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【第11回】 人材育成のプロセス。


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さて、連載もついに10回を超えました。

前回は、人材育成の三つの枠組みについてご説明しました。
ここからは、暫く人材育成のプロセスについて考えて見ます。

今までお話してきた「人材モデル」と「育成手段」は、人材育成を考える上で割りと取り付きやすいテーマでしたが、「人材育成プロセス」は、少しピンと来ないテーマかもしれません。
今まで私がアドバイスしてきたIT組織では、人材育成のプロセスをきちんと運用できている事例はほとんどありませんでんした。
新人教育を行った後に先輩が仕事の中で後輩を指導すること以外、特に人材育成のやり方をきちんと決めていないという組織も多く見受けられます。そもそも、“プロセスなんて大げさなものが必要ですか。”とか言われることさえあります。
ですが、せっかく人材モデルや育成手段を用意しても、一年を通じて人材を育成する活動がきちんとマネジメントされていないと、どこまで実行するかは当人次第になってしまいます。
それでは、本当に人材が成長するかどうか、誰も責任が持てないのではないでしょうか。

では、きちんと人材育成をするためには、どのような「プロセス」が必要なのでしょうか。

プロセスの基本

そもそも私たちが一般的にプロセスを整理するときに良く使う概念に、PDCAサイクルというものがあります。皆さんに今さらPDCAサイクルの詳しい解説は不要だと思いますが、要は、「計画的に実行し、実行結果を振り返って、問題点を改善して次の計画を立てる」と言うサイクルですね。
人材育成に限らず、プロセスを改善しようとする時に良く利用する概念です。
せっかく自分の仕事でも使う考え方ですから、自分達の人材育成プロセスに当てはめてみましょう。
何となく“その程度のことはやっているよ。”と思っているマネージャも、少し整理して見ると、以外にやらなければいけないことがすっぽり抜けていることに気がつきます。

計画を考える

ちなみにプロセスを考えるときには、長期的なプロセスと短期的なプロセスの二つを考える必要がありますが、ここでは、毎年繰り返される一年単位の人材育成プロセスを考えて見ます。
さてそれでは、人材育成の計画って何でしょう。
一年を通じてどのような人材育成をするか考えるということでしょうか。
計画は、プロセスの始めの一番大事なところです。計画がだめだと、いくら計画通りに育成を遂行しても結果がだめになるのは目に見えています。ですので、きちんとした計画を立てましょう。
となると、何となく上司(先輩)が一生懸命、今年一年の部下(後輩)の育成方法を考えているところが目に浮かびます。

ちなみに、あなたが指導しなければいけない部下(後輩)は何人いますか。
一人や二人なら頑張ってなんとか、きちんとした計画を立てられるかもしれません。
でも、三人以上になるとどうでしょう。
私が以前アドバイスしたIT組織では、マネージャが指導しなければいけない部下の数は、五人程度はざらでした。
時には、十人以上の部下を指導しなければいけないマネージャの方もいらっしゃいました。 さすがにそうなると全員の計画をきちんと立てるのはちょっと無理があります。
多分、五人程度でもきちんと計画を立てようとすると、かなり大変なことになるのではないでしょうか。
そもそも「きちんとした計画」ってどんな計画でしょう。

実は私も、マネージャとして十人以上の部下を指導しなければいけない時期がありました。しかも、自分の仕事を抱えながら。
正直に告白しますと、その時はきちんと計画的に部下を育成することはできませんでした。
もちろんできる限り指導やアドバイスはしましたし、それなりに部下も成長したとは思います。
ですが今にして思えば、計画的とはとても言えない状態でしたし、反省する点も大変多かったように思います。

さて、ちょっとこれは前途多難な感じになってきました。
どうやら「きちんとした計画をどうやって立てるか」を考える前に、少し物事を整理する必要があるようです。
ちょっと遠回りかもしれませんが、どうせ整理するなら基本に戻って整理しましょう。
ということで、せっかくですから「人材育成に誰がどのように関わっているのか。」から考えて見ましょう。

人材育成に関わる人たち

まずは本人です。育成される側の社員です。
ちょっとこの表現の仕方(育成される)は受身で良くありませんね。もう少し、主体的な言葉で表現しましょう。
「自分の能力開発に取り組む社員」でしょうか。
この社員の視点から見ると人材育成とは、“自分の職務を遂行し、自分に課せられた目標を達成するために、能力開発を行いたい。”立場と言うことになります。
これを「個人の視点」としましょう。
“そんな社員ばかりなら苦労しないよ。”という愚痴が聞こえてきそうですが、そこはちょっと置いておきましょう。

次にその上司です。育成する側のマネージャです。
マネージャは、“部下の実力や課題を把握して的確な指導を行い、組織の職務や目標達成するために人材を育成したい。”立場と言えるでしょうか
これを「マネージャの視点」としましょう。

マネージャとしては、個人の視点に応えるだけではなく、結果的に組織が目標を達成できるようにしなければいけないわけです。
いきなり、ぐっとハードルが上がった感じですね。

最後に会社です。経営層と言っても良いかもしれません。
会社の成長と発展に向けて“適材に優先的に教育投資を行いたい。”立場と言えるでしょうか。
いわゆる「投資の選択と集中」でしょうか。
これを「会社(経営層)の視点」としましょう。
もっと細かく分類することもできますが、話を簡潔にするために、この三つの視点(立場)でプロセスを考えてみると整理しやすいと思います。

さて、人材育成のPDCAをこの三つの視点を軸にして考えて見ます。
それでは、まず計画から。

再び計画を考える

先ほどは、マネージャが一人ひとりの部下の計画をきちんと立てようとするのは大変なことだとお話しました。
実際に、マネージャが部下の育成計画を立てようとすると、どんなことを考えなければいけないのか考えて見ましょう。

  1. 部下の現在の職務を振り返る
    人材モデルのところでも解説しましたが、いきなりどうやって育成するかを考える前に、そもそも求められる職務(役割と責任)を振り返り、それをきちんと部下が達成できるかどうかを確認する必要があります。
    職務を振り返れば、求められるスキルも判断しやすくなります。
    人材モデルが文書化されていれば、部下の職種と職位等級によって、求められる職務が分かります。
  2. 部下が職種を遂行する上で抱えている問題や課題を振り返る
    部下の普段の仕事振りを観察して、役割と責任を達成するために、どんなスキルが足りないか、どのような問題、課題を抱えているか確認します。
  3. 到達してもらいたい目標を定める
    そもそも育成(能力開発)で何をやるかを考える前に、一年間の育成を通じて何ができるようになるのか、どのような問題、課題を解決するのかを考える必要があります。
    これを決めないと、育成活動の実行そのものが目標になってしまいます。
    “研修を受講すればスキルが向上しなくても良い。”わけはありませんよね。
  4. 目標に到達するために何をやるのか決める
    ここでようやく行動(育成活動、能力開発活動)を考えるわけです。
    3.の目標を達成するために、いつ、何をやるのが最も効果的か考えます。
    必要に応じて、研修やOJT、自己啓発を組み合わせます。

ざっとこんな感じです。
ここまで考えると、きちんとした計画が書けるのではないでしょうか。
どこかを省いてしまうと、とたんに根拠が曖昧になってうまく説明ができなくなりそうです。

さて、ここまで読んだマネージャの皆さんが、何を言いたいかは分かります。
“そんなことまでやってられない。”でしょうか。
おっしゃる通りですね。
これは一人分をこなすだけでも大変なことになりそうです。
それを何人分やる必要があるでしょう。

何人もの部下に対して、全部マネージャがやろうとするのは無理があると思いませんか。
ちょっと暗くなってしまいましたか。
これは、何か解決方法を考えなければいけません。

せっかく、人材育成に関わる人たちを振り返ったのですから、全部をマネージャがやるのではなく手分けしてやりたいところです。

と言うことで、次回は、「もっと上手に(効率良く?)計画を立てる」です。
それではまた。

(つづく)

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