今回からプロジェクトマネジメントに関するブログを発信することになりました工藤武久(くどう たけひさ)です。プロフィールにも書かれている通り、私は社会人になってから現在に至るまで、さまざまなシステム開発プロジェクトに携わり、いろいろな失敗や成功も含めた経験を積んできました。現在は株式会社アイ・ティ・イノベーションのシニア・コンサルタントとして、お客様のプロジェクトマネジメントのお手伝いをさせて頂いています。
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お客様のお手伝いをしている中で感じることは、これだけプロジェクトマネジメントの手法やノウハウが世の中に出回ってきているのに、「プロジェクトの成功率」が向上しているという実感が少ないということです。我々はプロジェクトマネジメントのコンサルタントを主たる仕事としているので、プロジェクトの成功率が向上しないということは、我々のご支援を必要とするお客様がまだたくさんいて、我々のビジネスとしては悪いことでは無いと思われる方がいらっしゃるかもしれません。
でも、我々の思いはまったく違います!当社の会社名(アイ・ティ・イノベーション)でも示すように、我々の目指すところは「ITによってお客様がイノベーションを起こして飛躍的に成長し、その結果社会全体の発展につながっていく」ことです。そのためには、できるだけ早くプロジェクトマネジメントが本当の意味で世の中に定着し、プロジェクトの成功確率が高まって欲しいと願っています。
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それでは、プロジェクトマネジメントが世の中に出回っているのにプロジェクトが失敗する原因を考えてみましょう。
(仮説1)プロジェクトマネジメントについての理解が不十分で使いこなせていない
(仮説2)プロジェクトマネジメントは理解して適用しているが十分効果が出ていない
(仮説3)プロジェクトマネジメントとは別の原因でプロジェクトが失敗している
さて、皆さんはどのようにお感じでしょうか?
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この仮説が正しいとすれば話は簡単です。もっともっと、プロジェクトマネジメント手法の目的や効果について啓蒙していけば、問題は解消するはずです。昨今では大学や専門学校でもプロジェクトマネジメントについて教わる機会も増えています。あと10年たてば、状況は改善するでしょう。。。
本当ですか?
私の感覚では、少なくとも1980年代くらいからシステム開発の現場でプロジェクトマネジメントの取り組みが進んでいたように思います。実際、私が携わったプロジェクトでも、「プロ管(プロジェクト管理の略)」というチームがあり、進捗報告書のとりまとめや議事録作成等、現在のPMO業務のようなことを担っていました。このようなプロジェクトマネジメントの取り組みが始まってから、少なくとも30年以上経過しているにもかかわらず、プロジェクトの成功率がそれ程向上していないということは、「今の延長線上で啓蒙活動を続けても、近い将来にそれほど大きな成果を得ることはできない」と考えるのが自然ではないでしょうか。
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この仮説はどうでしょう?ちゃんとプロジェクトマネジメント手法を(完璧とはいかないまでも、それなりに)取り入れているのにうまくいかない。この仮説が正しいとすれば、「そもそも世の中に出回っている従来のプロジェクトマネジメント手法は、プロジェクトの成功に寄与するものではない」という、とんでも無い結論に陥ってしまいます。これが正しいとすれば、もっと新しいプロジェクトマネジメント手法を考えていく必要があるという結論になります。。。
この結論については、ある意味魅力的ではあるがどこかしっくりこないところがあるのではないでしょうか。実際、従来のプロジェクトマネジメント手法を活用することで、プロジェクトを成功に導いてきたという自負のある方は多いと思います。ちょっと古臭いですが、「狼人間を撃つ銀の弾はない」(※1)というのが正しそうです。
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この三つの選択肢しかなければ、おそらく多くの方はこの三番目の仮説に解を見出すのではないでしょうか。プロジェクトマネジメント手法はきちんと適用しているけれど、そもそも、
A.システム企画の内容が間違っている
B.公表された本番稼働時期が非現実的
C.見積もりが甘すぎた
D.必要なスキルの人材がいない
E.ユーザ部門が協力してくれない
等々、プロジェクトマネジメント手法とは別次元の問題があるので、プロジェクトが失敗している。。。
ちょっと待ってください!
PMBOK(※2)をご存じの方は、九つの知識エリアを思い浮かべてください。
A.企画内容 ≒ スコープ
B.本番稼働時期 ≒ タイム
C.見積もり ≒ コスト
D.人材/E.ユーザ部門 ≒ 人的資源
今あげた「プロジェクトマネジメント手法とは別次元の問題」は、全てPMBOK(プロジェクトマネジメント知識体系)のカバー範囲と考えられないでしょうか?こうして考えてみると、
「プロジェクトマネジメントでカバーできない
問題って、そんなに多く無い」
ということに改めて気づかされます。私は「これがPMBOKの優れたところ」だと感じています。
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私のこれまでの経験や考えてきたことを元に、プロジェクトマネジメントについてのいろいろな視点をこのブログを通じて提供していきたいと思います。
おそらく読者の皆様はプロジェクトマネジメントについて、既に幅広い知見をお持ちの方が多いと思います。このブログの内容について「そんなことはとっくに解決済み」とか、「そんな方法はとっくに試している」など、皆様の実体験やお考えに基づくご意見をたくさん頂けると幸いです。
工藤武久
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※1 フレデリック・P・ブルックス Jr. 滝沢徹・牧野祐子・宮澤昇訳(2002)『人月の神話 狼人間を撃つ銀の弾はない』(原著発行20周年記念増訂版、新装版)ピアソン・エデュケーション
※2 PMBOKとはアメリカの非営利団体PMI(Project Management Institute)が策定したプロジェクトマネジメントの知識体系であり、プロジェクトマネジメントを「統合」「スコープ」「品質」「タイム」「コスト」「人的資源」「コミュニケーション」「リスク」「調達」という9つの知識エリアに分類している