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久しぶりの米国出張で得たもの-米国は、まだまだ、新しい分野で動いている


3年ぶりに米国へ出張している。今回の訪米の目的は、ボストンで開催されている。「Project Summit and Business Analysis World」(PMI/IIBA主催)に出席するためである。ボストンへは、数年前に、品質、テスト支援関連のツールベンダーを訪問して以来である。ここ2年余りの不況下で、米国の企業が、どのような状況で何を考えているか肌で感じるには、良い機会である。私は、会社を設立以来、継続的にPM分野の仕事を進めてきたが、昨年からプロジェクトの価値と直結するIT構想企画段階やビジネスアナリスト関連の実力強化が企業の必須課題であることを確信し、企業がこの分野の質の強化にどのように取り組むべきかについて最も関心を持っている。 世の中の大きな変化が起こったとき、米国の有識者は、新たなアイデアを常に創出してきた。今回は、どうだろう。

 会議に出席して感じたことを報告しよう。

 200名あまりの参加者がボストン近郊から集まってきている。PM、BA(ビジネスアナリスト)の専門職の人が、会議の中心になっている。まず、気がついたことは、女性の参加者が、50%程度いることだ。米国では、BAやPMは、職業として、認知されている。特に、10年以上経験を積んだ男性女性を問わず職業意識、自分の職種に対する問題意識を持った人が参加者の多数を占める。いわゆる、まじめな参加者が多く見受けられる。日本で同様の会議を開催したら上級管理者、ベンダーの参加者が多くなるだろうし、既に認知された職業人が参加するよりはむしろ、勉強のための知識、知見を得ることが目的になるだろう。日本ではユーザーは、比較すると受身で、ベンダーが、ユーザーへの提案に生かすために参加することが多いだろう。会議の内容も多くのセッションが同時開催されているが、参加型で問題解決に繋がるセッションが多くある。問題は、参加者に聞く能力があるかどうかである。

今、米国では、PM+BAと言うコンセプトで開催するコンファレンスが、毎月のように各地にあるハブ都市で開催されている。PMについては、基本からPMO運営やシックスシグマや他の概念との融合など以前より高度化した話題が中心になっている。BAに関して言えば、日本同様、不況の景況でユーザー系企業が、予算を使えなくなっているために、自前で、まじめにBAに取り組む方法を模索している状況にある。

米国にあけるBAのトレンドをまとめるとしたら以下のようになる。

  1. 基本中の基本であるコミュニケーションなどの基本スキル重視 
    プロジェクトを成功させるためには、人と人とのコミュニケーションを改善することが大切で、「一味違う、ビジネスマンのコミュニケーション術」と言ったテーマで演習を含む基本を見直せるような講演を用意している。もともと米国では、リーダシップやコミュニケーション、ファシリテーションなどの教育は、盛んであるが、私は、基本に戻ろうと言う傾向を感じた。この手のセッションも意外と多い。日本では少なすぎると私は、考えている。
  2. アジャイルBA
    楽しめる躍動感のあるチームを創り、プロセスよりもコミュニケーションと顧客思考を重視し効率的に分析を進める方法を普及させる。アジャイルやRAD(ラピッド・アプリケーション・デベロップメント)などのITのマネジメント手法は、90年代から様々提案されているが、アジャイルBAは、そもそも、的を得た必要不可欠なビジネスの仕組みを短期に構築することを目指すものだ。アジャイルBAの考え方を日本流にアレンジして普及することは、IT組織の改革に繋がるものと私は、以前から考えていた。いままで、不要なITを含む仕組みを作りすぎていたことに気付いた結果である。作り方の問題では無く入り口の問題である。アジャイルBAの考えには、賛同できる工夫、努力、経験が、込められている。現在取り組みつつあるBABOK(Business Analysis Body of Knowledge:カナダに本部がある国際的な団体(IIBA)が普及を目指すビジネス分析の知識体系)の考えをさらに進めてラピッドな分析実現を目標にしたい。
  3. 要求分析を支援するツール
    会場では、分析支援ツールの展示がされていた。また、どのような状況でどのような手法を選択し、どのツールを適用したらよいか、手法・ツール選択を実践するセッションにも多くの参加者の関心が集まっていた。アジャイルBAについては、私が、90年代から取り組んでいるライフワークに近い課題でありこれだけでもボストンに行った価値があった。今後、BAに関する様々な取り組みを皆さんに伝えて行きたいと考えている。

まずは、12月9日に開催するITIフォーラム2009in東京にご参加ください。最新情報を含めBAに関する最新の情報をお伝えできると思う。

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林衛
IT戦略とプロジェクトマネジメントを中核にITビジネスのコンサルティングを行うアイ・ティ・イノベーションのファウンダーであり社長を務める。◆コンサルの実践を積みながら英米のIT企業とかかわる中で先端的な方法論と技術を学び、コンサルティング力に磨きをかけてきた。技術にも人間にも精通するPM界のグランドマスター的存在。◆Modusアカデミー講師。ドラッカー学会会員、名古屋工業大学・東京工業大学などの大学の講師を勤める。

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