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私ごとで恐縮ですが、2014年6月末で、アイ・ティ・イノベーションに入社以来、早くも7年が経過したことになります。そして7月2日は、私の誕生日です!
ということで、勝手に節目のようなものを感じている今日この頃です。今回のテーマは、私のこれまでのプロジェクトマネジメント経験の中でも、最も多くの時間を費やしてきたと思われる進捗管理に関するものです。
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2014年サッカー・ワールドカップ・ブラジル大会は、いよいよ決勝トーナメントに突入しました。連日連夜の熱戦についつい見入ってしまい、睡眠不足の方々が続出しているようです。日本代表は残念ながら決勝トーナメント進出を逃しました。まだまだ世界との差は大きいのでしょうか?
ちょっと古い話ですが、2001年のFIFAコンフェデレーションズカップでは、当時の日本代表は決勝でフランスに敗れたものの、見事準優勝を飾り、世界との差が縮まったと感じた人は多いと思います。決勝翌日の各スポーツ紙では、「日本準優勝!」「日本決勝で敗退!」など、大々的に取り上げられていました。(※1)
この当時から、常に頭の中はプロジェクトマネジメントのことでいっぱいであった私は、この「準優勝!」と「決勝敗退!」という同じ結果に対する別々の表現方法を目にして、すぐにプロジェクトの進捗報告書のことを思い浮かべてしまいました。「準優勝!」と「決勝敗退!」では、同じ結果を表しているはずなのに、「準優勝!」の方が少し肯定的なニュアンスのように感じませんか?
実はプロジェクトの進捗状況を表現する際も、同じ進捗状況について、報告する人に楽観的な印象を与えたい(安心してもらいたい)場合と悲観的な印象を与えたい(問題に対するアクションを求めたい)場合で、表現方法を変えることもできるのです!
(というか、ステークフォルダー・マネジメントの一環として、プロジェクトマネージャーたるもの、それぐらいの意識は常に持っておく必要があると思います。)
逆に進捗報告を受ける立場からすると、報告する側の余計な意図などはできるだけ排除して、客観的に進捗状況を把握したいところです。従って、進捗報告書に上記のような微妙なニュアンスの違いが入り込まないような進捗報告書作成基準を準備して徹底する必要があります。
プロジェクトマネージャーは、進捗報告を受ける立場でもあり、ステークフォルダー・マネジメントを行う立場でもあるので、その両方をにらみながらの進捗管理ということになり、多面的なプロジェクトマネジメント戦略を考える必要があると言えます。
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さて、「準優勝!」と「決勝敗退!」の違いはなんでしょうか?
2001年FIFAコンフェデレーションズカップの状況を少し補足してみます。
確かに、決勝戦翌日には「準優勝!」であることも、「決勝敗退!」であることも事実としては正しいことになりますね。ところが、よくよく考えてみると2.の状況で、既に準優勝以上は確定しているので、決勝戦翌日に「準優勝!」というのは意図的に肯定的なニュアンスで報道しているように思えます。そう、決勝で敗退はしましたが、「日本代表はここまでよく頑張った!」という思いをスポーツ紙の読者と共感したいために、肯定的な報道にしたのでしょう。
これと同じような感じで、基本設計の進捗状況について表現すると、たとえば次のようになります。
A.「準優勝!」 ⇒「進捗率は基本設計全体の90%」
B.「決勝敗退!」⇒「先週、基本設計の顧客レビューを実施したが、再レビューが必要」
こちらも状況を少し補足してみます。
確かに、進捗状況としては「進捗率は基本設計全体の90%」であることも、「顧客レビューで再レビューが必要」な状況であることも事実としては正しいですね。ところが、先々週時点で既に進捗率は90%であり、先週も同じ90%とだけ報告されるのは、報告を受ける側としてはちょっと嫌ですよね。
逆に再レビューが必要な状況とだけ報告された場合はどうでしょうか?まあ仕方が無いと思うのか、再レビューとなったことが今後のスケジュールにどう影響するかが心配になるのか、人によってはかなり不安になるでしょう。もしかすると、よくありがちな「進捗率90%症候群」ではないかと疑いますよね。だから全体の状況についても押さえておきたくなるはずです。(※2)
ここまでの説明でお分かりの通り、どちらも同じ状況を示していますが、「準優勝!」の方は累積結果による報告、「決勝敗退!」は前回報告からの差分のみの結果報告であり、報告対象期間に違いがあったのです。
問題の早期発見というプロジェクトマネジメントの視点からすると、より最新状況の変化をとらえやすい前回報告からの差分のみの結果報告の方が好ましいということになります。しかし、プロジェクトマネージャーは常にプロジェクト全体状況を視野にいれることで、アクションの優先順位を考える必要があるので、累積結果による報告も必要となります。つまり、進捗状況を正しく押さえるためのポイントは、累積と差分の両方を常に把握することになります。
「進捗状況を把握するポイントは、累積と差分の両方を把握することだ!」
毎週毎週変わり映えのしない進捗報告書は、累積による報告にかたよっていることが多く、プロジェクトの問題を早期に発見するという本来の進捗管理の目的からずれているかもしれないので要注意です!
それでは、次回もお楽しみに! < 前回 | 目次 | 次回 >
工藤武久
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※1 「FIFAコンフェデレーションズカップ2001」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』 http://ja.wikipedia.org/wiki/FIFAコンフェデレーションズカップ2001 2014年4月10日 (木) 05:10 UTC
※2 「進捗率90%症候群」とは、進捗率90%ぐらいまでは順調に推移しながら、それ以降ピタッと進捗が止まってしまうこと。その原因の多くは、的確な進捗管理ルールが無いか、報告された進捗状況を何もチェックせず鵜呑みにしてしまう丸投げマネジメント体質による。