これまで複数回に渡りプロジェクトの計画の策定方法について考えてきました。今回は計画書作りの全体を振り返ってポイントを“おさらい”しておきましょう。
計画書作成のポイント
・ プロジェクトで時間やお金を使うからには、効率的で無駄なくプロジェクトを進めなければなりません。そのためには段取りが重要であり、プロジェクト計画書を実際の作業を始める前にしっかりと作り込み、完成させておかなければなりません。
ただし、先に進まなければ細かいところを決めきれない場合、次のどちらかの計画方法を選択します。
1. 全体の大枠計画を作成しておき、詳細な計画は作業が進んでから作成する。
2. プロジェクトを複数に分割して順次実施することとし、各プロジェクトの作業開始前に計画書を作成する。
・ プロジェクト計画書の基本要素には以下のようなものがあり、それぞれのポイントに沿って内容を検討します。
1. 目的
‐ 目的と手段を混同しない。プロジェクトによって組織が得ようとする便益・価値・メリットが明確に分かる目的を書く。
‐ 目的が達成されたことが判断できるよう、具体的なゴールを定義する。
2. スコープ
‐ プロダクトスコープ、プロジェクトスコープをそれぞれ明らかにする。
‐ 範囲がグレーな部分については、プロジェクトの“範囲外”が何かを書くことで明確化する。
3. 作業リスト
‐ 作業リストは階層的に定義する。
‐ 作業を階層的にブレークダウンしていくためには、まず最終成果物を分解し、各成果物を生み出すための「検討/準備→実施→チェック/承認→公開」という作業手順でさらに分解する。
4. スケジュール
‐ スケジュールの中でマイルストーンを明確化する。
‐ 作業間の依存関係を考慮し、正しい順序で作業が行われるようスケジュールを組み立てる。
‐ 同じメンバーが担当する作業の期間の重なり具合をチェックし、無理のないスケジュールを組み立てる。
5. 体制
‐ 指揮命令系統が明確になるよう体制図を書く。
‐ 役割分担を明確化する。
6. コミュニケーションルール
‐ 会議体の定義を基本として、メール、情報共有システム、議事録、Q&A、緊急連絡網などのルールを決めておく。
7. 品質目標
‐ 品質目標が高ければ良いというものではなく、コストを考慮した現実的な目標を設定する。
8. 予算
‐ 類推見積もり、ボトムアップ見積もり、係数モデル見積もりから適切な方法を選んで(または複数の方法を組み合わせて)コストを見積もり、予算を確保する。
‐ 予備コストも含めて予算化しておく。
9. リスク
‐ 「リスクの背景・原因→引き起こされる事象→影響」の構造が確認できるようにリスクを記述する。
‐ 細かいリスクやほとんど起こり得ないようなリスクまで洗い出して管理する必要はない。
‐ リスクへの対策を、スケジュールや体制など他の計画要素に反映することによって実効性が生まれる。
組織で行われる各プロジェクトの計画を“同じ目線”で把握する
上記のポイントはそれぞれのプロジェクトの計画書を作成する際のものですが、組織の中でプロジェクトの計画書を作成する場合にはもう一つポイントがあります。
それは、「計画書の“作り方・書き方”を各プロジェクトでそろえておく」ということです。
組織でプロジェクトを行う場合、複数のプロジェクト間の関係性を確認したり、組織のどのメンバーをどのプロジェクトに投入するかといった調整をしなければなりません。その際、計画書の項目や記述レベル、書式が各プロジェクトでバラバラだと“同じ目線”で各プロジェクトの計画を確認することができず、適切な判断ができなくなってしまいます。
従って、組織としてあらかじめ“標準”を決めておき、各プロジェクトはそれに従って計画書を作成できるように組織のルール・体制を整備しておくこともまた重要なポイントとなるのです。
次回からはプロジェクト管理の次の段階に進みます。ご期待下さい!