数年来停滞していたIT組織が、人材の育成に本気で取り組み始めている。
ライブドアの問題はあるものの、これらの現象は特別な出来事という評価で、全体としては、好況感が日本に定着しつつある。
再び日本の企業の強さが蘇ることは確実だ。先進的な企業は、短期的な視野ではなくて根本的に人事の仕組みや育成に取り組めるようになってきた。
お客様を訪問して、強く感じることは「本気」であること。「根本」の課題に数年の時間単位で変革への検討が開始されている。
私は、会社設立以来、IT組織の問題と育成について深く考えいろいろな活動に取り組んできた。
これまで、各企業がコストや足元のビジネスを優先させ「人」を置き去りにしてきたことを悩ましく、残念に感じてきた。
だからこそ、昨年末からのIT組織の育成や変革へのアプローチは、大変好ましい。
私は、人材育成で重要なのは、以下のことだと考えている。チェックしてみると良い。
- 組織の中での役割と権限、責任がはっきりしているか?
役割、責任、権限をはっきりさせる前に必要な人材像を描いてみることが大切だ。
必要な人材像が、まちまちな状況では、育成そのものが機能するはずが無い。必要な人材像を幹部で描くことから人事の改革は、始まる。文書化された人材像から職務モデルやキャリアパスが決まってくる。
育成の根本は、「必要な人材像の文書化」が、出発点になる。自社で必要な人材像は、幹部が手を動かして議論し、明確にし、合意しなければならない。
- 組織の戦略と中期計画は、はっきりしているか?
組織の中で役割と責任を明確にする前提は、今後数年間の戦略と中期計画が、存在するかどうかである。
中期計画は、プロセスであり、マイルストンでもある。中期計画で実施される実際の仕事に必要な役割が、定義されなくてはならない。
理想論で役割を定義するより現実に実施する仕事の面から必要な人材像と職務モデルを明確にする必要がある。
機能する職務モデルを計画と照らし合わせることだ。
- 戦略に関係するプロセスは、はっきりとしているか?
戦略を実現するためのプロセスは、明確になっているだろうか?不明確であれば、中期計画や実際に行っている業務を分析し明確にしなければならない。
IT戦略、構想企画、プロジェクトマネジメントのプロセスなど組織の活動を支える主要なプロセスを明確にすることで職務モデルの役割や責任を照らし合わせる。
また、社内のリソースで実施するプロセスとアウトソーシングするプロセスを計画することも必要だ。
プロセスには、経営管理やリスクマネジメント、監査などのプロセスも含まれる。
- 戦略、プロセス、役割と責任(職務モデル)は、必要なスキルを定義する前にそろっているか?
プロセス、役割と責任が明らかになって初めてスキルが定義できる。スキルを定義し組織のスキルの評価を実施する。
戦略とのギャップを明確にし、優先度を付け育成の実施戦略を立案する。
個人の立場で言えば役割、責任と必要なスキルギャップが明確になれば教育の半分は、終わったようなものだ。後は、機会を与えればよい。
1.から4.は、どの順番で明確にしても良いが、これらの前提が無くて、教育コースだけを育成手段として実施している企業も多い。
2-3ヶ月かけて育成のための基盤作りをするのが良い。基盤を幹部自身が、構築することで、幹部の勉強になるし、ベクトルが統一される。
決して部下に投げてはならない。
部下が作ったものを理解しようとしても、魂は決して入らない。