アーキテクトに、求められる能力に抽象化能力、具象化能力がある。
抽象化は、物事の本質を見抜き、言葉や図で簡潔に示すことである。
抽象化能力は、一言で言えば本質を見抜く力である。対象を丹念に時間をかけて調査し、本質が見わけられる訳ではない。むしろ、抽象化の達人は、一瞬のうちに、直感と経験で本質を見破るだろう。 さらに、見破った内容を誰が見ても理解できるように簡潔で的を得た表現をする。
本質を直感する力と表現力の2点で構成される。さらに加えるなら説明する力だろう。せっかく表現できても相手に正確に伝えられなければ何にもならない。
具象化能力とは、抽象的なものを具体的に実現可能な形に構成する力である。
具象化は、例えば「なになに~」、これは、「~~のようなもの」という部分からはじまり、本質を外さず、完全に対象が、機能する段階まで実現または、実現を指導することである。実現可能性評価を行ってはじめて全体の基本構造と詳細化の方針が決まるので、この具象化に責任を持つということは、直観力や頭の良さを持っていても複数回の具現化(実際に自分で実現した)の経験や理論の理解がないと成り立たない。
私は、「抽象化、具象化能力を養うためには、ITとは離れて芸術(音楽、絵、書、陶芸など)に興味を持つと良いよ!」とITエンジニアやプロマネの方にことあるごとに言っている。
IT関係で仕事をしている人の多くは、少々ワーカホリック気味でITのことばかり考えている。仕事ばかりしているとマンネリ化してくるし、単一思考の人間になってしまう恐れがあると心配している。設計やプログラミングなど多少経験が支配する部分の能力は身についても「美しい設計」は、できなくなってしまうだろう。「美しい設計」を実現する責任を、アーキテクトは持っているはずである。
一見、ITとは関係の無い違う分野に見える芸術は、「抽象化と具象化」の実験の場でもある。さらには、美しい、好き嫌いの情の世界と強く関連している。どんなものでも所詮人間が、判断するものなので、最終的に良いか悪いかは、「情」が、決めることだと私は、思う。
自由に発想することの素晴らしさ、伝統の素晴らしさ、美しいものに触れられる素晴らしさを実感することで、アーキテクトの能力は飛躍できると、私は考えている。
マネジャ、ITエンジニアの皆さん、芸術を大切にしましょう!!