IT部門で仕事をする以上、部門長ばかりでなく所属している人が、所属部門の社内での地位を向上させたいと願うのは、ごく自然なことである。
それでは、具体的にどのような施策があるのか考えてみたい。
部門が組織の中で存在感を出すことは、部門内の問題解決だけでは実現できない。顧客であるユーザー部門、さらには、ITサービスが会社の顧客や調達先まで直接及んでいる場合は、顧客や調達先が提供しているサービス(人的なサービスまで含む)をどのように評価しているかが重要である。いわゆるIT部門の自己評価ではなく関係部門の評価や認識、認知が鍵を握ることになる。
まず、第一に、IT部門の方針がわかりやすく明確な戦略として関係部門に認識されているかどうかである。さらには、関係部門に積極的に情報収集を行い常に営業マーケティング活動を行わなければならない。他部門との接点の数が多くなければならない。
部門の行動指針と運営哲学が明確であるか否かが、もうひとつの成功要因となると思う。全社の哲学をIT部門なりに解釈し、行動規範とすることこそが、戦略の実現に関係していると考えられる。
第二に重要なことは、部門を構成している人材が、明るく元気で、会社組織と社外の関係者(顧客、調達先を含めたステークホルダー)に関心を持っていて、相手に必要だと認知されているかどうかである。IT部門の人材は、しばしば、ITの専門性は持っているが、組織や会社そのものには関心を持っていないように見えることがある。そのようなことでは、単にある機能レベルの役割を果たすだけの部門ということになる。常に、会社の状況を動的に捉え、専門性とビジネス思考で会社の戦略や改革、提案に関わっていると他部門に認識されている必要がある。
第三に重要なことは、部門の活動プロセスが明確で、わかりやすくなっていることである。活動がブラックボックスであったり、アウトプットがITの専門性の無い人にはわからないようだと大問題である。誰にでもわかるように達成目標を明確にして、計画を最初から公表し、有言実行型のプロセスが、実行されなければならない。業績への貢献目標が明確になっていて、プロジェクトのリスクの度合いも同時に利害関係者に明らかになっていれば、プロジェクトがたとえうまく進行しない場合があっても関係者は状況を認識できるし苦労していることも理解できるだろう。
これまでに挙げた三つの重点を満足させるために、まずもって必要なことは、人材の能力を向上させることであり、すべての出発点になる。改善や改革を推進できる人材、コミュニケーション能力が高い人材、計画や企画能力が高い人材が、適切に配置されておりリスクをテイクし最後まで物事をやり遂げられる組織が、当然のように社内での認知度は高く、いわゆる「あてになる」組織ということになる。
最後に、社内外に対するアンテナ機能を他部門より強化しなければならない。顧客のネットワークや調達マネジメントの対象になる国内外にある組織から生の声を敏感に感知する必要がある。アンテナは、たとえていえば、ジャングルに住むトラやヒョウのような状況察知力である。このアンテナにより適切な判断力が働き、信じられないような迅速さで行動を起こすことができる。
アンテナは、言い換えれば、組織の自覚力、俊敏性につながっている。独りよがりで、正しく顧客の言うことを理解できず、自覚の無い組織はかなり多く見受けられる。
また、自覚はある程度あっても俊敏性の無い組織も困ったものだ。頭は良くても体が重くて動けないのだ。
そろそろ、結論に入ろう。成功要因7か条として以下にまとめた。
“IT部門成功の成功要因7か条”
そうすれば、どの部門からも期待される部門になり、地位向上は間違いないだろう。
このようにして価値を実現した組織は、社外の顧客からの評判も良く、市場でその力が、認知されているはずだ。