1 はじめに
いったいどうすれば「売れる」のだろうか。最近、よくそんなことを考えている。
先日週末、とある用事で東京ドーム近辺を歩いた。私は何とそこで多くの若い女性に囲まれ揉みくちゃになってしまった。いや、、これは妄想ではなく(笑) 現実の話で、つまりは東京ドームでEXILE TRIBEのライブをやっていたのである。前に進めないほどに多くの人が、EXILEファミリー見たさに集まり、そしてそのほとんどは若い女性であった(私と同世代の男性はほんの一部)。今でもあの光景は凄まじく蘇る。。
うーん、これだけの動員が可能になるには、つまり「売れる」には、どうしたらいいんだろう、どういう戦略が必要なのだろう、自分が応援するアーティスト(≒アイドル)はどうすればこうなれるだろう(*1)、などと考えてしまう。
いわゆるネットワーク外部性が働くという見方がある。つまり、自分がいくら「いい」と考える楽曲であっても、周囲に浸透していなければ、「マニア」や「ヲタク」として見られる(初期のAKB48がそうだった)。しかし、周囲が徐々に「いいね」と浸透してくると、楽曲の良さを分かち合えたり会話が出来たりして、「売れる」という事象となる(まさに5年程前からのAKB48かと)。勿論、浸透するための展開戦略が必要であるが。
そして、見方を変えると、その対象物に思い入れが強ければ強いほど、盲目的になるのかもしれない。曲の世界がどうとか、歌手のエビソードがどうとか、熱く語るようになってくる(*1)と、一般的なユーザーの気持ちというか、売れる要素が分からなくなってくるのかもしれない。そういう「ヲタク」ばかりが集まるアーティストと認知されると、周囲への浸透はもはや… 難しい話である。
2 そこでCIOとは
前置きが過去最長に長くなってしまった(すみません)。今回はCIOの話の続きである。
前回は「CIOには情報システム部門『非』出身者がむしろ適任では?」というテーマを残して終わってしまった。今回はそのテーマについて述べる。
まず、成功するCIOに必要な要素とは何かを考える(「成功」の定義だが、ここでは単純化して「自社の利益を上げられること」としたい)。
書籍「CIO学」には、CIOに期待される役割や資質として以下のように示されている。
- リーダーシップや改革の指導力
- CEOへの適切な助言
- 保守的な壁や抵抗勢力に打ち勝つ力
- ITの本質や投資効果の理解
- 新技術への理解と造詣
- 経営感覚、ビジネスマインド、ビジネス戦略
- コミュニケーション、調整能力、関係者への説明能力、説得力、均衡力
- 目標達成への強い意志
- 情報システム導入による問題解決能力
- イノベーション
- 失敗を恐れない強さ
- 経営とITの融合
- 豊富なバックグラウンド
- アイデアの創出やクリエイティビティ能力
※2003年から国内CIO等約200人インタビューの集約。岩崎(2007)
いやぁ、多すぎる。多すぎます。こんな何でもできる人はまずいない。勿論、全部できるようならば、何かしら成功するだろうなと思う。
ただこれらのリストをよく眺め考えると、、「イノベーション」「ビジネスマインド、ビジネス戦略」「アイデアの創出やクリエイティビティ能力」が重要なのかな?と思われてくる。
何故ならば、企業に利益をもたらすには、コストダウンに尽力したり、社内の業務プロセスを効率化したりすることだけでなく、外に打って出て、獲得をしていかなければならない。そのためには、自社のビジネスモデルに何かしらの改革を入れていくことが重要であり、実行者にはその発想力の有無が問われる。まして、競合他社や業界の動向、社会のトレンドなど、複合させるべき外部要素は多く、それらは自社の立ち位置を普段から把握していないと、取り込み考えるのはできないと思うのだが、、どうか。
勿論これらは仮説にすぎないのだが、手元にある日経情報ストラテジー3年分の「主張するCXO」という記事をリスト化して確認すると、そのCIOの方の大半は、自社のビジネスを経験されている(*2)。利用者目線は少なくとも必要であり、それでいて情報技術を用いて「イノベーション」できることが、成功するCIOには必要のように思われる。となると、少なくとも自社のビジネスを強く経験できる部門に身を置かれた方が、CIOになるには妥当と言えよう。
3 生え抜きど真ん中のCIOは…
残り記述が少なくなってきたのだが、ではその一方、情報システム部門で経験を積んだ生え抜き社員はCIOになってもxxxなのか?という疑問は残る。
ここからは完全に個人的な意見である。まず、情報システム部門に居続けると、利用者目線が身につく環境ではないため、それを身に付けるのは難しいであろう。その経験でCIOになっても、常に提供側であったため、なかなか視点が転換できないのではないだろうか。
またそういう環境下だと、自社のシステムに対する「想い」が強すぎてしまったり、情報技術について詳しいだけに(*3)、いわゆる「マニア」な観点が知らぬ間に定着してしまったり、そういうことも無くはないのではないか。
利用者からすれば、LinuxでもWindowsでもAndroidでも、、技術のアレコレはどうでもよくて、それで何が出来るか、うれしいのか、どうすれば誰とどういう何を分かち合えるのか、という観点でしか考えていない。そうすると、やはり情報システム部門「非」出身者である必要があるのかな・・と思う。勿論すべて一概には言えないけれども。
最初の話に戻ると、そう、これはつまり自分の応援するアーティスト(やアイドルグループ)が好きなあまりに盲目的になるパターンに似ている。その楽曲の良さとか、ここはこうあるべきとか、(グループの誰がかわいすぎるとか、)技術や性能に固執するあまり、もはや提供者目線に近くなってしまっている。その目線はあくまで内部的であることを少し認識する必要がある。さもないと、本当のユーザー目線、つまり一般ウケ?するような展開の発想はもはや困難かもしれない。
最後は何の話かという感じだが(笑)、「売れる」には一歩引くというか、冷静な大局観が必要ともいえるのかと。そしてそれはまた、生え抜きCIOに必要な能力と言えようか。
注釈:
(*1) そう考えてしまう時点でヲタクである。
(*2) 今回は時間が無く、数値・割合として表せないが、約6割が情報システム部門非出身者である(ただし、成功の有無は問わない)。
(*3) そういうITに関する知識や自社システムの知識だけが強みとも言える。
最後まで読んでいただきありがとうございました!!!
参考文献
※URLの最終アクセス日は何れも2014年9月30日
[1] 須藤修ら編「CIO 学: IT 経営戦略の未来」、東京大学出版会(2007)※引用部は 岩崎尚子「第3章 CIOの役割と機能」より
[2] 日経情報ストラテジー 2011年1月号~2014年6月号「主張するCXO」、日経BP社
[3] 音楽ナタリー 2014年9月29日「EXILE一族東京ドームで4時間祝祭、再々追加も」http://natalie.mu/music/news/127206