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データの思考


1 はじめに

今回は、AKBもサッカーもなく、真面目にストラテジストっぽい内容にする。最近組織論の話ばかりで、ややプロジェクトマネジメントに近い内容だったので、一部の方が不安に思われたようなので…

いきなりだが、データ分析が流行ってるなあ、と最近よく思う。いわゆるビッグデータである。それに、昨年(2013年)のITストラテジスト試験の午後2論文試験にも出題されていた。

転載はしないので詳細はIPAのサイトを確認いただきたいのだが、その採点講評に「システム改善や業務改善などの改善課題への対応にとどまり、”経営戦略実現に向けた戦略的なデータ活用”の観点が抜けた論述が散見された」とあった。確かに、多くの受験者はそんなにデータを活用して戦略を、という実務経験はまだ少ないと思われる。それゆえの結果であり、講評だろうと想像する。

さて、もし私がこの問題を試験場で受験していたら、何を記述しただろう。今回はその視点で、「戦略的なデータ活用」というものについて触れてみたい。

因みに私は、数学がまあまあ得意で、大学ではその方向で進むものと思っていた。それがひょんなことから別路線に崩れてしまったのだが、Excel VBAやRやSh、Javaを用いた数理的なモデリングを組むのは好きである。(いつかどこかで活かせればと思って日々鍛錬である。)
但し、ビッグデータ関連の業務経験はゼロである。POSデータを扱う小売も、Webサイト業務も、未経験である。

2 本質は何か

まず「戦略的なデータ活用」とは何であろうか。普通の、通常の「データ活用」と「戦略的な」それとは、何が違うのだろうか。実は、最近のビッグデータや統計に関連するビジネス書を全く読んでいないのだが、最近出版された学術的な基本書にはこうある。

企業に関するビッグデータを分析することで、経済活動の中で、企業同士がどのような相互作用をし、その結果、そのようにお金が流れていくのか、という問題に対しても、物理学の視点に基づいた方程式をたてることができるようになっています。その式をコンピュータで解くことにより、さまざまな状況下での経済予測のシミュレーションを行うことができるようになり、その成果はすでに実務に活用されています。

「学生・技術者のための ビッグデータ解析入門」(*1) まえがき

つまりこう理解する。従来の統計分析ならば、まずはグラフにして眺めて、診断して意思決定・・という、マーケティングの教科書にあるようなことでいい。それで課題解決はできるだろう。

ただし、ビッグデータのアプローチは、それよりもうちょっと攻めて、構造やメカニズムを見つけ出し、データをどんどん当てはめてその精度をあげて(パラメータを調整して)、より的確な将来の予測を行う、というものではないかと。

例えば、「POSデータを商品特徴毎の相関モデルにあてはめる」や、「電子マネーの利用頻度を時系列モデルにあてはめる」、そしてその精度を向上させるべく、日々のデータで「機械学習における特徴量を適切に絞り込む」「パラメータをキャリブレーション(調整)する」などが思いつく(*2)。

こんなエッセンスを軸に論述すれば、合格に近づけるのかな、と考える。もちろん、これだけでは論文の最初のメモにすぎないので、戦略としてフィジビリティのあるストーリーにしていく必要がある。つまり、有効性、運営体制、人材などである。

ただ、このようなビッグデータ的なアプローチの仕方が理解不足であれば、この問題を選択した時点でかなりの不利となろう。そして「改善課題への対応」留まりになるということだろうか。IPAにしてみれば、かなりチャレンジングな出題だったが、我々IT技術者に対し、ビッグデータに関してどれだけの理解があるのかの問いかけでもあった。

3 終わりに

小松製作所社長、会長の坂根氏の名言「経営トップは事実や本質を見るアナリストになれ」という言葉が刺さる。ビッグデータは、データ抽出を要さない全数データを一気に扱うシロモノであるため、つまりそれが事実そのものである。本質を見る手段がかなり変わったということである。

ストラテジストとして、データ分析は当たり前で、ビッグデータ的なアプローチも求められるスキルである、と強く感じた出題であった。そして個人的には、人材育成という観点では非常にいいことと感じている。国内IT産業の集約型労働で辟易していた元理系男子・女子がこの分野で活躍してくれるようになれば、この業界は明るい。ビッグデータという単語そのものはバズワードだが、その本質は相当なものと感じる。

※ で、今回これで終えてしまったら、多くの読者の方は「ただ傾向をとらえたて感想を述べただけやないか(笑)」と思われるだろう。全くその通りであり申し訳ない。「戦略的なデータ活用」の目的やビジネスへの活かし方、ITストラテジストとしての貢献のあり方などを、もう少し掘っていく必要があるし、掘りたいと思う。・・それは次回に書かせていただきます。

注釈:
(*1) 著者の1人は、筆者の知人である。本書の内容はやや専門的かもしれないが、ビジネス書のレベルを程よく超えた、それでいて学術的過ぎない、入門として良書である(大学院の初級レベル)。
(*2) この辺りで述べた語句で分からないものがあれば検索してみてほしい。

最後まで読んでいただきありがとうございました!!!

参考文献
※URLの最終アクセス日は何れも2014年6月30日
[1] 情報処理技術者推進機構 情報処理技術者試験 ホームページ https://www.jitec.ipa.go.jp/
[2] 名言DB:リーダーたちの名言 http://systemincome.com/main/kakugen/tag/坂根正弘
[3] 高安 美佐子(編集)、田村 光太郎、三浦 航、「学生・技術者のための ビッグデータ解析入門」、日本評論社 (2014)

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東崇城
2015年2月末で退職いたしました。 本人の了解を得て、ブログはしばらく掲載いたします。 (株式会社アイ・ティ・イノベーション/コンサルタント ■大阪府枚方市出身 ■1997年 京都大学 農学部農林経済学科(現 食料・環境経済学科)卒業 ■アビームコンサルティング、日本IBMにて、主に証券、保険系のシステム開発プロジェクトにて要件定義から設計、開発、テストまで広く多く経験を積む。2008年より当社にて、主に通信系企業の品質管理支援、マネジメント支援、組織活性等のコンサルティングを担当 ■情報処理技術者試験(プロジェクトマネージャ、ITストラテジスト他)、品質管理検定1級。都内の夜間大学院にてMOTを学ぶ ■日本ITストラテジスト協会(JISTA)正会員 ■趣味は水泳、数理プログラミング、サブカル鑑賞 ■目指すは「歌って踊れるPMO」)

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