数年に亘り、お送りして参りましたこの連載、今回でいよいよ最後となります。
最終回では、これまでの内容を皆様の実務に活かすために「まずどこから始めるべきか?」についてお伝えしたいと思います。
とりあえず“心配事”を書きだす
プロジェクトマネジメントとはリスクと戦う武器です。まずは戦う相手をハッキリさせなければ始まりません。
とりあえず、皆さんがこれから仕事を進める上での心配事、「モヤモヤしていること」「不安に思っていること」「このままでは危ないと思っていること」を洗い出してみましょう。
「うーん、あまりやったことない仕事だからよくわからん!」とか「ふーむ、もしかしたら人手が足らなくなるかも?」とか「いやー、気難しいお客様だからいろいろ怒られるかも・・・」とか、考えれば様々な心配事、つまりリスクを見つけることができると思います。
洗い出しが終わったら、それぞれの心配事について対応策を考えてみましょう。
と言っても、「えーい、当たって砕けるぞ!」とか「まぁ、最後は徹夜で何とかなるかな?」とか「危険だからあまり首を突っ込まないようにしよう・・・」とか、諦めてしまっては敵を明確化した意味がありませんから、ここでは戦い方、つまり戦略を練らなければなりません。
「勉強期間を設け、過去の類似プロジェクトを調査しよう」
「兼任している業務を部下に任せ、こちらの仕事に集中しよう」
「お客様と頻繁にコミュニケーションを取る機会を作り、逐次確認しながら進めよう」
いろいろ視点を変えながらじっくりと考えてみると、様々な工夫の余地があることに気付くはずです。ここで如何に考え抜いてリスクに対する有効な戦略を立てるか、これが最初の重要なポイントとなります。
簡単な計画を作ってみる
それでは次のステップ。
戦略に基づいて具体的な作戦計画を組み立てましょう。つまり、リスクへの対応策を組み込んだプロジェクト計画書を作成するのです。
プロジェクト計画書には様々な内容が含まれることを説明してきましたが、慣れない方はまずスケジュール表だけでも構いません。今後必要となる作業を洗い出し、担当者・作業期間を設定してガントチャート形式のスケジュール表を作ってみます。
この時、頭の中で作業の進め方を具体的に思い描きながらスケジュールに落とし込んでいくことが重要です。
例えば、資料作成の作業も、「資料を作る」→「上司のチェックを受ける」→「修正する」→「上司に再チェックを受け、承認を得る」→「お客様に提出する」といった進め方をイメージしながらスケジュールを検討すると、より精度を高めることができるはずです。
進捗と問題・対応の状況を確認する
あとは、スケジュール表をもとにプロジェクトの作業を進めていく訳ですが、最小限の管理として進捗と問題・対応の状況を定期的に確認しておくことが基本となります。
これは、作戦計画がうまく遂行されているか戦況を把握し、必要なテコ入れをするということですね。
そのためには毎週1回メンバーを集めて進捗会議を開催し、各担当者の作業の進み具合、および何か問題が起こっていないかを確認します。もし問題が起こっている場合には対応策を決定し、それを実行する担当者と期限をこの場で明確化しておきましょう。
最後に、前回進捗会議までに挙げられている未解決の各問題について、対応策の実行状況を確認して会議終了です。
会議後、プロジェクトマネジャーは報告結果をもとにスケジュール表にイナズマ線を引き、問題・対応状況一覧を更新してメンバーに送付して共有しておきます(次回の進捗会議はこの資料を見ながら行うことになります)。
この毎週の進捗会議により、少なくとも「大きな遅れが生じていることが後になって判明する」「問題が長期間放置され、取り返しのつかない大問題に発展する」といった大失敗を防ぐことができます。
ここまでがプロジェクトマネジメントの考え方に沿った基本的な管理の仕方ですが、世の中にはこれだけで十分な管理が行えるプロジェクトも結構あります。この基本形から初めて、あとは必要に応じて徐々に様々な管理の方法を取り入れていけば良いのです。
プロジェクトマネジメントは、知恵を振り絞り、工夫する人にこそ役立つ
最後に、プロジェクトマネジメントを仕事に活かすための「基本的な心構え」について。
当然ですが、プロジェクトマネジメントの知識や手法自体が何かを生み出すことはありません。
プロジェクトマネジメントの考え方は「情報の整理の仕方」のようなものであり、あくまで“武器”に過ぎません。
これを強力なハンマーとしてうまく振るうか、それとも重たいだけの鉄塊にしてしまうか。
それは“人”次第であり、「自分の頭で考え、知恵を振り絞り、工夫し続ける」という意識があってこそ、整理された情報を使ってチャレンジの成功確率を高めることができるのです。
ここが、プロジェクトマネジメント力を高め、活かしていくための前提となる心構えではないかと考えています。
いかがでしたでしょうか。
拙い連載にもかかわらず最終回までお付き合いをいただき、心から感謝しております。
皆様の業務の一助になることを祈りつつ、締めくくりたいと思います。
本当にありがとうございました!