当初は「コストの状況を確認する」というテーマを考えていたのですが、ゴールデンウィーク明けにいきなり込み入った話題というのもアレですから・・・。
今回はちょっと寄り道して普段とはちょっと違う観点、「プロジェクトマネジメントに対する誤解」について。
これまで多くの組織やプロジェクトに対してコンサルタントという立場からお手伝いをしてきましたが、プロジェクトマネジメントという考え方に対して拒否反応を示される方も時々いらっしゃいます。
もちろん様々な理由があってのことですが、そこには誤解もあり、最初の入り口で「食わず嫌い」になっているケースが多いのではないかと感じています。
しかし、これはとっても“モッタイナイ”ことです。ここで良く投げかけられる代表的な問いと、なぜそれが誤解であるのかを私なりにまとめてみたいと思います。
質問(1) 「ただでさえ忙しいのに、余計な手間が掛かるのでは?」
このような質問は本当に良く訊かれるのですが、半分正解、半分間違いです。
確かに、プロジェクトマネジメントの考え方を取り入れると、それまでの進め方に比べて手間が掛かるようになります。例えば、計画書やレポートなど資料の作成、品質の確認や情報共有のための会議など、プロジェクトマネジメントのための活動にそれなりの時間を必要とすることは事実です。
しかし、それは決して“余計”な手間ではないのです。
例えば、事前にしっかりスケジュールを立てず、場当たり的に作業を進めているとどうしても無駄な待ち時間が生まれてしまいます(Aさんの作業が終わらないと先に進めないので、その間BさんとCさんはヒマなど)。例えば、品質上の問題が早期に発見できなければ、せっかく時間を掛けて作ったものが無駄になり、作り直しのための追加費用が必要になったりします。
プロジェクトマネジメントの活動によってこのような無駄な時間や失敗による損失を減らすことができるため、結果的にはいくらでもお釣りがくるものなのです。
おそらくこの質問の背景には、「プロジェクトマネジメントとは、ある画一的な方法をすべての仕事に適用すること」という誤解があるのではないでしょうか。
確かに、固定的な方法を無理やりすべてのプロジェクトに当てはめようとした結果、活用されもしない細かな情報を何度も報告させられる、意味のない会議が延々と続くなど、過度な複雑さが非効率を生んでいる場合もあり、それでは「余計な手間」と言われても仕方ありません。
どんなプロジェクトでも共通的に満たすべき最低限のレベルはあるとしても、その上でプロジェクトの特性・状況にマッチした効率的な管理方法を決定することは必要で、そこが押さえられていれば手間よりもメリットの方がはるかに大きくなるのです。
質問(2) 「本当に自分達の役に立つの?」
(1)とは別のケースで、「個々のプロジェクトにとって一見余計に見えても、組織にとっては重要な活動」について、その意義が認識されておらず、負担に感じてしまうケースもあります。
例えば、プロジェクトマネジメントにおいては、プロジェクトのデータを今後の組織的改善のために提供するような活動も含まれています(プロジェクトの品質データを集めて分析し、組織的な品質改善活動に利用することなど)。当のプロジェクトにとってみれば一見余計な手間に見える知れませんが、しかし最終的にはグルっと巡って自分達にも大きな便益が返ってくることを考えてみる必要があります。
プロジェクトマネジメントの効用は、組織としての全体的・長期的な視点からもとらえるべきです。
質問(3) 「現場の工夫がなくなるのでは?」
プロジェクトマネジメントは「人間を型にはめてその自主性を否定するもの」というイメージを持たれている場合もあります。
この質問の背景には、「プロジェクトマネジャーがすべてを決定し、メンバーはそれに従うだけ」という誤解があると思われます。
しかし、そもそもプロジェクトとは新たな価値を創造する活動です。誰が何をどう管理したところで、「全員で知恵を絞って主体的に取り組まなければ成功できない」という、プロジェクトの本質が変わるものではありません。
むしろ、プロジェクトマネジメントは、メンバーがその段取りの確認や状況の把握のために非効率な労力を使うことなく、本来の「考える仕事」に集中できるようにするための手段とも言えます。プロジェクトマネジメントによって予定や状況の可視化が効率的に実現されれば、その情報に基づいてメンバーは課題解決のための工夫や成果を生み出す活動により注力することができるようになります。
プロジェクトマネジメントとはすべての行動を誰かが決めることではなく、創造力を発揮するための「メンバー共通の活動基盤」と考えるべきでしょう。
今回はいつもと少し違った観点からプロジェクトマネジメントについて考えてみましたが、いかがでしたしょうか。
残りの2つの質問についてはまた次回。是非ご期待下さい!