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30年後を考えよう ‐ 1900年の未来予測を参考に ‐


 未来の予測ができたらすばらしいと誰もが思うが、未来を考える上で参考になるのが、過去の予測結果だ。以下の予測事例は、実に興味深い。

 1900年にアメリカの土木技師ジョン・エルフレス・ワトキンズ(John Elfreth Watkins)は、100年後の10の予測を行った。当時は「不可能だ」といわれたそれらのほとんどが実現したとして、ネット上でも話題になっている。

1. Digital colour photography(デジタル・カラー写真)
2. The rising height of Americans(米国の大飛躍)
3. Mobile phones(携帯電話)
4. Pre-prepared meals(調理済みの食事)
5. Slowing population growth(人口増加を遅くする)
6. Hothouse vegetables(温室野菜)
7. Television(テレビ)
8. Tanks(戦車)
9. Bigger fruit(巨大くだもの)
10. The Acela Express(特急アセラ) アセラとはアメリカの高速鉄道「アセラ・エクスプレス」のこと

これら10の予測のうち、100%当たっているものは、1、2、3、4、6、7、8、9だろう。5の人口動態についても(予測時に想定したであろう国々においては)、増加はスローダウンしており、100%ではないかもしれないが、かなりの割合で当たっている。10については、米国では航空機の急激な発展に阻まれているが、鉄道の高速化と普及は、新たなエコシステムとして注目されているし、日本や欧州においては実現していると云えるだろう。

 さて、ワトキンズの予測は、科学技術に注目したものである。一方、私たちがこれからの未来予測を行う場合に重要な要素は、科学技術だけではなく、国、社会、文化、人種などの概念を、人々がどのように認識するのか、あるいはどのように変化していくのか、を考慮していかなくてはならない。

 命、生命、人生、仕事などの概念は、医学が発達し寿命が延びれば時代とともに変化する。また政治、思想、倫理観についても、例えば我が国において、現在と江戸時代と比べれば、想像もつかなかったほど変化している。これからは社会や人間を含めた生物に対する認識が大きく変化するに違いない。(なぜならば、歴史をたどれば、100年単位で、人々の認識する常識がどんどん変化しているのは事実だ。)

 そんなことを考えて、自分が生きている世界(国、地域、町)、家族、友達、仕事、異性、生きがい、思想などの位置づけを見直すことが、未来予測への第一歩であるように思える。科学技術の発展が、これまでの未来予測の中心にあったが、今後は、認識の変化が、より大きなインパクトとなるだろう。

30年後の私たちが使っていることばと概念の変化を想像してみよう。少しは、未来が見えるかもしれない。

最近BBCが、読者から100年後の世界に関する様々な予測を募った。BBC News記事の20の予測の中から、私が興味深いと考えた項目を紹介しよう。

2. 思考伝達装置の登場
6. 世界の通貨が統一される
11. 世界の8割で同姓婚が認められる
17. 結婚が1年契約方式に

これらが実現される予兆は、すでに我々の前に現われてきている。ことばと概念の変化と科学技術の発展が、相互作用し未来は創られるだろう。

== 参考リンク ==
BBC News – Twenty top predictions for life 100 years from now
Your top 20 predictions on what the world will be like in 100 years.

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林衛
IT戦略とプロジェクトマネジメントを中核にITビジネスのコンサルティングを行うアイ・ティ・イノベーションのファウンダーであり社長を務める。◆コンサルの実践を積みながら英米のIT企業とかかわる中で先端的な方法論と技術を学び、コンサルティング力に磨きをかけてきた。技術にも人間にも精通するPM界のグランドマスター的存在。◆Modusアカデミー講師。ドラッカー学会会員、名古屋工業大学・東京工業大学などの大学の講師を勤める。

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