日本の伝統文化で、西洋には無い概念に「わび・さび」がある。
「わび」とは、漢字では「侘び」と書き、本来の意味は、粗末な様子、または、簡素な様子を意味しているといわれている。
語源を辿れば、本来の立派な状態から劣った状態、貧しい状態を示しているそうだ。一般的に「わびしい」といえば、ネガティブな意味を示しているが、万葉の時代から江戸時代までかかって「美しい」という概念の一部に取り込まれていったようだ。
一方「さび」は、寂びであり、人がいなくなって静かになった状態をあらわす。若者がよく使っている「さぶ~~」も同様の意味であることは、面白い。この言葉も本来は、良い概念ではなかったが、古いものの内面からにじみ出てくるような、見た目とは違う美しさを意味する。
世の中は様々に発展し、表層の美しさや躍動感を好む人が多いが、一方で「本来の質素な姿」「古く残されたものが内側に持っている本質的なもの」の美しさも素晴らしいではないか。
ネガティブなものの中に「美しさ」を見出す。実に高度で贅沢な文化だと思う。相当な時間をかけて物事に拘った結果でないと、このような概念に到達できないだろう。
基本的には、美しいと感じることは、個人の感性であって、みんなで決めるものではない。美しいと感じられる心を持ち続けることこそ人間が失ってはならないと強く思う。
もし皆さんが、都会の複雑で、忙しい環境に身を置いているのなら対極の質素で自然の環境へ行ってみるのも良い。いわゆる立派で新しい物を本気で求めるならば、「わび・さび」の勉強をするのが良い。わび・さびを理解することにより自分が、本当に求めているものが見つかるはずだ。
同様のものを必死で比較し、最善の選択をしようとしている人は多い。
対象は、携帯電話、家電製品、車などの物に限らない。家でも企業に必要なシステムでも同様の選択が、ほぼ反応的に起こる。
日本の人々は、本来優れた美意識を持っていると私は、考えている。なのに起こっている現象は変だ。自分の感性を信じられないので何が欲しいのか何が正しいのかが、分からなくなっている。
日本の伝統をもう一度見直し応用しよう。答えは、案外足元にあるかもしれない。
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