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前回ご紹介した「フルトヴェングラーの第九」について、私も改めてネットで検索してみました。
すると、同じ演奏に対して賛否両論、実にいろいろな見方、感じ方があるものだと改めて実感した次第です。でも、どちらの見方が正しくて、どちらの見方が間違っているということはありません。これも「問題認識の相対性理論」から生まれるコンフリクトのひとつですよね。(※1)
今回は、クラシックコンサート・プロジェクトにおける『カリスマPM』とも言えるフルトヴェングラーの「プロジェクトマネジメント・テクニックの神髄」に迫ります。
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フルトヴェングラーが指揮を行うとき、指揮棒が震えていて、演奏者がどこできっかけをつかむか非常に難しかったそうです。これは、フルトヴェングラーが老いたために手が震えていたというわけではなく、次のような趣旨の意図で、わざとそのようにしていたらしいのです。(※2)
「明確なきっかけをオーケストラに与えては、演奏者がまだ音楽に十分集中しきらないうちに音楽を始めてしまうことになる。音楽を始めるきっかけがつかみづらければ、自ずと演奏者はきっかけに集中せざるを得なくなる。オーケストラの全ての演奏者を音楽に集中させるために、指揮棒をわざと震えさせてきっかけをつかみづらくしているのだ!」
この手法はシステム開発のプロジェクトマネジメントにおいても活用できます。プロジェクトメンバの自発性を高めるために、あまり詳細な指示までせずに作業の目的だけを示すということと同じです。
システム開発のプロジェクトにおいては、実に多くのメンバが参画します。それらのメンバ全てに対してプロジェクトマネージャーが直接詳細な指示を与え続けるのは不可能であり、プロジェクトを成功に導くためには、全てのメンバが自発的に活動していけることが理想です。
例えば、プロジェクトにおける問題を一掃するために「プロジェクトメンバは、常日頃から問題意識を持つこと」という先輩方からの教えもその一環と考えられます。(※3)
また、システム開発のプロジェクトに限らず、一般的な人材育成の観点でも、部下をもったことのある人なら誰しも、あえて細かな指示を与えずに、部下自身に仕事のやり方を考えさせるということを試みたことがあるはずです。
以前、私はこのことを「正しいことを言ってはいけない定理」と名付け、常に頭の片隅において部下と接していました。部下が育たないのは上司の考える「正しいこと」を先に教えてしまうため、部下が自分で考えようとしなくなるからです。部下が自分で状況を的確にとらえ、自発的にどうすれば良いかを考え、上司に相談するという構図を作らないと、部下は育ちようがありません。
そして、上司の考える「正しいこと」が仕事を進める上で唯一の正解というわけではないので、部下が上司の考える「正しいこと」を超えるアイディアを出してくれる可能性も考慮する必要があります。
フルトヴェングラーのマネジメント・テクニックを知った今では、私はこのことを「フルトヴェングラーの震える指揮棒の定理」と呼ぶようになりました。
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フルトヴェングラーは、世界最高峰のオーケストラであるベルリンフィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者でした。そのベルリンフィルのメンバがフルトヴェングラーについて、次のような趣旨のエピソードを紹介しています。(※2)
「いつものようにクラシックコンサートの練習をしていると、ある瞬間にオーケストラの音色が明らかに良くなったことを感じた。ふと練習会場の入り口を見ると、そこにフルトヴェングラーの姿があった。なんと、オーケストラの奏者たちは、フルトヴェングラーの気配を感じただけで、音楽を生き生きとさせてしまったのだ!」
これと同じようなことをシステム開発のプロジェクトで感じたことは無いでしょうか?
「泥沼のデスマーチ・プロジェクトの火消し役として『カリスマPM』がプロジェクトマネジメント支援に入ることになった。するとプロジェクトメンバたちは生気を取り戻し、プロジェクトはたちどころに正常化に向かった。。。」
まぁここまで劇的なことは無いかもしれませんが、どんなに困難なプロジェクトであっても必ず成功に導く『カリスマPM』という存在は憧れです。
なぜそのようなことが可能になるのでしょうか? それは「フルトヴェングラーの震える指揮棒の定理」と大いに関係していると私は考えます。
フルトヴェングラーはオーケストラの全てのメンバに自発性を求めます。これと同じように『カリスマPM』はプロジェクトメンバ全員に自発性を求めます。混とんとしているデスマーチ・プロジェクトの中で疲弊していたプロジェクトメンバたちは、その『カリスマPM』の存在を感じることで自発性を思い出すことでしょう。その力は絶大です。
私はこのような存在に憧れています。そういう存在になることができれば、どれだけ世の中のプロジェクトを成功に導くことができるでしょうか。。。
究極の目標・・・「何もしなくても成功させる存在感」・・・
まぁ、無いものねだりはここまでにしておきますか。。。
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このようにクラシック音楽など、自分の興味のあることとプロジェクトマネジメントを重ねてみると、いろいろ面白い視点が出てきます。
本ブログ「新感覚!プロジェクトマネジメント」のコンセプトは、プロジェクトマネジメントについていろいろ視点を変えていくことで、新たな”気づき”を得るということです。これからも本ブログを通して、私の主観・興味に基づくさまざまな視点を提供していこうと思っています。
皆さんもご自身の興味のあることとプロジェクトマネジメントを重ねて見ることで、新たな”気づき”を得る試みにチャレンジしてみてはどうでしょうか?
それに、きっと
「自分の興味のあることと重ねることで、
プロジェクトマネジメントが楽しくなる!」
次回はいったい何が飛び出してくるのでしょうか?
それでは、次回もお楽しみに!∴ < 前回 | 目次 | 次回 >
工藤武久
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※1 「問題認識の相対性理論」については、当ブログ「【第3回】問題とは何か?」を参照願います。
※2 フルトヴェングラーに関する参考文献(追加分)
・中野雄(2011)『ウィーン・フィル 音と響きの秘密』文藝春秋社
・ヴェルナー・テーリヒェン(1998)『フルトヴェングラーかカラヤンか』音楽之友社
※3 先輩方からの教えについては、当ブログ「【第2回】プロジェクトマネジメントは問題解決だ!」を参照願います。