日本全国をおおう地形図(国土の基本図)を作成することを目的とし、正確な長さが測定された基線として、全国約1,000地点に設置しているのが一等三角点です。(”国土地理院・一等三角測量とは”を元に作成)
正確な地図を持つことは、国が国土を管理したり、企業や個人が様々な活動をする際に必要不可欠です。基準点に関し、近年では全国約1,300ヶ所に設置された電子基準点も使い、GNSS(Global Navigation Satellite System:全世界的衛星測位システム)により日々の地殻変動を監視しているようです。
地図は、このような基準点を設置しているからこそ、正確な作図が出来るだけでなく、過去からの地殻変動を正確に掴むことができます。
これを企業もしくは組織に置き換えた場合に、基準点は何でしょうか? また、基準点を設けることによるメリットは何でしょうか?
基準点として真っ先に思いつくのは、KGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)とKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)です。例えば、今年の売上高XXX億円を達成(KGI)するために、一人当たりの引き合い件数をXX件(KPI)にするといった感じです。
他のKPI指標としてはROI(Return On Investment:投資対効果)やROE(Return Of Equity:自己資本利益率)、もしくは在庫回転率等々多々あり、いずれも経営としては重要な指標となります。
IT組織もITで経営を支えるための活動をしているため、その成果は経営的価値に直結している必要があります。そしてその目標は達成したか否かが誰でも分かるよう、数値で表す必要があります。
例えば、ITアーキテクチャコンセプト及びITアーキテクトに求められるスキル体系であるITABoK (IT Architecture Body of Knowledge)を提供している団体であるIasaでは、ITアーキテクチャの価値を、5つのROIで定義しています。
1.財務上の改善
・売上の増加
・コストの削減
2.構成要素の改善
・顧客及びパートナーのエコ・システムの発展
・ステークホルダー・バリューの増大
3.複雑性と冗長性の低減
・不必要なシステムの除去
・短期的な成果にフォーカスする
4.経済的発展
・マーケットの成長と新たな機会にフォーカス
・新たなイニシアティブの探求
5.民主的な文化の醸成
・コミュニティの文化的な成長を促進する
・自由市場の文化を提供する
また政府CIOでは、CIOが果たすべきミッションとして次の事項を挙げており、その成果をKGIやKPIとして明示することも大切です。
・情報活用による経営戦略の創造
・全社横断のビジネス変革
・ITガバナンス確立
さらに組織は人が支えており、その成長は欠かせません。その財産である人が、自ら成長したいと思い、行動するモチベーションを高める方法の1つとして、「あのような人になりたい」という憧れや尊敬の念を抱ける人が居るか否かが大変重要です。特にそのような方が身近に居ると、ありたい近未来の自分を想像でき、今以上に頑張りきれるという効果が出ます。これは定量値として捉える基準点ではなく、人材の基準点です。
人は感情の動物なので、心理面の高揚が行動を促し、具体的な目標がその達成の手助けをすると私は感じています。
『組織に基準点を』、皆様の組織はいかがでしょうか?
<追伸>
日本最高標高の一等三角点は、南アルプスの赤石岳(3120m)の山頂にあります。日本最高峰である富士山山頂は二等三角点です。
なお地図は3次元で表されるため、実際には三角点(水平距離を測る)と水準点(高さを測る)が必要です。今回は三角点を便宜的に題材に致しましたが、本当は組織の価値はこの両面が必要だと思っております。