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モダナイゼーション


今回は、あまり聞き慣れない方も多いかもしれないが、Modernization(モダナイゼーション)についてお話したい。モダナイゼーシヨンとは、ビジネスの視点からレガシー・システムを最適化・近代化しようというエンタープライズ・システムの移行の取組みを言う。インフラ移行の意味合いが強い”マイグレーション”と比較して、アプリケーション面も含む広範囲なものである。進化の早いIT環境の下、ユーザ企業情報システム部門にとって、この取組みは「言うは易し行うは難し」に聞こえるが、適切な方法論を持ってすれば確実に実現可能である。この事は本シリーズのタイトルにある“成功へ導く極意“の中でも最も重要な1つと思われる。

モダナイゼーション

モダナイゼーシヨンへの要求は大きく3つある。1.日常のシステム運用に影響をあたえないで移行を完成させる事。2.出来上がったシステムが新しい技術で置き換わっている事。3.レガシー・システムの良い部分は受け継がれる事。以上がビジネス面での要求といえる。これを受けて、システム面での最善の策はどのようなものになるのだろうか。モダナイゼーシヨンの手順について最適解を考えてみる。

まずは対象システムのTOBE物理モデルを作る。このTOBEモデル作成の勘所は、“一旦、論理モデルに持ち上げて、物理モデルに下ろす”ことである。解説すると「①最初に現行システムを論理レベルに持ち上げASIS論理モデルを描く。②ビジネスへの柔軟性を追求したTOBE論理モデルに改変する。③時代に相応しい新たなITを適用したTOBE物理モデルに下ろす。」といった具合になる。図1に一連の手順を示したので参照されたい。論理モデルでASIS⇒TOBEへの改変を行うのは、物理モデルでは各種制約に惑わされビジネス面の目標から遠のく危険性があるからだ。また、論理モデルをキープしておけば、その時々の最新技術を適用した物理モデルに適宜変換する事も可能になる。

次に、TOBE物理モデルへたどり着く(モダナイズする)方法であるが、これには用意周到な移行計画が必要である。システムが大規模な程、開発長期化のリスク、移行時のリスク等から“段階的移行計画”が推奨される。この移行過程は、長時間の機能停止が許されない大都市の再開発計画に酷似している。そして、ここで活躍するのがデータHUBである。詳細は過去のバックナンパー(マスタHUBトランザクションHUB)を参照いただければ良いが、ポイントはデータHUBを境に両側のシステムを疎結合にする事である。この疎結合化なくして段階的移行はあり得ない。この移行方式は、最終形に行き着く途中でシステムが稼働できることから、早い段階でビジネスのROIが期待できるメリットがある。

最後に、長期間に渡るモダナイゼーシヨンの道程で、様々な誘惑により道を外れない為、最低限のルールが必要となる。これがアーキテクチャ・ポリシーである。例えば、複数の開発プロジェクトが同時進行する中、共通マスタ利用のルールは“END-TO-ENDでのやり取りはせずに、必ずマスタHUBを経由する“という事である。ちなみに、このルールに基づいて1本ずつHUB上にマスタを追加する作業は、日常の保守業務の延長線上で可能である。共通トランザクションのHUB経由も同様である。モダナイゼーションにおいては、DA(Data Architecture)を堅持しつつ、TA(Technical Architecture)は新しいものを積極的に取り入れて行くことがポイントである。

 

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中山 嘉之
1982年より協和発酵工業(現、協和発酵キリン)にて、社内システムの構築に携わる。メインフレーム~オープンへとITが変遷する中、DBモデラー兼PMを担い、2013年にエンタープライズ・データHubを中核とする疎結合アーキテクチャの完成に至る。2013年1月よりアイ・ティ・イノベーションにてコンサルタントを務める。【著書】「システム構築の大前提 ― ITアーキテクチャのセオリー」(リックテレコム)

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