私は、数年前からITプロジェクトと医療は、似ていると考えている。
組織内でプロジェクトを発足するとき、医療の分野だと学会や研究会などで「何が、この問題を処理・処置するためには、正しい方法であるか」を議論する。
これらの議論も必要なことはわかるが、何のために実行するかを理解しなければならない。元々、人は、方法や手段・技術をどうするかに関心をもつが、問題は、まったく違うところにある。
プロジェクトでも医療でも大切なことは、実際目の前で起こっている問題に対して、「問題を正しく定義し、それに対してどんな成果を出したか、なにが成果として得られたか」が、最も重要だということである。
残念ながら「実現できる成果」に着眼点が無く、手段やツールにこだわって何も着手しなかったり、着手しても理想を追いすぎるあまり困難な方法を選択する例が数多く存在する。経験していないことへの挑戦は、できるだけ避けようとする。このような事態に陥る場合は、当事者がプロジェクトとは何かを、まったく分かっていないということになる。当事者意識も低く、プロジェクトと成果の関係も理解できないで成功するはずが無い。
プロジェクトには、目標があり、一定の期間とコストの範囲内で成果を出すことが目的である。いろいろな制約の中で「成果を出す」この一点に集中する必要がある。
外科医が、命にかかわる患者の前で、じっくりと正しい方法論の検討をするだろうか。想像してみると良い。人命優先であらゆる手段を講ずるに違いない。
医療の場合は、かなりわかりやすい。目の前に瀕死の患者がいる。外科医にとって重要なことは、患者に対して治療の成果をどれだけ生み出せるかが問題であり、それまでのノウハウを駆使して、治療効果があがるよう最大限の努力をする。評価は、方法論ではなく、結果がどうであったかのみである。たとえ、情報が乏しい場合であっても、患者を救うためには、リスクテイクしなければならない場面もあるだろう。
理論と経験の豊かな外科医が、患者のために、成果志向で最大限の努力をする。
プロジェクト活動も理論と経験に豊かなリーダーが、成果創造に迷い無く誠心誠意努力し集中する。これこそがプロジェクト志向である。
(追伸)
私は、火消しも過去に良くお手伝いしたが、医療に似ている! 外科医の気持ちが分かるような気がする。