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【第12回】 もっと上手に計画を立てる。


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さて、前回は、育成計画立案の手順を考えて見ました。
ざっとこんな感じでした。

  1. 部下の現在の職務を振り返る
  2. 部下が職種を遂行する上で抱えている問題や課題を振り返る
  3. 到達してもらいたい目標を定める
  4. 目標に到達するために何をやるのか決める

ここまでの内容を、マネージャが一人ひとりの部下に対して考えるのは大変です。ましてや部下の人数が多くなれば大変な時間と労力が必要です。
なんとかしなければなりません。

さて、今までせっかく「人材モデル」や「育成手段」を考えてきたわけですから、ここは是非、部下の一人ひとりが主体的に自分の能力開発を考えるスタイルに変えてみましょう。
つまり前回は「マネージャの視点」で表現されていたものを「個人の視点」で表現してみるわけです。
もちろん、その前提条件として「人材モデル」や「育成手段」は、社員に公開されている必要があります。

さてそれでは、上の手順を個人の視点で表現してみましょう。

  1. 「自分の」現在の職務を振り返る
    個人は、自分が現在どの職種を担当しており、どの職位等級にあるのか理解しています。
    従って「人材モデル」を見れば、自分に求められる職務(役割と責任)を確認することができます。
  2. 「自分が」職種を遂行する上で抱えている問題や課題を振り返る
    求められる職務を自分はどの程度達成しているのか(達成することができるのか)を振り返ります。
    もし、達成していない(できない)とするならば、自分には何が(どんなスキルや行動が)不足しているのかを振り返ります。
    そのためにはまず、自分自身をきちんと評価しなければいけません。
    職務中心に考えるわけですから、毎年設定される業績目標がきちんと達成されているかどうかも、重要な観点です。ただし能力開発は、業績目標として設定されていない職務が関係無いというものでもありませんので、問題や課題は、自分に求められる職務の全体像を振り返る必要があるのです。
  3. 到達「すべき」目標を定める
    自分が今年一年間で到達すべき、能力開発の目標を考えます。
    これは前回も説明しましたが、何をやるかではなく「何ができるようになるのか」、「どのような問題、課題を解決するのか」です。
    目標は、実際に達成したかどうかを測定(確認)できなければなりません。
    「できるようになる」という表現では達成の確認が難しければ、「今年担当する仕事の中で何を実現するのか」を書いても良いのです。
  4. 目標に到達するために何をやるのか決める
    3.の目標を達成するために自分は、いつ、何をやるのか、具体的にします。
    この時に「育成手段」のコンテンツが役に立ちます。
    2.の振り返りで確認された自分の問題、課題を改善するために、どのような育成手段があるのか参考にすることができます。
    以前ご説明した通り「育成手段」が仕事に沿って表現されており、人材像が仕事に沿って表現されているなら、自分が抱えている問題、課題やスキル不足を解消するために役立つ「育成手段」を自分で選択できるわけです。

こうして自分で考えた計画、つまり「能力開発計画」は、上司に提案することができるのです。
さて、では自分の部下に「能力開発計画」を書いてもらいましょう。…とその前に、いきなり部下が思うままに自分の能力開発を考えてしまうと、マネージャとして(組織として)考えている方針と合わない計画ができることもあります。
マネージャとしては、せっかく書いてもらう計画を無駄にはしたくないですから、最初にきちんと方向付けをしなければなりません。
そこで、前回ご説明した「マネージャの視点」で方向付けをするための準備が必要になります。

前回、マネージャは、“部下の実力や課題を把握して的確な指導を行い、組織の職務や目標達成するために人材を育成したい。”立場とも説明しました。
つまり「指導」は最終的には「組織の職務や目標達成するため」行うわけですから、そもそも、組織の職務や目標を達成するために、今の人材に足りないものは何か、人材育成の向かうべき方向はどちらか、を考える必要があるのです。
結構大変です。これは、目標を設定する時になってあわてて考えていては間に合いそうにありません。ということは、普段からこのことを考えておく必要があるようです。

つまり、マネージャは、部下一人ひとりの育成計画を一生懸命考えることからひとまず猶予してもらう変わりに、組織的にどのような人材育成を行うのか、方針や課題をきちんと考えましょう。ということになるわけです。
どうでしょう。
部下に主体性を発揮してもらう代わりに、マネージャとしてもう一つの大事な活動に自分の時間を振り分ける感じです。
もちろん、そのためには「人材モデル」や「育成手段」などのコンテンツの意味や使い方をきちんと部下に理解してもらう必要があるのですが。

それだけの準備が整えば、マネージャは始めに部下に育成の方針や今後一年間に担当してもらう仕事を伝え、その中でどのように能力開発を行うか、部下に提案してもらうのです。
その後、マネージャは部下が提案してきた「能力開発計画」をレビューします。
マネージャは部下が正しく自分の目指すべき人材像を理解しているか、部下が自分の問題、課題を認識しているか、計画が方針と一致しているか、計画が実行可能か、などを確認して問題があれば計画を直してもらうわけです。

この時に大事なのは、部下が組織の求める人材像に向かって自分を高めたいと思う熱意です。
その熱意を持っている人材にとって、「能力開発」とは、自分に与えられた「権利」と考えることができるのです。
つまり、「人材育成」というテーマを、上司から押し付けられる「義務」から、本人に与えられた「権利」に変えるということです。
「人材モデル」も「育成手段」もそのためのコンテンツだったわけです。

ここ、とっても大事です。
「義務」と考えてしまうと、逃れようとする人もいます。やらなくても言い訳さえできれば、あまり気になりません。
ですが「権利」なら、できるだけ行使したいと思えるはずです。さぼって行使しなかった時に起こることは当人の責任です。だって、マネージャがやりなさいと「命令」したのではなく、自分がやらせて欲しいと「提案」したのですから。

いかがでしょう。
「言うは、易し」でしょうか。
確かにそれを実現するのは難しいと思います。
ですが、それら全てを自分の頭の中にしまいこみ、自分の勘と経験(と脳内コンテンツ)に頼って一人ひとりの育成指導を全部やり遂げるのは、もっと難しいことだと思います。
結局やるべきことをやれずに人材育成をサボってしまうことになれば、いずれその結果は自分を苦しめます。
だとしたら、最初から全部は無理でも、一歩ずつ人材育成の仕組みを実現していく他はないですね。

前回もお話したとおり、計画はとても大事です。
ここを失敗すると、その後がどんなに順調でも「きちんと」失敗してしまいますから、少しでも良い計画を立てられる「能力」を組織として身に付けられるように頑張りましょう。

と言うことで、次回は、「計画を実行する」というテーマに進めてみましょう。
それではまた。

(つづく)

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