プロジェクトを成功させるためには、前工程である超上流工程におけるIT構想・企画を適切に行わなければならないと言われて久しく、各社では必要な人材の数を確保するため育成に取り組まれています。しかし、様々なお客様を訪問していて感じることは、まだまだ不足しているという現実です。
今回のブログでは、この現状と背景についてご紹介します。
超上流工程における成果物の代表であるシステム企画書は、お客様もしくは自社の経営が求めるあるべき姿(ToBe)と現状とのギャップから要求を洗い出し、整理することが必要となります。この作業は企画なので、経営者やユーザーなどのステークホルダーとビジネス視点で取り組む必要がありますが、ステークホルダーの方も「これが答えだ!」「これがやりたいことだ!」と明確に要求を言えないことが多くあります。そのため、本工程を担うシステム担当の方は、真の要求を引き出すためのヒアリング力や問題課題の整理、または関係者と議論する場でリーダーシップを発揮し、推進するファシリテーション力などが求められてきます。
ところが、これまで多くのシステム担当の方は、ユーザーからヒアリングした要件を要件定義書として受動的に取りまとめ、システムを開発してきました。よって、言われたことをシステム化することありきで設計・構築することは得意です。
しかし、システム化は置いといて、
・企画で求められる経営的価値は何なのか?
・そのために業務を如何に変革したらよいのか?
・合わせてシステムとして、ビジネス価値に貢献できるソリューションは何なのか?
など、ステークホルダーとビジネス視点で能動的に働きかけなければならなくなります。
兎角SEの方は、やったことがないことに挑戦したり、政治的な要素が強い人と人とのぶつかり合いが想定される場面においては、どちらかというと腰が引ける人が多いと感じています。そのため、このような場に遭遇すると途端に腰が引けてしまい、結果的に期待したシステム企画書が出来上がらないということになりがちです。
そのような時に言われていることは、「結局は、SE離れした素養のある人しか超上流工程は出来ない」という印象を、人材を育成する側の方も、現場の方も内心は思っているように感じています。
このような背景があるため、「超上流工程の人材を絶対に育成するんだ!」という会社としてのスイッチは、入ったような入らないような中途半端な状態になっているのではないかと思われます。
しかし、多くのお客様を訪問すると、
・超上流工程を担う人材を育成したいが、どのように育成したらよいのか悩んでいる。
・超上流工程を担う人材を育成したいが、結局は素養のある人しか育たない。
しかし、わが社には、そのような人材はそもそもほとんどいない。
・超上流工程を担う人材を即育成したいが、どのようにしたらよいのか分からない。
などの悩みを抱えていらっしゃいます。
様々なお悩みを伺う際に、いつもお客様とお話していることがあります。
欲しい人材を即育てることは出来ません。なぜならば超上流工程を担うためには、ビジネス・アーキテクチャの設計と、システム開発後の運用にも耐えうる、しっかりとしたITのアーキテクチャ設計が必要となるため、そのための下積み経験が極めて重要となるからです。
必要であれば、中途で採用するしかありません。
しかし、中途で採用するとしても、期待する人材は業界内でも不足していることと、その方が貴社に入りたいと思うか否かは条件次第です。
よって、中途で採用する道と、社内で素養のある人を戦略的に育成するための「人材開発計画」を立案し、会社の人材戦略として真剣に取り組む必要があるのだと・・・。
必要な人材であれば真剣にその確保に取り組む、その行動として、たとえ仕組みや人のスキルが不十分でも、まずは一歩前に進むことが重要なのだと感じています。
(追伸)
「一歩前に進む」と言えば、現在ベストセラーになっているフェイスブックのCOOであるシェリル・サンドバーグ氏が書かれた「LEAN IN」という本があります。「一歩、前へ」と訳されることが多い同書、リーダーとして活躍しようと行動すると、その価値感はまだまだ男性中心であるがゆえに、男性であれば普通だと受け取られることも、女性であるがゆえに偏見を持たれ、評価されないジレンマに苛まれながらも、適時・適時に良きメンターやパートナーに恵まれながら、仕事と家庭を両立している様子が描かれています。しかし、めげずに前に進み続けることが出来るのは、彼女なりの「哲学」「価値観」があるからだと思います。
ワークライフバランスを真剣に捉える意味で、大変参考になる本だと思います。