トップが、現場と乖離していると言う言葉は、以前から世の中の課題になっている。
所謂、「現場と経営のギャップ」の存在である。
IT部門、情報子会社、SIベンダーなど、どのIT組織でも人事ローテーションが実施される。組織の活性化と人材のキャリア形成のためには、重要なアクションである。人事配置により、組織は成功も失敗もするだろう。
トップ層の現場の仕事に対する認識と経験が、企業を成功させることは間違いのないことだと考えるが、IT組織における現実の人事配置では、IT経験の薄い管理者がCIOとして部門長になることがよくある。経験が少ないにもかかわらず立派に部門長の役割をこなしている方も多く存在する。
ITの現場経験も非常に重要であるが、下手に経験するとしばしば、その人の考えを狭くしたり、間違った思い込みに陥る人も多くいる。
結局ITとは、それぞれの個人の中に「自分の理解したIT」が存在する。
ITの世界で力をつけるには、一般的な勉強をいくらやっても現場力を引き上げることにはつながらない。何故ならば、われわれが利用するITの世界には、発明や発見の要素は少なく、経験と継続的な改善により高い成果を得られるような構造をしている。そもそもITの素人は、ITを体系的な理論と数学、科学の世界に近いと考えがちである。
現実は、まったく違う。道徳、哲学、国語と音楽などが重要だ。時には、体力(体育)で、根性で乗り切らなければならない。勉強で身につけられる理論、方法は、せいぜい20%ぐらいだろう。むしろ、強い目的意識を持ちその中で、諦めずに創造し、追及する心が大切だ。そもそも、このことを取り違えているマネジメント層も多い。机上でいくら本を読んでも何もできるようにならないことに早く気付かなければならない。現場に、足を運び、自分でやってみて初めて難しさや本当のことが理解できるようになる。現場が重要なのは、自明である。
成功しているCIOには、共通する点が、3点ある。
このようなことができているCIOは、やはり現場を自分の目で見て、確かめることができる人だ。また、全部ではなくても自分の手で現場の仕事にチャレンジする。
計画や企画、プロジェクトのマネジメントに関わる勇気がある。問題の本質をメンバーと一緒に追求して、意思決定する。現場の人から十分な情報収集した後、硬直化した部門の人を大胆にローテーションする。人を見抜き、元気付け、キャリアを考え、育てる。トップ自ら勇気を持って仕事に当たっているので、部下も経験のない仕事にチャレンジするようになる。IT知識の蛸壺にはまったり、仕事に固執してしまった人たちを解き放ち、新たな仕事に向かわせ改革を我慢強く実行する。瞬発力よりも我慢強さの方が、必要である。
いま、世の中に求められる経営者、マネジメント層は、「やわらか頭」で、「粘り強く」「人と組織に関心」を持った人だと思う。
トップ自ら勇気を持って、自分自身の現場力を高めてこそ新たな価値が創造できると言うものだ。
最後。