某グローバル製造業のIT部門向けセミナーに、招聘され講演を行った。
タイトルは、「研ぎ澄まされたITを今後どのように創造するか」である。
その心は、潜在しているニーズから要求を明確にする段階で、本来、ユーザー系企業が実行しなければならないことを逃げたり避けたりせずに、真剣に考え抜き、鋭く目標を狙えるITを追求することである。IT部門のコストダウンややるべきことを削ることが、役割ではなく、経営に貢献するITをいかに工夫して創造できるかが、本質的なミッションであることを再認識しなければならない。
リセッションは、企業の本来の姿を明確にし、責任と役割を考え直すための絶好の機会と言える。今まで、ごまかしや怪しげな仕事をしていた会社や組織は、暴露されるだろうし、また、簡単にうまくいく話などもあるはずが無い。まともに問題解決の方法や本質的なことを考えることが一番良い。
なぜならば、この時期は、予算やリソースには、限りがあり、本当に企業のために役に立つことは何かを突き詰めなければ組織が生き残れないからである。今まで当たり前に考えていたことにもメスを入れていかなければならない。
ユーザー企業のIT部門の本質的な仕事とは何か?
それを実現するためには、今、何が満たされていて、何が満たされていないかを点検し、本来の仕事に真剣に取り組むことこそが、経営に貢献するITを創ることに繋がる。今こそ、IT組織に必要なことは、超上流(IT構想企画段階)を自力で実行できる力をつけることである。超上流こそが、IT部門のすべての活動の領域と質を決める。この力こそが、経営とITを繋ぐ最も重要な能力である。
私は、以下の点が、超上流変革の重要成功要因であると考えている。私は、この重要成功要因を考える上で「研ぐ」ということばを頻繁に使っている。研ぐとは、単に削ったり、整理したりすることではない。達成目標や達成レベルを当初から変えることなく、磨き、鋭くすることである。そのためには、考えに考え抜いて、議論に議論を重ねなければならない。決められた要求は、理解や納得にとどまらず、関係者に共感が生まれるまで洗練されたものを生み出す。
いずれにせよ、躊躇せずに、少数の最も適任者な人を選び、徹底教育し、実践をさせながらBA力、PM力を鍛え上げ、組織に波及させ文化的変革を進めることが、最初の入り口になると思う。2割の人の変革実現が、成功への分岐点となるだろう。
超上流が、うまく回りだしたら、さらに組織力を加速させよう。次の段階は、超上流のアジャイル化であり、自動化によるスピードアップとトレーサビリティ確保だと思う。様々なプロジェクト情報の整合性を取り、動的な要求の管理を実現することにより、事業戦略に俊敏に反応でききるIT組織が実現する。目標となるIT組織のイメージをこの時期に描くことも重要である。良いイメージを組織の中で共有することにより変革を一歩一歩進めようではありませんか?
問題への対処ばかりを仕事としないで、新たな世界を創るために活動することも忘れてはならない。
私は、お客様やパートナーと共に新たな目標に向かって努力したいと考えている。