私は、今、1990年代に書かれた2冊のビジネス書を読み直している。
1.経営の未来(Cybercorp)ジェームスマーチン著
2.明日を支配するもの(Management Challengers for the 21st Century) P.F.ドラッカー
である。
「経営の未来」(TBSブリタニカ)において、ジェームスマーチンは、技術と企業のあり方を中心に語り、「明日を支配するもの」(ダイヤモンド社)で、ドラッカーは、今後必要とされる人と組織について語っている。
両方を読み合わせることで、今後のこれからの2000年代をどのような形で生きてゆけばよいかが判断できる。
私は、94年から98年までの4年半の間、ジェームスマーチン社のコンサルタントとして仕事をしており、インフォメーションエンジニアリングを中心とした様々な方法論、手法、ツールに関わった。その時期に、ジェームスマーチンが、未来の企業を予測した「経営の未来」(1997年)を出版したのだ。私には、相当なインパクトがあったが、多くの人には、理解されなかったようだ。要は、早すぎたのだ。
このような環境にあっても、私の90年代の仕事は、大変エキサイティングなものだった。なぜなら、IT技術が、80年代に比べて著しく発展し、非常に複雑なデータベース中心のシステムを構築することが可能になったこと。また、インターネットが、本格的に利用できるようになり安価にネットワークで連携した組織や企業間の連携が可能になったからである。技術基盤が確立したことで、複雑で多様なシステムに対応するための統合化された方法論が脚光を浴びると想定したのである。現在 ITinnovation社が、提供しているようなコンサルティングやサービスが、どんどん必要とされると信じていたのである。想定は、半分は当たったが、半分は、外れてしまった。主な理由は、技術基盤の変革に伴って人の変化を同時に実現できなければ、成功はおぼつかないということだ。変革を強いられた組織や組織を構成する人は、徐々に変化すると予想したのであるが、現実は、あまかった。
ホスト(メインフレーム)中心のシステムからオープン系のアーキテクチャに変化しただけで、多くの人々がついていけなくなった。また、同時に、組織の中での働き方、生き方に関しての文化もかなり変化したのだ。このようなことからITの変化による社会の変化は、私の予想よりも減速して進展している。2000年代の初頭でもなかなか劇的な変化は、起こっていない。人の変化のスピードが、思ったより遅いことが、ひとつの要因だと私は、考えている。
私は、たびたび、IT組織の人の変革について本ブログでも語っているが、いよいよ、昨年あたりから普通の大手企業が、人の面の変革を認識し動き出してきている。つまり、本当にがけっぷちだと認識したようだ。
そして今再び、私の大好きなドラッカーを読み直している。1954年に書かれた有名な「現代の経営」は、これからの知的労働者の生き方に通用するものであるし、ここに紹介している「明日を支配するもの」1999年は、見事に情報化社会の中での企業の生き方を示唆している。
これからの企業に必要とされることは、私は、以下の3つであると考えている。
とくに企業は、人間力を鍛えることに、より傾注すべきである。変化を生み出さなければならない時代には、人の変革がもっとも重要な成功要因になる。変化を生み出す人材の育成こそが必須である。
この結論は、「経営の未来」「明日を支配するもの」の二冊の影響と幸運にも80年代から2000年にかけてジェームスマーチン社を代表とする海外の企業との仕事にかかわれたことによるものだ。この間に関わった多くの企業と多くの人に本当に感謝している。