アントレプレナーシップは一般には企業家(起業家)精神と意味されるが、最近では企業家精神を有して行う活動全般を指すようになってきている。元々の語源は貿易商(仲買人)を表すフランス語「Entrepreneur」にあり、それが英語となったものとされ、経済学者J.A.シュンペーターによってイノベーションを遂行する当事者を指すことで経済的用語として定義された。
最近ではベンチャー起業家など企業そのものを起す起業家が着目され、またその必要性が社会的に叫ばれている。しかし一方で、長い不況から回復してきた大企業においてもアントレプレナーシップは再び重視され始めている。この10年、多くの企業は事業ドメインを一番強い分野に絞込み、ドメイン拡張のリスクを抑制することによって業績を回復させた。しかしその反面、経済のグローバル化などの市場環境の変化に対応することができず、ここに来て急速に新規サービスや事業を立ち上げ、それに対応しようとしている。
また社会全体においても起業の数が減り、日本経済全体の将来を危ぶむ声があって、国を挙げての起業支援の動きが活発化している。
今日のアントレプレナーシップを構成する要素としてよく挙げられるのは、「ビジョン構築能力」、「リーダーシップ」、「意志力」、「行動力」、「経済感覚」などであり、これはまさしくプロジェクトマネジャに求められる資質でもある。
またさらに顧客の要望と自社の利益確保などのトレードオフや、矛盾する要求に対する対応能力も求められる。しかしながら最も重要な要素は、確立された個の意識に基づく「個人力」、「人間力」と言われ始めている。具体的には創造に対する真摯な姿勢や、それを実行するために必要な、高い視点から自分や自らのチームを客観視できるような見識などを備えた他者への影響力、求心力と言える。
イノベーションや起業、プロジェクトの運営にしても、内外の人や組織の協力無くしては実行できない。したがって他者に自然にそのような協力的な態度をとらせるような人間的な魅力が無ければ、新しい事をするにしても人を集められない。「個人力」、「人間力」は、このような意味で人間が備えている全人格的な資質とも言える。
今日の社会ではこれまでのような権威や権力、待遇的なインセンティブだけではなく、人間的な魅力がなければ影響力は十分に発揮できないとも言えるかもしれない。したがってこのような「個人力」、「人間力」をどのように身に付けるかということもリーダーになるための重要な要素となると考えられる。