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2020年の東京オリンピック開催に向けて改修が決まっている国立競技場で、昨日(2014年1月12日)行われた第50回全国大学ラグビー選手権決勝は、学生日本一を決めるにふさわしい激戦の末、帝京大学が見事前人未踏の5連覇を達成しました。惜しくも、わが母校早稲田大学は準優勝となり、残念ながら大学日本一になった時に歌う部歌『荒ぶる』を聴くことはできませんでした。。。(※1)
当ブログの前回 「【第19回】プロジェクト計画書に魂を吹き込め!(振り返り)」 の中で「メタファーからのフィードバック」という言葉を使いました。今回取り上げるラグビーに関しても、マネジメントの視点で既にいろいろなことが語られています。アジャイル開発における「スクラム」の語源もラグビーです。システム開発のプロジェクトマネジメントとスポーツとの親和性は、この辺からもうかがい知ることができます。(※2)
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ラグビーの話に入る前に、『日経コンピュータ』2014年1月9日号に掲載されていた二つの記事をご紹介します。これらの記事は、当ブログの 「【第17回】それは誰のリスクか?」 でも触れた「発注側と受注側」の関係について、世の中のシステム開発プロジェクトの現状を如実に示していると感じました。
まず一つ目は、システム開発を中断したプロジェクトにおいて、ITベンダーの「プロジェクトマネジメント義務」を争点とした裁判の経緯に関する記事です。裁判の過程でITベンダー(受注側)に課される「プロジェクトマネジメント義務」のうち、「リスク説明義務」に「抜本的見直し説明・中止提言義務」が加わることになりました。ITベンダーは「プロジェクトの不確実性による当初想定とのズレが修正不能なほど顕在化した場合、プロジェクトの抜本的な見直しまたは中止を提言」する義務があるというものです。まさに当ブログの 「【第13回】個別リスクとプロジェクト全体リスクという二つの視点」 で紹介した、「プロジェクト全体リスク」への対応をITベンダーにも義務付けたととらえることができます。
<ITベンダーに課される「プロジェクトマネジメント義務」>
1.システム検証義務
(要は計画段階でちゃんとシステムができることを検証すること)
2.進捗管理義務
(要は発注側と協力しながら、プロジェクトを正しく運営すること)
3.リスク説明義務
(要はプロジェクト・リスクを発注側にちゃんと説明すること)
そして二つ目は、「ステークフォルダーとの合意形成」について常識破りのセオリーを紹介している記事です。「暗闇プロジェクト」において、数多くのステークフォルダーとスピーディーに「合意形成」を図るためのセオリーとして以下の5つが紹介されています。
<「ステークフォルダとの合意形成」を図るためのセオリー>
1.優先順位は「声の大きさ」で決める
2.相矛盾する要求は「先送り」
3.難しい合意形成は曖昧に進める
4.半年前の合意は期限切れ
5.重要な会議は「儀式」にする
当記事の筆者である本園明史氏のプロジェクト現場での実務経験に根差した、実に興味深い内容です。詳細は『日経コンピュータ』2014年1月9日号を参照してください。(※3)
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さて、昨年12月最初の日曜日。関東大学ラグビー対抗戦グループの早稲田大学vs明治大学、いわゆるラグビー「早明戦」が行われました。数々の名勝負を生んだ「早明戦」ですが、現国立競技場では見納めになることから、試合終了後に松任谷由美(ユーミン)さんが「ノーサイド」を歌うなどのセレモニーも行われ、ラグビーファンにとっては感慨深いイベントとなりました。
往年の「早明戦」は、「重戦車フォワード」による「縦の明治」に対して、バックスを中心とした「ゆさぶり」による「横の早稲田」と言って、それぞれ異なるチームカラー通しの対戦となり、毎回とても見ごたえがありました。「押す明治、耐える早稲田」両チームの魂を込めた戦いは、冬の国立競技場の風物詩でした。昨日の帝京vs早稲田の決勝を見ていて、かつての名勝負を思い浮かべていたのは、私だけでしょうか?
このような歴史と伝統に支えられたラグビーの戦術は、自チームの特徴を十分踏まえたものであり、全国制覇を目指すためには必要なものだと思います。(※4)
システム開発のプロジェクトにおいても、自組織やプロジェクト体制の特徴(長所や弱点)を十分把握した上でマネジメント戦術を明確にし、信念を持ってプロジェクトを推進していくことが成功の鍵を握ります。先ほど紹介した記事のように、さまざまなステークフォルダーに対してどのように「合意形成」を図っていくかを主体的に考えることが必要であり、ステークフォルダーの顔色を見ながらプロジェクトを運営しているようでは露頭に迷うに違いありません。
「発注側と受注側」がそれぞれで自分たちの仕事の進め方(戦術)をプロジェクト計画書上に明記した(魂を吹き込んだ)上で、双方ですりあわせを行うことの重要性を改めて認識させられます。
そして、昨日の帝京vs早稲田の決勝を観戦している中でも、システム開発のプロジェクトマンジメントを行う上で参考になりそうな戦術やプレイをいくつも目にすることができました。それだけラグビーの試合は展開や動きがめまぐるしく、観戦していて楽しいスポーツだと思います。
<タックル>
相手の攻撃を止めるためのプレイですが、タックルをする側(ディフェンス)としては、一発のタックルで相手を止めるのが理想です。このプレイを見ると、何らかの調整ごとをメールで行う場合、できるだけ一発のメールで決着させるためのテクニックを連想します。
逆にタックルを受ける側(オフェンス)としては、一発のタックルでは倒されない粘り強さが必要です。このプレイからは、さまざまな交渉ごと(仕様調整、スケジュール調整、コスト調整等)について、粘り強く交渉するためのテクニックを連想します。
<相手ペナルティ後のプレイ選択>
ペナルティキックで確実に3点を取りに行くか、あくまでもトライを狙って行くかの判断も見どころがあります。仕様が固まっていない部分についての検討作業を先に進めるのか、既に仕様が固まっている部分の成果物を作ることで進捗率を稼ぐのかの判断(バランス)の大切さを思い起こします。
<ハイ・パント攻撃>
ボールを高く蹴り上げて、落下地点で競り合ってボールを獲得することで前進を図るプレイです。難しい資料の作成をお客様から依頼されたときに、早めにドラフト版を提示して確認しておいてもらうことで、時間を稼ぐなどの戦術を思い浮かべます。
<戦術的選手交代>
ラグビーのルールでは、以前は怪我の場合だけしか選手交代を認められませんでしたが、今では戦術的な選手交代もできるようになりました。難しいステークフォルダーとのハードな交渉の場合に、最初からPMが交渉に参加するのではなく、PMOリーダーなどが先に交渉を進めておいて、ここぞという場面でPMに選手交代して交渉を決定づけるなどの戦術を思い浮かべます。
・・・
このように、ラグビーの試合(その準備も含めて)からは、プロジェクトマネジメントを行う中でも参考となる要素がいたるところに見いだせるのです!
「ラグビーには、プロジェクトマネジメントの参考になることがたくさんあるぞ!」
そして、プロジェクトが完了したら「ノーサイド」ということで、全てのステークフォルダーがWin-Winの状態になっていたいですね!
それでは、次回もお楽しみに! < 前回 | 目次 | 次回 >
工藤武久
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※1 日比野弘(2013)『早稲田ラグビー 誇りをかけて』講談社
※2 「スクラム (ソフトウェア開発)」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』
2014年1月10日 (金) 09:49 UTC
http://ja.wikipedia.org/wiki/スクラム_(ソフトウェア開発)
※3 『日経コンピュータ』2014年1月9日号、日経BP社より
・P006 「News&Trend」
・P088 連載 「脱出!暗躍プロジェクト-教科書的知識は通用しない-」
※4 「早明戦」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』
2013年12月7日 (土) 21:45 UTC
http://ja.wikipedia.org/wiki/早明戦