私は延べで30年近く、登山をやっています。登山は「あの山に登りたい、制覇したい」といった明確な目的があります。そしてそれを実現したいがために、登山計画を立案し、様々な準備を行ないます。
登山に馴染みの無い方もいらっしゃるかもしれませんが、今回のメルマガは「登山」をテーマに、プロジェクトマネジメントの意義についてお伝えします。
最近の登山ブームで、十分な準備をせずに山を登り、遭難するニュースを良く見かけます。遭難すると、周りの人に心理的、金銭的な迷惑をかけるだけでなく、登山者自身が死亡する最悪の事態に陥ることもあります。そう、最大のリスクは「死亡」です。
ヒマラヤ登山は別格として、日本国内の3000m級の山に長期で滞在する場合、「遭難」しないよう、通常次のような段取りで登山は行なわれます。
リスクは「遭難」でしたので、計画・準備、登山実施中も、リーダーは常に「遭難」を意識しながら行動します。もしリーダーがリスクを意識せず、無謀な計画、無謀な登山を強行すれば、「遭難」しないのは、さまざまなラッキーが重なった結果に過ぎません。
現実のITプロジェクトでは、プロジェクトマネジメントが失敗したからといって、メンバーが死亡することはありません。単純に当てはめることは出来ませんが、
「もしリスクマネジメントを怠ったら、自分自身、もしくはプロジェクトメンバーが死亡する」
「しかしプロジェクトの目的は、リスクが発生しないよう最善をつくさなければならない」
としたら、プロジェクトリーダーの意気込みは、常に「真摯」、「真剣」であり続けるであろうと思います。
(追伸)
商売心得帖として、PHPより出版されている松下幸之助氏の言葉をまとめた本があります。その中の「名君と忠臣」に感銘しました。
“消費者は王様”という考え方について、幸之助氏は「非常に徹した考え方だと感心されたとのことです。しかし王様(=消費者)の言われたとおりのことをすると、結果王様が困るようなことになる。よって真の家臣(=サービス提供者)であれば、王様が間違ったことをしないよう、時に忠言を呈しつつ忠勤を励まなければならない」と。またこのような忠臣を呈することは、国家の繁栄をもたらすと。
ビジネスを行なう際、その拡大を図るためにお客様の満足度を高めることだけに目を奪われると、何のために活動をしているのかを見失いがちです。しかしその成果として、国家の繁栄、人類の永続的な繁栄といった、社会の一員としての勤めを自覚できた時、真に企業の価値、個人の価値が極大化するのではないか、そのような思いを新たにすることができた、幸之助氏のお言葉でした。