私の手元に「アインシュタインの150の言葉」ディスカバー21編集部という本がある。その中に、現代社会の問題課題を解く鍵となるメッセージが、数多く記されている。言うまでも無くアインシュタインは、科学者として有名であるが、人間の行動・生き方についても鋭い洞察力を持って本質を捕らえ、分かりやすく見事な説明している。
私は、コンサルタントという職業であるがゆえに、今までに多くの組織や人を、問題意識を持って見てきた。私が、最も情けなく感じるのは、自分の力で考えること(思考すること)を避ける人に遭遇した時である。
自分の力で考えることを出来るだけ避けて、何をやれば良いかを少ない労力で得ようとする人である。何のために生きているのか何のために会社に来ているのかその人の人生観や考え方を疑ってしまう。そう人は、楽することばかり考えて本当の価値を失っていることに気付いていないようだ。上司に命令されてたまたま身に付けた技術やノウハウだけが頼りで仕事をしているので、成果は、限定的で課題がその人の経験を超えた瞬間、手も足も出なくなってしまう。自分で考えて何かを生み出すことは無い。何を与えても長期的な成果を出せる人はいない。そのような人には、本当のことを教えていかなければならない。アインシュタインは、150の言葉の中で考えること(思考すること)について次のように述べている。
「思考とは、それ自体が目的である。音楽もそうです。」
人が、人であるということの最大の特徴は、思考できる能力を備えていることであり、思考すること自体が、目的であると言い切っている。社会が複雑多様化し組織や人が、いろいろな課題に遭遇する。課題を解決するために、人は「思考」する。現実の課題は、すべて解決できるとは限らない。当たり前の話だ。
解決できないからと言って思考することを避けるべきだろうか。
答えは、NOである。
様々な挑戦をするために精一杯考えるべき(思考すべき)である。すぐ解決できるかどうかは、問題ではない。最悪解決できないとしても思考すること自体が人間であることの本質なのだから無駄にはならない。そのときの一見の無駄は、やがて、その後の肥やしになる。なぜならば、「思考」とは、それ自体が目的であるからだ。経験がにじみ出てくる言葉であり、考え方、生きたかの本質を突いている。
また、アインシュタインは、こんなことも言っている。
「専門的な知識を習得することではなく、自分の頭で考えたり判断したりする一般的な能力を発達させることが、いつでも第一に優先されるべきです。」
彼は、将来にわたって人の問題を見抜いていたようだ。
組織の中に、自分の力で思考する人達を取り戻さなければならない。むやみに、必要そうな専門知識を得ることはさほど効果的ではない。知識を知恵に変換できる「思考」できる組織にするための努力をすべきである。思考できる組織こそが、問題解決の出来る組織である。そのような組織は、自立した「思考自体が、目的であることが分かっている人」を必要としている。組織の管理者、指導者であるならば、考える組織への変革をあの手この手で実現する責任がある。諦めずに行動することだ。
組織の戦略や目的が明確であるならば、社員の思考を助ける道具として、継続的に仕事を成功に導く方法論や経験をまとめた事例が必要だ。方法論などの環境を整えるとともに管理者、指導者は、人の意識改革を行うことが、最も大切で取り組むべき責務である。
本質論で改革に取り組もう
P.S.
私が、社業の発展とともに取り組んできたPMBOKや新たに取り組んでいるBABOKは、思考の道具として有効な方法論である。これらの方法論は、思考の道具を使って考える組織を創ることが目的だ。思考することが、楽しくなるようにするのが良い。