私は大学で定期的にソフトウェア工学を教えている。若い人たちにITの仕事の面白さを伝えたいという思いからお引き受けした。
先日、名古屋の某大学での講義の合間に、学生たちが今何に関心があるのだろうと思って立ち寄った学内の書店で、私の目に留まったのが「勇気の科学」(大和書房)という本である。勇気と科学を結び付けようとする本。タイトルが気に入って買ってみた。著者は、ロバート・ビスワス=ディーナーという心理学の専門家である。
著者のコンセプトは、こうだ。
今、自分を変えるために勇気を学ぼう。
今の自分を変えて一歩前に踏み出すには「勇気」というものの「本質を知る」ことがポイントであり、「困難な状況に立ち向かう行動意志」を強化することができれば、誰もが人生の成果を得ることができる。勇気とは、英雄やカリスマだけのものではなく、ごく普通の人が学ぶことができるものである。サイエンス(科学)により「行動意志としての勇気」を身に付けることで、何かを生み出したり、達成することができる。
私たちが想像している一般的な「勇気」とは、こんなイメージであろう。例えば、英雄たちがリスクをかえりみず勇敢に困難にぶつかって行く。あるときは、命がけで仲間を窮地から助け出す。また、自分より強い敵に戦いを挑む。
本書では、勇気は物語の登場人物のような神秘的、カリスマのものではなく、「行動意志を強化する」ことと「恐怖をコントロールする」ことで、ごく普通の人でも身に付けることができるものだと教えている。また、勇気を身につけるということは、自分の弱さを認め弱さに立ち向かうことだとも教えている。
この本にあるように、勇気の解釈を分かりやすくすると、実りある人生をおくることができるのではないか、そう感じた。
・人を本気で褒める勇気
・老人や妊婦に人前で席を譲る勇気
・会議で役員に向かって発言する勇気
・困難が予想されるが成功すればすばらしい成果が期待できるプロジェクト実施の決断をする勇気
・多くの人が妥協する中、「ノー」といえる勇気
・恋人に真実を告白する勇気
・事業の撤退を決断する勇気
今一度、勇気が何処から来るのかを考えてみよう。勇気を身近なものにする方法を学べたらすばらしいではないか。