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前回は「プロジェクトマネジメントは問題解決だ!」と言い切った上で、「問題」という言葉のあいまいさについて触れました。今回はこの「問題」というやっかいなものをやっつけたいと思います。
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いきなりですが、
「問題とは、目標(あるべき姿)と現状との
ギャップである」
という定義が一般的に用いられます。(※1)
図で表現してみると、こんな感じになります。
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それでは、問題の具体例をいくつかあげてみましょう。
具体例1 「うちの子供たちが所属する野球チームのグラウンドに雪が積もって、野球の練習ができない。」
具体例2 「システム開発の仕事が忙しくて試験勉強ができず、情報処理技術者試験に合格できない。」
具体例3 「公表されたA社のHSHシステム(仮称)の稼働開始まで、残り2週間しかないのに、まだ50,000ステップ分の単体テストが終わっていない。」
そうですねえ。どれも皆、大きな問題のように思えます。
それぞれの具体例を、先ほどの問題の定義「問題とは、目標(あるべき姿)と現状のギャップである」に当てはめて検証してみたいと思います。
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まず、具体例1です。
「うちの子供たちが所属する野球チームのグラウンドに雪が積もって、野球の練習ができない。」
<目標(あるべき姿)> = 「雪が積もっていない」
< 現 状 > = 「雪が積もっている」
< 問 題 > = 「雪が積もっていない」状態と「雪が積もっている」状態のギャップ
うん、なるほど。確かに<目標(あるべき姿)>と<現状>にギャップがあるので、これは<問題>であると言えるでしょう。
ここでは「野球の練習ができない」というのは上記の問題による影響ととらえることとします。
次に、具体例2です。
「システム開発の仕事が忙しくて試験勉強ができず、情報処理技術者試験に合格できない。」
<目標(あるべき姿)> = 「仕事が忙しくない」
< 現 状 > = 「仕事が忙しい」
< 問 題 > = 「仕事が忙しくない」状態と「仕事が忙しい」状態のギャップ
そうですねえ。これも、確かに<目標(あるべき姿)>と<現状>にギャップがあるので、<問題>であると言えるでしょう。
「試験勉強ができず、情報処理技術者試験に合格できない。」というのは、上記問題による影響ととらえることとします。
そして、具体例3です。
「公表されたA社のHSHシステム(仮称)の稼働開始まで、残り2週間しかないのに、まだ50,000ステップ分の単体テストが終わっていない。」
<目標(あるべき姿)> = 「単体テストが終わっている」
< 現 状 > = 「単体テストが終わっていない」
< 問 題 > = 「単体テストが終わっている」状態と「単体テストが終わっていない」状態のギャップ
まあ、そうでしょう。<目標(あるべき姿)>と<現状>にギャップがあるので、これも<問題>と言えそうです。
上記の3つの例は、確かに「誰が見ても問題である」ように思えます。
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ところがどっこい!
これらの3つの問題も、実は「見方や立場が変われば、問題が問題ではなくなってしまう」のです!
たとえば、具体例1の<現状>=「雪が積もっている」という状態なのに、問題の影響を直撃しているはずのうちの子供たちはとても喜んでいます。もちろん野球の練習は中止で、簡単なミーティングとトレーニングが終わって、午前中で解散。その後は、雪だるまを作ったり、雪合戦したり、ものすごく楽しんでいる様子です。
つまり、うちの子供たちにとっての<あるべき姿>は、「雪が積もっている」ことであり、具体例1の<現状>=「雪が積もっている」とギャップが無いので、<問題>とは言えないことになります。
そして、具体例2の<現状>=「仕事が忙しい」という状態に対して、この就職難の時代、仕事がしたくてもできない方たちもたくさんいると思います。そういう人たちにとっての<あるべき姿>は、「仕事が忙しい」(とまでは行かないまでも「仕事がある」)であり、具体例2の<現状>=「仕事が忙しい」とのギャップはそれほど無いので、これも<問題>とは言えないでしょう。
さてさて、システム開発プロジェクトにおける問題である具体例3はどうでしょうか?<現状>=「単体テストが終わっていない」状態を問題と思わない人はさすがに誰もいないと思うかもしれません。
しかし、A社の競合会社であるB社の立場から見た場合は、この<現状>はどう映るでしょうか?「A社HSHシステム(仮称)開発の進捗が思わしくない」ということは、ライバル会社のB社にとっては願っても無いチャンス到来ということかもしれません。B社にとっては、具体例3の<現状>=(A社HSHシステム(仮称)の)「単体テストが終わっていない」は、<問題>ではなく、<あるべき姿>(ありがたい状態)に近いと言えることになります。
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なんだか言葉遊びのように思えるかもしれませんが、、、そんなことはありません!
このように「見方や立場が変われば、問題が問題では無くなってしまう」ということは、たいへん重要な「気づき」であると考えています。私はこの「気づき」のことを「問題認識の相対性理論」と呼んでいます。
実は本ブログ「新感覚!プロジェクトマネジメント」のコンセプトは、この「問題認識の相対性理論」が出発点なのです。「見方や立場が変われば、問題が問題では無くなってしまう」のと同じように、プロジェクトマネジメントについての見方、視点を変えていけば、何か新しい「気づき」が生まれるのではないか。そのような試みをこのブログを通して、皆さんと共有していきたいと思っています!
それでは、次回もお楽しみに! < 前回 | 目次 | 次回 >
工藤武久
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※1 この問題の定義については、ハーバートA.サイモン 稲葉元吉、 倉井武夫訳(1979)『意思決定の科学』産業能率大学出版部が出典とされる。また、高橋誠(1999)『問題解決手法の知識』(第2版) 日本経済新聞社(日経文庫)も参考となる。