先週末、PMI日本支部の法人スポンサーが集まって勉強会をしている「人材育成スタディーグループ」の合宿に参加しました。総勢13名の方が参加し、これまで検討を進めてきたプロジェクトマネジャーの人格コンピテンシーについて、その内容を洗練するための集中討議です。
人格コンピテンシー整理の基となる資料は、PMIより発行している、プロジェクトマネージャーの業務遂行能力に影響を与える知識・態度・スキル・行動特性などを定義したコンピテンシーモデルである『プロジェクト・マネジャー・コンピテンシー開発体系 (Project Manager Competency Development Framework、以降PMCDFと略す)』です。
PMCDFが作成された目的は、「個人と組織の双方に対して、(中略)その専門職能開発をどのように査定(アセスメント)し、計画し、マネジメントするかのガイダンスを提供するために開発された。」と書かれており、プロジェクトマネジャー個人の専門職能を開発するために、プロジェクトマネジャーの業務遂行能力に影響を与える知識、実行能力、行動特性を定義しています。
PMCDFでは、コンピテンシーとして「実践コンピテンシー」、「人格コンピテンシー」について定義しており、私が参加しているスタディーグループで討議しているのは「人格コンピテンシー」です。
ちなみに「実践コンピテンシー」には、プロジェクトマネジメントの知識を適用することによって、プロジェクトマネジャーが実行あるいは達成できる事柄や、個人が測定されうる体系、構成、ベースラインについて書かれています。主に、PMBOKの9つの知識エリアに関する活用がベースです。
一方「人格コンピテンシー」には、プロジェクトをマネジメントする個人の能力に影響を与えるその人の行動、態度、中核となる個人の特質、そして個人的なコンピテンス要素に関する個人の能力を査定し、向上させるための基礎について書かれています。
ところで「コンピテンシー」とは何なのでしょうか?
一般的には、職務の内容や仕事の役割に対して期待される成果を導く上での行動特性のことを指します。しかしPMCDFでは、コンピテンシーに広い意味を持たせた定義がなされており、プロジェクトマネジャーとしての業務遂行能力にもっとも影響を与えると考えられる3つの基本的次元(知識、実践、人格)を含めて、コンピテンシーの定義としています。
最近、プロジェクトマネジャーがリーダーシップを発揮し、プロジェクトの目的を達成するためには、技術的な要素だけではなく、リーダーとして必要なコンピテンシーを兼ね備えていなければ、その実現は難しいと言われて久しいです。しかし、コンピテンシーの定義をはっきりできていない企業が多いため、その能力開発も“素養のある人任せ”となっているのが現実だと思います。
スタディーグループで現在「人格コンピテンシー」を扱っている理由も、このコンピテンシーをより分かり易く整理することで、上記現実課題を解決する一助となるのではないかと考えたためです。
さて、「人格コンピテンシー」の内容ですが、6つのコンピテンスユニットに分類され、その分類ごとに、優秀だと一般に認められるプロジェクトマネジャーはこんな行動をしているという観点のコンピテンス要素3~5個で構成しています。
<コンピテンスユニット>
6.0 コミュニケーション能力
7.0 指導力
8.0 マネジメント能力
9.0 認識能力
10.0 効果性
11.0 プロ意識
6.0~11.0の内容をかなりざっくり表現すると、次のようなことをプロジェクトマネジャーには求められていると書かれています。
◇ステークホルダー個々人の行動や言動をよく見聞きし、かつ、なぜそのような行動や言動をしているのか、その背景を素直な心で感じ取ることができること。また、感じ取ったことを、適切なコミュニケーション方法により、ステークホルダー間で共有できている状態を作り、維持し続けることができること。
◇プロジェクト内外の環境を俯瞰的に捉え、プロジェクトの成果が、ステークホルダーが属している組織や会社にとって真に価値あることなのかを常に認識しながら、適切な行動により価値あるプロジェクトの成果を意識し行動できること。
◇プロフェッショナルとして、プロジェクトの目標達成に責任を持ち、かつステークホルダーを巻き込みながら主体的に行動できること。
あるべきコンピテンシーを定義し、定義した項目に対する達成度合いを数値化できれば、マネジメントを担うIT人材の能力開発につなげることが出来ると考えています。
そのようなことを想いながら、とことん議論できた充実した合宿のご紹介でした。
なお宣伝ですが、人材育成スタディーグループとしての検討はまだまだ続きます。本スタディーグループにご関心がある方は、ぜひ一緒に議論しませんか? ただし、参加資格を有するためには、PMI日本支部の法人スポンサーであることが条件となります。
https://www.pmi-japan.org/branch_office/pmi_activity.php