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私の履歴書 - SF小説家 小松左京 -


 週末は、雨ばかりですっきりしない天気が続いている。こんな日には、普段のゴルフをやめ、散髪に行ったり、身体のケアーのためにマッサージに行ったりして、リラックスした余暇を過ごす。さらには、JAZZのCDを買いに、タワーレコードへ。様々なCDの視聴をさんざんした後、好きなCDを2枚購入した。非日常的な土曜日である。たまには、良い。

 夕方になり、あてもなく、テレビを観ていて偶然出くわした番組が、「私の履歴書 SF小説家 小松左京」である。暇に任せて観ていたのであるが、小松左京の発想のすばらしさに驚き、すっかり番組に入り込んでしまった。

 小松左京は、1931年、戦前生まれで、SF小説を軸に、人気作家になる。一方、小説で養った洞察力、想像力をイベントの企画者としても高い次元で発揮し、大阪万国博覧会(1970年)などの国際イベントを成功に導いた。1973年「日本沈没」が、空前のヒット作となり400万部以上(驚き)を売る。揺るぎ無いSF作家となる。他に、「復活の日」(1981年)、「首都消失」(1987年)など、入念に技術調査、深い洞察に基づく作品が多くある。

 1964年、すでにSF小説家として世の中に存在感を示しつつあった小松は、新聞記事に触発され「万国博を考える会」を有志で発足し、学者や文化人らと万博の具体的な話し合いを行っていた。1965年、独自に計画を練る小松らの会合を快く思っていなかった政府から、意外な形で突然万博の基本理念の草案作りの協力を求められる。 小松らは基本理念を練り上げ、これをもとに大阪万博のテーマ「人類の進歩と調和」が誕生した。万博開催が決定後、テーマ館のプロデューサーに岡本太郎、サブプロデューサーに小松が就任。二人は太陽の塔を中心にテーマ館の構想を打ち出した。万博は77ヵ国が参加、6,422万人が来場し大成功を収める。 小松は、その後も積極的に国際科学技術博覧会(通称:筑波博、1985年)、国際花と緑の博覧会(通称:花博)(1990年)などのイベントの企画者として活動を続けた。1995年に発生した阪神淡路大震災では、被災地を周り、ルポを掲載。未来へ繋げるために全貌を記録し、災害を検証した「大震災95」をまとめた。

 小松は、何を原動力として、行動していたのだろうか。小松が恐れていたものは、イベントが、政府の威信の表現に利用されることであったと思われる。大阪万博のテーマが、有名な「人類の進歩と調和」であることが示しているように、小松は、子供や大人、すべてのイベントに参加する人々が、楽しく明るい未来を共有できるようにワクワクする未来像を描き出すことを目指した。当時の日本は、高度経済成長の真っ只中にあり、物質的な充実と成長が正しいこととされていた。が、小松はすでにモノの氾濫が、人類の幸せにつながらないことを理解していた。また、小松は小説家であるが、活字の力の限界も承知していた。本当に人々に語りかけるためには、活字だけではなく、映像、音、体験、共有が、大きな力を発揮することが大切であることを、自ら行動し示したかったと思う。

 ここに、一小説家として生きるのではなく、人間として未来に警鐘を鳴らしたかったのだと思う。作家としては、成功し、悠々自適な生活ができるにもかかわらず、勇気と信念を持って、行動したことに私は、強く敬意を表する。
 一方、当時の政府側の企画者も、すばらしい新鋭のSF作家である34歳の若者に、一大イベントを任せるという判断を下したのだ。1960年代の日本には、今は失っている活力と判断力が、あったのだ。

今から50年前に、人々の未来に希望と情熱を与える大阪万国博というイベントに携わった小松左京を忘れてはならない。

 小松左京は、「日本沈没」で、何を、読者に訴えたかったのか?
 小松左京は、何故、執筆を休み、大阪万博に打ち込んだのか?
 小松左京は、筑波博、花博などのイベントを通じて何を実現したかったのか?

あらためて、現代と照らし合わせて考えてみよう。

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林衛
IT戦略とプロジェクトマネジメントを中核にITビジネスのコンサルティングを行うアイ・ティ・イノベーションのファウンダーであり社長を務める。◆コンサルの実践を積みながら英米のIT企業とかかわる中で先端的な方法論と技術を学び、コンサルティング力に磨きをかけてきた。技術にも人間にも精通するPM界のグランドマスター的存在。◆Modusアカデミー講師。ドラッカー学会会員、名古屋工業大学・東京工業大学などの大学の講師を勤める。

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