さて、今回は、ITアーキテクトの仕事は、どのようなものか考えてみよう。ITアーキテクトとは、高度なソフトウェア専門家という意味ではなくて、ビジネスの課題を出発点としてIT戦略を実現するための4つのアーキテクチャを構想・設計・指導できる能力を持った、IT全般の責任者でなければならない。
4つのアーキテクチャとは、ビジネス・アーキテクチャ、ソフトウェア・アーキテクチャ、インフォメーション・アーキテクチャ、インフラ・アーキテクチャを示す。
日本では、ITアーキテクトは、高度なソフトウェアの専門家であると位置づけられがちであるが、国際的には、ビジネス・アーキテクチャ設計とIT戦略実現をミッションとするIT技術分野のトップの役割を示すのが通例である。アーキテクトという役割名自体が普及していない日本の現状を見れば、この分野で後れを取っていることは明白だろう。
ITアーキテクトは、ビジネス戦略からITの構造定義に関与する。ITアーキテクトは、目標とするIT構造を決定するために俯瞰的にビジネス・アーキテクチャを明確化し、ソフトウェア・アーキテクチャとインフォメーション・アーキテクチャを決定する。さらに、ビジネスを動かす基盤となるインフラ・アーキテクチャを定義する。
都市計画でいえば、ビジネス・アーキテクチャは、町が機能している様子を描くことであり、インフラは、道路、鉄道、電力や水道、ガスなどの社会インフラに位置付けられる。我々が、設計・管理するものの重要要素として情報(インフォメーション)も、町全体を支える共通基盤に位置付けられる。(インフォメーション・アーキテクチャのこと)これら基盤の上に構築されるソフトウェア・アーキテクチャが、個々の機能としての建物や施設に当たる。
IT都市計画(ここでは、このように呼ぶことにする)はITアーキテクトに次のような能力を求める。
私たちが知っていると思っている“高度なソフトウェア技術者”とはまるで違うことに気が付かれたであろうか?
仕様が決められているものを作る技術者であれば、内向的でも緻密さやまじめさで良い仕事はできるかもしれない。しかし、IT都市計画となれば、多くのステイクホルダーとのコミュニケーションを図り、調整しながらの仕事が中心になる筈である。ITアーキテクトは、外から内に向かって、高いビジョンと目標を持ち、俯瞰的な視野で、判断と決定を繰り返しながら仕事を進めることになる。エンジニア全員が、この役割に就くわけではないが、せめてITに携わる人の5%から10%ぐらいがこのような仕事をするアーキテクトにならなければ、今後この産業は成り立たなくなるだろうと私は確信している。
さて、それでは私たちは、どのようにアーキテクトを養成すればよいのだろうか?
日本の技術者は、優秀で頑張り屋が多く真面目だ。しかし、問題は、体系的に技術を学んでいないところにある。数多くのプロジェクト経験を積めば、アーキテクトになれるわけではないのである。それは、土木建築の世界で、工事から工法を学び取ることが出来ないのと同様なのだ。開発から工法(ITの方法論)を学ぶことはできないのである。
工法は、工法として学び、俯瞰力と判断力を発揮することが必要である。
次回は、工法は、工法として学ぶ方法(ITアーキテクチャを学ぶ方法)を解説する。
(追伸)
縁あって、約40年ぶりに倉敷の大原美術館に行ってきた。エル・グレコ、マネ、ゴーギャン、マティスなどを観た。棟方志功の版画も迫りくるものがあった。モネの睡蓮は、素晴らしい。同じ作品も見る時期で感じ方が変わる。若いころ意味の分からなかった現代美術も違う感覚で観ることができた。
やはり、私は、印象派が好きだ!心が落ち着く。時々、美術館に行ってみるのもいい。
仕事以外で美術でも音楽でも好きだと思えるものがあることは、いいことだと思っている!
また、どこかへ行こう!!