PMと言うキーワードはまだまだ一般的・身近なものとは言えません。雑誌やTVで「小悪魔系PMテクニックで彼のハートをワシ掴み!」みたいな特集をバンバンやってくれれば嬉しい(?)のですが、今のところプロジェクトマネジメントについて調べたい、勉強したい、仕事に役立てたいと思っても、「何を見れば良いのか?」と、困ってしまいますよね。「インターネットで検索すれば簡単じゃん!」と思っても、出てくる情報は玉石混交、多くの宣伝や誤り・偏りを含んだ情報が混ざったインターネットの世界から本当に役立つ情報を探すのもなかなか大変です。
今回は、これからプロジェクトマネジメントを学ばれる方のために役立つ便利な道具と、その使い方について紹介したいと思っています。ここで言う「道具」とは、何も「スケジュール表を作成するソフトウェア」のようなツールの事だけを指してはいません。知識を得るための書籍や、情報やコミュニケーションの場を提供している団体、教育セミナーを提供している企業など、PM力をアップするために知っておくと役立つものすべてを「道具」として、その活用法を考えてみましょう。
書籍
ここ数年でプロジェクトマネジメントに関する本も相当に充実してきました。しかし、逆に言えば、「どれを読めば良いのか」迷うことにもなります。
これから勉強される方がいきなり特定の領域を専門的に掘り下げたような本を読んでも効果は疑わしいでしょうから、最初は「すぐ分かる!」「簡単!」と言った感じの薄めの入門書で全体像を掴むべきです。ここで注意しなければならないのは、その本が特定の業界(例えば、IT業界や建設業界など)向けに書かれた本か、どの業界にも共通する一般論としてかかれたものかを判別した上で選ぶことです。間違っても自分に関係ない業界向けに書かれた本を入門書として選んでしまわないように・・・。また、書籍の中にはプロジェクトマネジメントに活用できる雛形がCD-ROMなどで付属しているものもあり、これからPM力を仕事に活かしたい方には実践面でも役立つでしょう。
例えば、PMの入門的な書籍としては以下のような感じの本が良いのではないでしょうか。
・ トコトンやさしいプロジェクトマネジメントの本/日本プロジェクトマネジメントフォーラム(編集)
・ PMプロジェクト・マネジメント/中嶋 秀隆(著)
・ プロジェクトマネジメント現場マニュアル/能登原 伸二(著)
ちなみに3番目の著者である能登原は私の上司であり、非常にゴマスリ感溢れるものがありますが、それを抜きにして真剣にオススメなので敢えて挙げさせていただきました。
尚、どんなに簡単であっても教科書チックな本を読むのはとにかく嫌いだ!と言う方には、小説風の物語形式でプロジェクトマネジメントについて教えてくれる本もあります。以下に挙げているのはいずれもIT業界のストーリーではありますが、読み物としても面白く一気に読めるはずです。
・ デッドライン-ソフト開発を成功に導く101の法則/トム デマルコ(著)
・ 実用企業小説 プロジェクト・マネジメント/近藤 哲生(著)
ツール
世の中には、プロジェクトマネジメントを助けてくれるソフトウェアがたくさんあります。例えば、冒頭にも挙げたスケジュールを作成するソフト、必要なコストを見積もるためのソフト、プロジェクトで発生する問題を管理するソフト、それらを含む多くの機能を持った統合的なプロジェクトマネジメントソフト・・・。
しかし、そのようなソフトウェアに必要以上に頼るべきではありません。そもそも「プロジェクト」と言っても千差万別であり、プロジェクト型の仕事に習熟していないチームでそのような専門的なソフトウェアを使いこなすことはなかなか難しいものです。通常のプロジェクトであれば、大抵の場合、どのPCにも入っているような表計算ソフトなどを活用すれば十分に事足りるケースが多いものです。
ただし、ある程度以上の人数が関わるプロジェクトにおいては、情報共有やコミュニケーションのためのツールの導入は積極的に考えるべきです。メールだけで何とかなる場合もありますが、電子ファイルの共有方法だとか、メンバーが分散している場合には会議システムなども検討しましょう。表計算ソフトで一生懸命作ったスケジュール表であっても、他のメンバーと理解を共有できなければ全く役に立たないのですから・・・。
団体・組織
プロジェクトマネジメントの世界を知るにつれ、あなたは「他の人はどうやってマネジメントしてるんだろう?」、「世の中の動向は?」といった情報を知りたくなるかもしれません。プロジェクトマネジメントに関する団体・組織の主催するカンファレンスや情報交換会に顔を出してみる、または思い切って活動に参加してみるのも良い刺激になるはずです。
・ PMI日本支部 (http://www.pmi-japan.org)
・ 日本プロジェクトマネジメント協会 (http://www.pmaj.or.jp)
・ プロジェクトマネジメント学会 (http://www.spm-japan.jp)
主だった団体・組織を3つ挙げてみましたが、上記のPMIという組織については特筆しておくべきでしょう。PMI(Project Management Institute)は世界的に活動を行っている団体(上に挙げているのは日本支部)であり、特に注目すべきはPMBOK(A Guide to the Project Management Body of Knowledgeの略、ちょっと苦しいですが「ピンボック」と読みます)と言う、プロジェクトマネジメントの知識体系を体系的にまとめた書籍を出していることです。ネット書店などでも簡単に手に入るのですが、多くのPM達は常にこれを手元に携えているとさえ言われる、事実上の標準に近い本となっているのです。内容はちょっぴり難しいのですが、「あれ、PMとして他にもやるべき事がなかったっけ?」などと不安になった時に非常に役立つ一冊です。
企業
困ったときには外部の企業の力を借りることも必要です。世の中にはプロジェクトマネジメントをサポートしてくれる企業があり、その業態は大きく以下の3つのパターンに分かれます。
・ PMに活用できるツールを提供している
・ PM教育や人材育成サービスを提供している
・ PMに関するコンサルティングを行っている
多くの企業は上記の複数の組み合わせでサービスを提供しており、様々なニーズに対して相談に乗って貰えるはずです。必要であれば、あなたのプロジェクトに強力な助っ人を呼ぶことも出来るでしょう。
しかし、如何に外部の力を借りたとしても、プロジェクトマネジャーとしての責任自体までも外に丸投げする事は出来ません。プロジェクト全員の力が試される世界であり、外部の力をうまく活用できるかどうかにもあなたのPM力が試されることになると言えるでしょう。
インターネット
実は「ここに行けばPMのすべてが分かる!」と言った、まとまった情報を掘り下げて提供しているサイトは多くありません。逆に言えば、それだけプロジェクトマネジメントの世界は奥深く、とてもネットのような気軽な媒体では伝えきれない部分がたくさんある、とも言えます。
プロジェクトマネジメントに関して今のところネットで一番役立つのは、自身がPM力を高めるために役立ちそうな情報は何か?と言う「キッカケ」の情報を手に入れることかも知れません。
おっと、本稿を寄せている「ザ・プロジェクトマネジャーズ」は、そこから一歩踏み出した情報を発信している数少ない情報源だと言えるでしょう。今後とも本連載、是非よろしくお願いします。
それでは、また次回!!