読者のみなさま。こんにちは!
株式会社アネゴ企画の上田雅美です。
マネージャー向けのコーチングの研修をしていると、時折こんな質問をいただきます。
「褒めたら勘違いしませんか?」
という質問です。今回はこの質問をきっかけに考えたことを、書いてみたいと思います。
先日ニュースでアメリカの団体であるICF(InternationalCoachFederation)の調査結果が発表になり、経済不況化においてもコーチングを活用して業績達成支援が行われているというニュースがありました。(http://japan.zdnet.com/release/story/0,3800075480,10467633,00.htm)
コーチングは自らが描いた目標に向かって行動する人を支援するパートナーシップです。それだけ、個のパフォーマンス向上なしには組織のパフォーマンスをあげることはできないと感じていらっしゃる経営者が多いということでもあるのでしょう。
スピード化、効率化された組織の中、また、変わりやすい国際環境・経済環境のなかで柔軟に考え、自身をもってパフォーマンスを変えてゆくことをする人たちに多く支援されている結果はとても自然な結果だと感じました。
さて、その「個」のパフォーマンスにとても影響するコーチングの考え方のひとつが「承認する」というスキルです。よく「褒める」ということの違いについて説明を求められることがありますが、まずは「承認する」というスキルの解説をさせていただき、その違いを明らかにしてゆきましょう。
「承認(acknowledgement)」とは、褒めることと同義ではなく、事実を事実として容認するということである。(神戸大学ビジネススクールで教えるコーチング・リーダーシップ 伊藤守・鈴木義幸・金井壽宏・著 ダイヤモンド社)
つまり、「知っているよ」「聞いたよ」「見たよ」という事実を伝えるのが承認であり、自分の感想を伝えることやいいことに焦点をあてることの多い「褒める」というのとは少しニュアンスが違います。子供が親に「勉強しなさい」といわれるよりも、いつもと違ってちょっと宿題に早く取り組んだときに「宿題やっているのね。」といわれたことによってその行動が繰り返し行われるようになるというたとえ話をすることが多いのですが、承認にはいくつかのタイプがあります。
(1) 存在承認 (存在や姿勢などに焦点が当てられているもの)
(2) 成果承認 (結果に焦点が当てられているもの)
(3) 成長承認 (変化に焦点が当てられているもの。他人との比較は含みません)
承認のスキルはよく(2)によって行われることは多いのですが、組織や学習の中では特に(1)や(3)が少なくなりがちといわれています。
さて、はじめの「褒めたら勘違いしませんか?」という質問に戻りましょう。
もしかしたら、そういう人もいるかもしれません。
それは、相手の受け取り方であって私たちがコントロールできるものではありませんから。
しかし、近頃では役員クラスもプレイングマネージャーという場合が多く、リーダーも標準的に外出やミーティングなどに追われているようです。それを部下も良く知っていますから、そんなに忙しいなかでも上司が自分たちにエネルギーを使ってくれていると知るだけでも「関心を持って見守っていてくれている」とうれしく感じることが多いそうです。
承認が上手なマネージャーは、自ら足を運ぶことはもちろん、確実性の高いネットワークを用意しているようです。「○○さんから聞いたんだけれど・・・」と、いろいろな手段を使って部下が組織のために貢献しようとしている瞬間を上手にキャッチしています。
承認は、例えるならばタフな道を行くためのガソリンのようなものではないでしょうか?
真剣に関わっていることを伝えるための承認であれば、必要があれば真剣に叱ることも承認なのかもしれません。
とにかく、みなさんのまわりにガソリンが切れている車を見かけたら、承認というガソリンを入れてあげましょう。どんな高級車でもガソリンなしには動かないはずですから。