我が社が、毎年実施しているITIフォーラム2006を無事終えることができてほっとしている。
私は、今回は、対談に挑戦した。数多くあるピーター・ドラッカーの本の殆どを翻訳している上田惇生先生との対談である。私は、上田先生の翻訳した本は、何冊か読んでいたが、上田先生にはお会いしたことは、いままで無かった。縁あって先生が、弊社のイベントでの対談をお引き受けいただいた事に大変感謝している。実際に2ヶ月ほど前にお会いすると先生の何に対しても前向きで、さまざまな事に興味を持つお人柄が、一度で好きになってしまった。まるで日本のドラッカーと話をしているような気分になる。
対談の前に昼食を共にして雑談する中で、先生が私の「達人のつぶやき」を読んでおられた事に驚いた。先生の認識によると私の視点には、ドラッカー的な考えが織り込まれているという。ITの世界で起こっていることは、理論で解決できるわけではなく、社会科学的な見方が必要になる。なぜならば、人が、集団になると論理ではなく生態学的な考察や意識やメンタルなど様々な要素が絡み合って予測ができないことが起こる。経営や医療などの分野では、物理や数学を駆使しても答えは出ない。また、情報が、社会に与える影響は絶大で、世界全体を変化させる力がある。情報過多で多様化、複雑化した世界では、画一的な知識を持っている人より、選択する勇気や創造力・企画力が重要になる。また、どの様に実行するかを考える前に何が問題であるかを定義することの方が大切だ。
また、情緒やメンタルな面の重要性も見直される。なぜならば、知っていることだけでうまく行くことが、殆ど無くなり、決断に勇気が必要になり、良い結果を得るためには、知的、肉体的な両面の持久力が必要とされるからである。所謂、「できる人」も昔と今後では大きく変わるだろう。また、上田先生曰く、ドラッカーは、読み手の数だけドラッカーが居るそうである。ドラッカーは、どんな読み手にでもその人だけに語りかけているように感じる。私もそのように感じたが、上田先生にも語りかけているそうだ。食事をしながらすでに対談の前哨戦が始まってしまった。(これは裏話)
本番の対談で最も印象に残ったことは、昨今のIT業界の悩みが多い中で、「情報社会は、まだ始まったばかりでまだ入り口にある」という認識だ。ドラッカーは、かなりの長期的な視野で社会の動向と本質を見通している。社会的な価値観の変遷、環境変化、社会を構成する知識労働者の変化、特に情報がグローバル世界や実業に及ぼす影響を予見していたと思う。冷静な目で外から洞察力を持って見通したドラッカーは、素晴らしい。このような人が、存在していたこと自体が、奇跡だ。
一方我々のビジネスをしている舞台である現状のIT組織では、すでに様々な課題はあるし、やるべきことも山ほどある。しかし「情報社会は、まだ入り口にありこれからの変化や発展のほうが遥かに長い」とすれば、夢があり、将来を明るく考えられる。夢がある。先がある。もっと素晴らしい世界を創造できると考えられるなら我々は、幸せである。
まだ、序の口になるIT業界、明るく楽しい業界を一緒に目指しましょう。
皆さん、もう一度ドラッカーを読み直しませんか?