上の長期間にわたる大規模プロジェクトや数年間におよぶ保守開発プロジェクトなどの場合、数か月に1回はプロジェクトメンバーの席替えを行うようにしていました。当時私はいくつかあるサブシステムのうちのひとつを任されているサブリーダー的な立ち位置でしたが、いろいろ理由をつけてはプロジェクト全体の座席変更を提案して、席決めしていたため、「席替え大臣」と呼ばれていました。
席替えの表向きの目的は、新しいメンバーの加入やサブシステム間のタスクボリュームの変化にともなう役割変更など、ごく当たり前な理由を掲げていました。しかし、その裏で意図していた目的には、さまざまな内容を含んでいたものです。
A.遅刻の多いメンバーをリーダーの近くの席に配置してプレッシャーを与える
B.机の上が資料山積みで非効率なメンバーの席を移動して、少しでも片づけさせる
C.いつも元気の無い男性メンバーの席を明るい女性メンバーの隣にして元気づける
D.コミュニケーションをとらないサブリーダー二人の席を近づけ話しやすくする
E.席替えすることで気分転換や新しい刺激になり、プロジェクトメンバーを活性化させる
2.若手メンバー向け勉強会の開催
プロジェクトの体制は担当チームごとに縦割りとなることが多く、特に若手メンバーは担当チーム内の上位者とのコミュニケーションに限定されてしまう可能性が高く、同期などの仕事以外での横のつながりはあるかもしれないが、仕事に生かすための幅広い知識を吸収する機会が薄くなっている場合があります。
そのような問題意識から、私は若手メンバーを集めて、プロジェクトマネジメントに関する勉強会を開催したことがあります。勉強会は単に知識を植え付けるということだけでなく、参加者自らプロジェクトマネジメントについていろいろ考えてもらうことで、少しでも自発性を持ってもらうということを意図していました。
このような勉強会をプロジェクト活動と並行して行うことで、プロジェクトを違った角度で見るきっかけとなったり、少なくとも気分転換となってプロジェクトメンバーを活性化させるという思いもありました。
3.朝会の実施
システムテストなど複数チームでのタイムリーな情報共有が必要な期間やトラブルプロジェクトで毎日事件が起きて状況が刻一刻と変わるときなどは、よく朝会、夕会などを毎日短時間でも実施してコミュニケーションを図ろうとすると思います。
特にトラブルの状況でなくとも、できればチーム内で毎日朝会によるコミュニケーションをとるべきだと私は考えています。チーム内であれば、そんなに席も離れていないことが多いと思うので、朝会などを行わなくても随時コミュニケーションをとれていると思われがちです。しかし、いつでもコミュニケーションをとれると思っていると、特定のメンバーとのコミュニケーションにかたよってしまったり、自分の抱えているタスクがひっ迫してきた場合など、コミュニケーションが薄くなり、必要なときにタイムリーに情報共有ができていないなんてことが起こりがちです。
そこで平時から朝会を毎日実施することを習慣づけ、その日の予定や直近にすませなければいけないタスクを確認することで、コミュニケーションのかたよりや情報共有不全を予防することができるはずです。もちろん、朝会の運営がプロジェクトメンバーの負荷になるようであれば逆効果です。長くても30分、既存のTodolistなどの管理ドキュメントを活用して、「とりこぼししない」という意識ではなく、「その日気になったことがあればそれだけ共有する」ぐらいの意識で継続することが大事だと思います。
なによりも朝会を継続して実施することで、毎日の仕事にリズムができるので、二人でも三人でも、賛同してくれるメンバーに声掛けして、できる限り朝会を行う習慣を続けたいと考えています。このような自発的な活動を習慣づけることで、プロジェクトメンバーをやらされ感から解放し、その気にさせて、プロジェクトの成功へとつなげられたら何よりだと思います。
どうでしょう?これらの活動のひとつひとつは何のことはない、必要に応じて誰しもが実施していることかもしれません。しかし、繰り返しになりますが、プロジェクトを成功させるためには、何か画期的な方法があるわけではなく、意図をもってあの手この手を使って我慢強く演出し続けるという感覚が必要なのです!
それでは次回もお楽しみに! < 前回 | 目次 | 次回 >
工藤武久
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※1 「甲子園への道プロジェクト」に関しては、当ブログの以下の回も参照してください。
・【第11回】超ハイリスク?甲子園への道・プロジェクト!
・【第13回】個別リスクとプロジェクト全体リスクという二つの視点
・【第16回】プラスの影響を与えるリスクの具体例
※2 「ピグマリオン効果」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』
2015年6月15日 (月) 17:07 utc https://ja.wikipedia.org/wiki/ピグマリオン効果
※3 自発性については、当ブログの以下の回も参照してください。
・【第7回】フルトヴェングラーのプロジェクトマネジメント
・【第10回】落合「オレ流野球」はCMMIレベル5か?