1 はじめに
※前回までのテーマがやや煮詰まってしまった感があり、、今回は異なる内容とします。やや雑感ベースですすみません。
先日、とある大学院に行く機会があった。もうすぐ2016年就職活動のシーズンに突入だからか、事務室の前には企業情報紙が多く並べられていた。さすがに近年はネット趨勢であり、私の時代と比較すると少ないものの、やはりその雰囲気は変わらず圧巻であった。
その中に平高く積まれた冊子を手に取り、ぱらぱらと読んでみた。聞いたことの無い企業ばかりだ。冊子の見出しタイトルが「次の10年で台頭する、未来の大企業99社」とのこと。ありとあらゆる業界で、これまでにあまりないビジネスモデルを打ち出しているこれら企業は、おそらく能力に自信がありチャレンジングな学生にとって魅力的にうつるだろう。
主に勢いのあるベンチャー企業を集めたその情報紙には、やはり勢いがあり、スマートな熱気が伺えた。「創る」「喜び」「変える」「最大化」などのワードが目に飛び込む。更には、代表者が35以下でイケメン率が高い(笑)
2 SDLとGDL
で、やはりここは職業柄か、、このような企業にとって、ITの位置付けは何なのかと、ふと思ってしまった。業務効率化とかいう以上の匂いがする。
仮説として思ったのは、このような企業にITは必須であり、そしてもはやじっくり作り込むものでも業務を効率化するものでもなく、「『顧客』とインターフェースするためのツール」である。
そして、共通項として「価値共創」があるのではないかと考える。
「価値共創」というと、2004年に『コ・イノベーション経営: 価値共創の未来に向けて』という書籍で紹介されたのが最初である。
学術的にはここ数年のホットトピックで、実はビッグデータをも包含する概念なのかもしれない「サービス・ドミナント・ロジック(SDL)」もそのベースとして有名といえる(*1)。ここでは詳細は割愛するが、極めてざっくり言うと、、サービスの活動を通じて価値を実感してもらう考え方であり行為である。その概念では、モノは提供の媒介にすぎず、それを通じていっしょに価値を創っていきましょうと。そこでは顧客は単なる「お客様」ではなく「パートナー」となる。
その対立的な概念が「グッズ(Goods)・ドミナント・ロジック(GDL)」で、物やサービスを一方通行的に提供され消費して得るという従来型の価値である。
例えば(極めて端的な例だが)、お料理レシピを多く集めて顧客にも情報提供をしてもらう某サイトは、顧客に情報の提供側と受領側という立場で、お互いに料理を作る以上の喜びをもたらしているように思われる。また、例えば音楽のライブ動画を見ながら、「感動した(泣)」とか「8888888」等のコメントをその場で投げ合うというのも、単に「見る」という以上の価値を共有している。
このような行為、考え方が10年後の社会のベースになるのか?というのは、さすがに分からない。けれども業界にいる立場上言えるのは、これらの企業にとってITというのは従来と大いに異なる概念なんだろうな、ということである。
3 ITは…
現在のITの企画なり開発なりの方法論、すなわちソフトウェア工学は、言わずもがな製造業のそれのメタファーである。まあ、先の概念でいうならばGDLだよなあ…と感じる。
ITで顧客とインターフェースをとり続ける企業にとっては、従来の方法論はひょっとしたら無用の長物、とまではいわなくとも、おそらく無力だろう。あくまで個人的な所感だが、ウォーターフォールとかアジャイルとかいう分類に収まらないような、新たなやり方が潜んでいるように思える。(あくまで仮説だがフットワークが軽い)
そしてこれら企業の代表者の多くは、そのコメントから考察するに、”迷い”が無い。社会全体から見たらBeginnerだろうが、「何もできない ちゃんとできない それがどうした僕らは若いんだ」「だから僕らに可能性があるんだ」(*2) というか、そのままにまい進しているように思える。
勿論、会社経営する立場でしょうから、”迷い”が無いわけではないんだろうが、、そのうちBeginnerからWinner駆け上がるのだろうなと、その勢いは熱い。
その時に社会は、ITはどうなっているのかと、どうしていくべきかと、考えることは興味深い。そして、経営とITの架け橋たるITストラテジストはどう関与できるのかも考えていかねばならないのかと、自省を込めて言いたい。
注釈:
(*1) 興味ある方はググってみてください。非常に多くの解説あり。
(*2) AKB48の名曲「Beginner」の歌詞より。
最後まで読んでいただきありがとうございました!!!
参考文献
※URLの最終アクセス日は何れも2014年11月25日
[1] スローガン株式会社編、「Goodfind Career Magazine」 https://www.goodfind.jp/
[2] C・K・プラハラード 、ベンカト・ラマスワミ、有賀裕子訳『コ・イノベーション経営: 価値共創の未来に向けて』、東洋経済新報社(2004)