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負ける戦略


1 はじめに

なんともやりきれない気持ちで一杯である。(注:このブログは6月16日に書いている)
本当いうと、今回は強い組織力というテーマでSKE48とももクロ、ハロプロとの関係について語ろうと思ったが、どうもそういう気分になれない。

理由は明確で、、そうワールドカップの日本の初戦の結果のせいである。

誤解を恐れずにいうと、事前の練習試合で逆転勝ちなどしたときから、こうなることは予想していた。2006年ドイツ大会のケースによく似ているのである。

今回言いたいことは、本当の勝負で勝つには、準備段階でどれだけ負けることができたかによる、ということとしたく、お付き合いいただきたい。

2 2010ワールドカップの場合

サッカーに詳しい人にとってはニワカな論かもしれないが、2010年ワールドカップの日本代表のプロセスとは対照的である。

当時は、初戦の事前試合では、負けが続いていた(*1)だけに、見る側の期待値をとことんまで下げた。にも関わらず、本番では2勝1敗でグループリーグ突破し、ベスト16の試合でもPK戦にまでもつれるなど、観戦する側の効用が結果的に最大化した。

この要因はおそらく、当時の岡田監督や選手が事前に負けることでしっかり見えた課題が多くあったと推察する。課題がはっきりと見える、感じることができると、(前回ブログのAKB48の例に近いが)修正がしやすいし、何よりメンバーが「なぜダメなのか」「何がだめなのか」を考えることができやすい。

・・・サッカーの話で終わらせたらいけないので、これが情報システム構築ではどうか、あてはめてみる。

よくある話だが、本番リリース時にトラブルが発生した場合、何が何でもリカバリするのは当然だ。ただ、その後に「振り返る」ことができるケースがどれだけあるだろうか。あくまで個人的な経験だが、リカバリに全力投球し、それが終わると「俺たちよく頑張った」と美談化?しておしまい、というケースが多いと考える。更にいうと、リカバリが賞賛される!本来なら事前にすべきことをしていなかったケースもあるにも関わらずである。真の問題は何だったのかを考えずに終わる。そして、次の別案件のリリースのときに、同じ過ちを繰り返す。

私が担当したプロジェクトの話だが、事前のリリースリハーサルで起きたどんなささいな事象をも議論し、問題がなかったか、どうすればいいのかを探る。そして本番リリース時にあらかたうまくいったものの、それでもミスがあった場合に、事例として共有し内部にストアする、というのがあった。
それからこのプロジェクトが、時間経過とともに更に高みを目指す組織になっていったのは言うまでもない(*2)。

3 まとめ - 「postmortem」から「beforehand」へ

再び、サッカー日本代表の話に戻る。今回は事前の練習試合では、ギリギリながらも勝利していた。ただ、失点が多かったり、パスの精度が悪かったりと課題は多かったものの、結果として勝利だったため、その可視化が薄れたといえる。それに「悪いところもあるが何とかなりそう」という気持ちに傾いてしまう。極めて自然な心理ともいえるのだが、その中でも課題をきちんと話し合える組織であることが大事である(*3)。

そんな中最後に、プロジェクトに関するジャーナルで興味深いものを読んだので紹介したい(英語です すみません)。2005年の話だが、米国の自社内ITシステム開発プロジェクトのサーベイしたものである。

◆ What Project Management Practices Lead to Success?
A survey of in-house software development practices investigated why projects succeed or fail. A clear vision of the final product, good requirements, active risk management, and postmortem reviews can all help increase the odds of success.

– We found that if requirements were initially incomplete, completing them during the project was positively associated with success.
– The opportunity for greatest improvement is at a project’s start, in the requirements and risk identification and control areas.
Postmortem reviews are important for process improvement, but companies seldom perform them. As a result, they tend to repeat the same mistakes.

“In-house software development: what project management practices lead to success?” Verner et al (2005)

フォーカスしたいのは最後の分である。
見慣れない「Postmortem」という単語がある。「事後、反省」というような意味である。
事後の反省や振り返りが大事ではあるが、めったにやっておらず、だから同じミスを繰り返す傾向がある、ということを言っている。(他国でも似たようなことはあるんだな・・と妙な安心感(?)を得てしまった。ダメですが)

プロジェクトであればもちろん、そうでなくともどんなことでも、何か一段落着いたとき、ふと振り返り「Postmortem review」ができれば、次のbeforehand(事前)につながる。

そういう修正のためのアクションで人も組織も成長し、、、次は勝てます!

注釈:
(*1)韓国に0-2、イングランドに1-2、コートジボワールに0-2であり一つも勝ててなかった。
(*2) 私(PMO)など「空気」だった(笑) ただ、さらに高みを目指すのに自分の経験からのアドバイスをさせていただいていた。こういう組織で仕事をするのは気持ちいいものです。
(*3) 決して今の日本代表がきちんと話し合える組織でないと言っているわけではありません。あくまで一般的かつ個人的見解です。

最後まで読んでいただきありがとうございました!!!

参考文献
※URLの最終アクセス日は何れも2014年6月15日
[1] Wikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/2010年のサッカー日本代表
[2] Verner, June M., and William M. Evanco. “In-house software development: what project management practices lead to success?.” Software, IEEE 22.1 (2005): 86-93.

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東崇城
2015年2月末で退職いたしました。 本人の了解を得て、ブログはしばらく掲載いたします。 (株式会社アイ・ティ・イノベーション/コンサルタント ■大阪府枚方市出身 ■1997年 京都大学 農学部農林経済学科(現 食料・環境経済学科)卒業 ■アビームコンサルティング、日本IBMにて、主に証券、保険系のシステム開発プロジェクトにて要件定義から設計、開発、テストまで広く多く経験を積む。2008年より当社にて、主に通信系企業の品質管理支援、マネジメント支援、組織活性等のコンサルティングを担当 ■情報処理技術者試験(プロジェクトマネージャ、ITストラテジスト他)、品質管理検定1級。都内の夜間大学院にてMOTを学ぶ ■日本ITストラテジスト協会(JISTA)正会員 ■趣味は水泳、数理プログラミング、サブカル鑑賞 ■目指すは「歌って踊れるPMO」)

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