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【第20回】段取りの九:リスクへの対策を検討する(1)


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さて、皆さんと長らくプロジェクトの計画書作りを続けて来ましたが、いよいよ計画書の最後の項目となる“リスク”について考えてみたいと思います。

まず、“リスク”とは何か第4回の内容をもう一度読んで確認してみましょう。
https://www.it-innovation.co.jp/2009/07/06-150922/

そうですね、簡単に言えばリスクとは「このままでは問題が起こるかもしれないと言う予感」ということです。
例えば、
・お客様からの要求が曖昧なため、途中で資材の追加が必要となり予算オーバーとなる(可能性がある)。
・採用した製品にメンバーが不慣れで、組み立て作業に時間がかかり納期に間に合わない(可能性がある)。
などといったものをリスクと呼びます。

プロジェクト活動は新しいチャレンジであり不確実性が伴うため、このようなリスクが数多く潜んでいるはずです。それらのリスクを洗い出し、先んじて予防策を講じておくことがプロジェクトを成功させるためには非常に効果的なのです。また、予防策を打ったにもかかわらず、リスクが実際の問題となって顕在化した場合の対策(「発生時対策」などと呼びます)をあらかじめ検討しておくことも重要といえるでしょう。

計画時にリスクの対策をしっかりと検討する

これらのリスクに対する活動はプロジェクトの実施期間を通じて継続的に行われるものですが、プロジェクトの実際の作業が始まると徐々にリスクへの打ち手が限られて来るものです。
少々大変ではありますが、計画書を作成する段階で十分にリスクを洗い出し、予防策を計画内容にしっかりと反映しておけば、プロジェクトの作業が進んでから「計画時にもっと考えておきゃ良かった・・・」と後悔しなくても済むのです。

それでは、まずリスクの洗い出しです。

いくつかの方法がありますが、一般的なのはプロジェクトメンバーから意見を聞いてリスクを集めることです。例えば、「このプロジェクトを進めていくにあたって、何か心配していることはある?」などと訊いてみれば様々な意見が出てくるでしょう。
ただし、たまに「そんな後ろ向きのことを考えずにさ、とにかくガンガン突っ走ろうぜ!」とか、「そんなの今考えなくても、問題が起こって時に頑張ればなんとかなるさ!」といったモーレツな意見が出る場合もあります。いえいえ、いずれにせよプロジェクトには多くの困難が待ち受けています。そこにエネルギーを集中させるためにも、あらかじめ想定できるリスクは皆で知恵を出し合って、事前に潰しておかなければならないのです。

リスク洗い出しのポイント

リスクを洗い出す際に、重要なポイントがあります。それは、図1のようなリスクの“構造”に着目することです。

図1 リスクの構造
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ついつい真ん中の「リスクによって引き起こされる事象」に意識が行きがちですが、その背景・原因と、事象によってもたらされるプロジェクトへの影響を合わせて明確化しておけば、洗い出したリスクの予防策や発生時対策をこの後で検討しやすくなります。

冒頭のリスクの例をもう一度見てみましょう。

「お客様からの要求が曖昧なため、途中で資材の追加が必要となり予算オーバーとなる(可能性がある)。」

このようにリスクが洗い出されているとすれば、「お客様からの要求が曖昧なため」という背景・原因を踏まえ、要求を明確化する方法を検討することで「資材の追加」という事象を防ぐことがきます。または、「予算オーバー」という影響を受けないために、あらかじめ予算を多く確保しておいたり、発生時対策として予算追加の段取りを考えておいたりすることもできます。

さらに、プロジェクトメンバーを集めてリスクを洗い出す時にも、「今回のプロジェクトの関係者の特徴は?」「メンバーのスキルは?」「利用する技術の特徴は?」など、リスクの背景・原因となり得る要素についての特徴を確認したり、「スケジュールは守れそう?」「コストは?」「品質面では?」「スコープが拡がる恐れは?」などの影響側から意見を求めたりすることによって、リスクを洗い出しやすくなるのです。

とはいっても、洗い出し過ぎると大変に・・・

ここまでリスクの洗い出し方について考えてきましたが、だからといってあまりにも細かいリスクやほとんど起こり得ないようなリスクまで洗い出しては、管理ばかりが大変になってしまい効果が上がりません。
例えば、「文房具が足らなくなるかもしれない」といったプロジェクトの目標達成にほとんど影響しないようなものまでリスクとして取り上げる必要はありません。また、「大地震が発生してプロジェクトルームが利用できなくなる」といった、プロジェクト以外で(例えば会社として)備えるべきものも洗い出す必要ありません(ただし、地震の多い地域で工場を建設するといったプロジェクトであれば、考えておいた方が良いかも知れませんが・・・)。

リスクを洗い出す際には、「プロジェクトとして管理すべきもの」を選別しておくことも効率的にマネジメントを進めるためには必要なのです。

いかがでしたでしょうか。
次回は、洗い出したリスクへの予防策、発生時対策の設定について考えたいと思います。それではお楽しみに!

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Profileプロフィール

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弘中 伸典
1994年、徳山工業高等専門学校情報電子工学科を卒業。 SIベンダーに入社後、数々のシステム開発の現場で活躍。そこで得た多くの経験に感謝しつつも、IT業界における構造的問題に一石を投じるべく株式会社アイ・ティ・イノベーションに参画。問題の原因は、プロジェクトマネジメントの欠如にあると考え、日々のコンサルティング業務を通じてその必要性を訴え続ける。 専門領域は、プロジェクトマネジメントおよびシステム開発プロセスの標準化、PMOの設置と運営、IT投資マネジメントなど。 責任と誠意を持って問題解決に取り組む姿勢を大切にしている。 PMP(Project Management Professional)資格 保有

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