去る11月14日(日曜日)に名古屋でドラッカー大会の第5回大会が、開催された。休日にもかかわらず約100名の参加者があったのは、主催者の努力もさることながらドラッカーに対する関心の高さの現れである。
ドラッカー学会の創始者でもある上田惇生先生、坂本和一先生をはじめとして、ドラッカー学会の役員の皆さん、私もドラッカー理論に基づく人間力強化プログラム実践の成果について講演させていただいた。また、名工大教授の木村徹先生による未来自動車に関する講演も印象深かった。二次会では「もしドラ」の著者の岩崎夏海さんも参加された。
世間では、「もしドラ」の話題が、学術者からいわゆる庶民まで幅広く浸透している。また、日本のあらゆる層の人が、あらゆる理解でドラッカーを読む。これに関して一部で批判的な意見も聞かれるが、良いではないか。私は、誰がどんな読み方をしても良いと考えている。今起こっていることを冷静に判断してみよう。
私は、上田惇生先生とは、数年前から仕事上の親交がある。先日、上田先生にお会いしたときに次のようなことを尋ねた。
「上田先生!今なぜドラッカーなんでしょうか?なぜ、ドラッカーに一般の人まで反応しているのでしょうか?」
「一言で言えば、世の中が、変だと多くの人が感じているからだろう。変化の前触れや変化の兆候を人々が感じたとき、ドラッカーが、注目されるということだろうね。」
災害の予兆を動物が感じて集団で逃げ出すことに似た現象かもしれない。確かに、岩崎さんは、「もしドラ」を書くときに、ドラッカーをよく理解し、高校生の野球を題材で分かりやすく書いてくれた。名作である。しかし、それだけでは、ドラッカーブレイクの説明をするのは難しい。岩崎さんも言っている。私は、200万部売るつもりで書いた。しかし、それは、10年かけて売れれば良いと思っていたが、2年もかからない勢いだ。彼自身も驚いている。違う何かの要因が関係していそうだ。本屋で立ち読みをしていると主婦、サラリーマン、学生、女子高校生あらゆる人が手に取ったり、買ったりしている。実は、私は、この本が出版されてすぐ読んだが、妻から同じ本の質問があり、息子と一緒に読むという。一家4人で2冊を買った。社員への普及もブレイクする前だ。読んだその日に、女子社員に手渡し、読んでもらっている。そして社内にも広がった。ドラッカーの作品は、初期のものは、やや硬い感じがするが、私は、「マネジメント」も好きだが、「明日を支配するもの」の方 が、好きである。ドラッカーが、人間に対する愛情を伴って期待を込めて書いているような感じがする。本の読み方は、難しくない。自分の理解で読むことが大切だ。あとで、他の人の感想を聞けばよい。必要なので今、ドラッカーが読まれていると思う。
やはり、上田先生の言っている「世の中が、変だ!」ドラッカーは、世の中の仕組みの変化点は、2010年から2020年頃だと言っている。もしそうだとすると、日本社会の変化に対する反応は、すごいということになる。一方で、政治もだめ経済もだめという「だめだめ空気」が、漂っているが、最後の最後は、日本は、盛り返すような気がする。変化を社会が捉え社会として腹落ちしたときに、日本社会は、底力を発揮するはずだ。
楽観的かもしれないが、国民的規模でドラッカーを読む国は、他には無いことだけは、確かだ。いま、こつこつと努力している人が、多くいるに違いない。努力が、いつか形になり、力になる。私は、ひそかにこの国の力を期待しているのだ。