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イントロダクション:「ITストラテジスト」とは何か


1 はじめに

ブログ執筆を担当することとなった東である。

私の肩書きは「コンサルタント」、そして、「情報処理技術者試験 ITストラテジスト」である。正直、世間的にも知名度が高いとは言えない(レア?な)「ITストラテジストの視点」から、毎回あるテーマについて語るというのがこのブログの主旨である。なるべく仕事にも活かせるように、普段の業務、学業、そして趣味、などの様々な体験から得られるStrategy思考を、徒然なるままにブログっていきたい。
今回は初回ということで、ITストラテジストという資格とその資格保有者の実態について述べる。また、最後に少しだけStrategy思考について述べる。

2 ITストラテジストって何?

まず、ITストラテジストという資格について説明したい。IPAが定める「対象者像」は以下の通りである(*1)。

高度IT人材として確立した専門分野をもち、企業の経営戦略に基づいて、ビジネスモデルや企業活動における特定のプロセスについて、情報技術を活用して改革・高度化・最適化するための基本戦略を策定・提案・推進する者。また、組込みシステムの企画及び開発を統括し、新たな価値を実現するための基本戦略を策定・提案・推進する者

このIPAの定義をよく読むと、「ITを活用して、経営戦略を実現するための人」と言っているだけである。つまり、「経営戦略」とはどの企業にも不可欠であろうから、そして今の時代、経営はIT抜きには語れないから、会社には必要でしょそういう人!というメッセージに過ぎないのである。意味的に「ストラテジスト(strategist)」とは「戦略家」「策士」である。そう聞くと多くの人は「なんかよくわからんが凄そう」と感じてしまうかもしれないが、実際はなんてことはない。

ただ各企業において、このような人材を誰が担うのか、どうやって獲得するか、に関する言及は大事であると考える。

外部からコンサルタントを雇って、数か月企業を参与観察なり社員にインタビューなりしてもらう。そしてあたかも医者の診断書のごとく、そして体裁よく、「ここがダメだからこうしたらいい」という情報の束を築き上げる。そして経営者が高価にこれを購入する。- おそらく、多くの経営者が経験されていることと思う。しかしながら、多くの経営者はその情報で満足した結果を得られたであろうか。

上述した定義の主語は、「擁立した専門分野を持つ」「高度IT人材」、すなわち「ITに関する何かしらの高度な専門分野をすでに身に付けた人」である。そしてそれは、別に外部のコンサルである必要性はないはずである。むしろ、「自社の内情をよく知っているはずの、すぐそこにいる技術者」のほうが色々と都合よくないだろうか。

まとめると、「すぐそこにいる社内SE、もしくは自社の勝手知りたるベンダーが、経営戦略を理解して、それをうまく自社のシステムで実現できる人」こそが、真にIPAがイメージする人材像ではないかと考える次第である。

3 資格保有者の実態

前章の続きだが、ITストラテジストの資格保有者とは一体どのような人たちなのであろうか。

私の所属している技術者団体である「日本ITストラテジスト協会(JISTA)」には、若くて25歳プログラマのITストラテジストが所属している。その一方で、65歳ベテラン技術者のITストラテジストもいらっしゃる。年齢としては30-40代の合格者が多いのだが、年齢幅は広く、それでいて職業、業種も多種多様である。そして(いわゆる外資系のITコンサルタントのような)そんなに“コンサル”している人は少ない。ちょっと尖っている?変わっている?くらいで、普段は普通のSEやプログラマだったり、営業担当やPMだったり、事業会社の課長、部長クラスの方だったりする。
事実、情報処理技術者試験はペーパーテスト(マークシートと記述と論文)のみなので、頑張って勉強して、その必要とされる思考ができるようになり、それを制限時間内に論文にて示すことができれば合格できる。

その観点からすると、この資格は単なる「シグナリング効果」であるという主張もあろう。ある一定の経験や研修を合格要件とするPMP©やCBAP©に比べると、それは確かに否定できない。実際、情報戦略や情報企画を経験したことのない人もそれなりにいるのだから。

ただ少なくとも言えるのは、彼ら(というか、我々)はやはりちょっと尖っている?変わっている?のである。より具体的に言うと、「IT業界が抱える様々な課題を解決するにはどうすればいいのか」(*2)をいつも考え、熱く議論する人が多いと感じる。そもそも、そういう課題解決が好きなのである。

このような人たちが、私が肌で感じるレベルでのITストラテジスト資格保有者のイメージである。多少の脚色はあるかもしれないし、実際には行動が伴わない人がいるかもしれないが、概ね外れてはいないと思う。「ストラテジスト」という言葉の凄さばかりが先行するが、実体は“すぐそこにいるアツい人”である。

そして、そのような想いを抱き普段の仕事に取り組めば、面白くなる。脳の血流がよくなる。また、課題解決的な言動が差異化を生み、周囲の評価も変わる(*3)。そしてより直接的に、自社の経営戦略を実現するという視点からITシステム開発やマネジメントを考えることで、暗に利益創出に貢献する- これらはあくまで私の想像の域を出ないし、factを取れていない。ただ、「そうありたい」気持ちがあるからこそ資格保有を目指し、そして取得するという人も少なくないのではないかとも思える。

4 日常から考えたいStrategy思考

残り字数が少なくなってきた。最後になるが、Strategyとは何か、どのような思考なのか、について述べておきたい。

どうすれば息子(娘)を希望の中学に合格させることができるか?どうすればもっと効率的に痩せられるのか?どうすれば好きな女の子とのデートがうまくいくか?など、長い人生では多くの「どうすれば」に直面するはずである。そしてその際には誰もが、この「どうすれば」を深く考え、具体的な企画や対応ストーリーを描くのではないか。まあ、結婚して普通に仕事していれば「どうすれば」に直面することは少なくなるかもしれないが、それでもゼロにはならない。つまりStrategy思考とは日常生活の中でごく自然に身に付けられるはずの思考だろう、と言いたい。堅苦しくStrategyとか言って、3Cだとか4PだとかSWOTだとか、フレームワーク(*4)は多いが、実際はもっと身近に感じられるものである。

ここでは会社のブログなので、日常テーマについて書くつもりは原則ない。それに「どうすればデートが・・」などとここで述べても、誰も求めておらず場違いだ。(しかも残念なことに、そのテーマでは私には適切な解決策が浮かばない。)

ただし、先に述べた普段の日常 (*5)から仕事に活かせるStrategy思考というものはある、と考える。その方向性で毎回テーマを定めて述べたい。駄文かもしれないが、読了後に何かしら得られるものがあるようにしたい。仕事に疲れたときにでも、ふと読んでいただければ幸いである。

注記:
(*1) IPA情報処理技術者試験のホームページ[1]からの引用。
(*2) JISTAのホームページ[2]からの引用。
(*3) 情報処理技術者試験合格の意味づけについては、[3]pp.488-493が詳しく最も的確であると考える。
(*4) これらの基本的なフレームワークについては次回に述べる予定である。
(*5) 私の場合、芸能などを鑑賞するのが趣味であり日常的行為であるため、その事例が多くなるかもしれない。あらかじめご理解いただきたくよろしくお願いいたします。

以 上

参考文献
※URLの最終アクセス日は何れも2014年4月13日
[1] 情報処理技術者試験 制度の概要 ITストラテジスト試験(ST)http://www.jitec.ipa.go.jp/1_11seido/st.html
[2] 日本ITストラテジスト協会(JISTA) http://www.jista.org/
[3] ITのプロ46、三好 康之 他、『情報処理教科書 高度試験午後II論述 春期・秋期』、翔泳社(2013)

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東崇城
2015年2月末で退職いたしました。 本人の了解を得て、ブログはしばらく掲載いたします。 (株式会社アイ・ティ・イノベーション/コンサルタント ■大阪府枚方市出身 ■1997年 京都大学 農学部農林経済学科(現 食料・環境経済学科)卒業 ■アビームコンサルティング、日本IBMにて、主に証券、保険系のシステム開発プロジェクトにて要件定義から設計、開発、テストまで広く多く経験を積む。2008年より当社にて、主に通信系企業の品質管理支援、マネジメント支援、組織活性等のコンサルティングを担当 ■情報処理技術者試験(プロジェクトマネージャ、ITストラテジスト他)、品質管理検定1級。都内の夜間大学院にてMOTを学ぶ ■日本ITストラテジスト協会(JISTA)正会員 ■趣味は水泳、数理プログラミング、サブカル鑑賞 ■目指すは「歌って踊れるPMO」)

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