プロジェクト・コミュニケーション・マネジメントは、先のプロジェクト人的資源マネジメント同様に単なるプロジェクトチームメンバーを対象とするものではなく、プロジェクトに関与するメンバー(プロジェクトのステークホルダー)全体を対象とする。
その目的はいうまでもなく、プロジェクトを成功に導くためにステークホルダー間で、各個人の考えや共有すべきプロジェクトマネジメント情報の流通を密接にすることにある。
PMBOKでは、プロジェクト・コミュニケーション・マネジメントを、「コミュニケーション計画」、「情報配布」、「実績報告」、「完了手続き」の4つのプロセスで構成している。これは情報の生成、収集、配布、保管、廃棄といったプロジェクト情報のライフサイクルを適切かつ確実に管理するためのプロセスと言える。
「コミュニケーション計画」は、5W1H(Who,What,When,Where,Why,How)が適切に盛り込まれた情報共有(報告・連絡・相談等の所謂’報連相’)を、メンバー間で確実に行えるように計画すべきである。そのために、ステークホルダーが必要とする、または知っているべき情報内容(コンテンツ)のニーズを把握し明確にすることから始める。そして情報収集や配布の方法、タイミング、ステークホルダー毎の各情報へのアクセス権限などを計画し、コミュニケーション計画書としてまとめる。
「情報配布」は、ステークホルダーへの情報の提供に係わるプロセスである。情報配布は、膨大な情報を検索できる有効さなどの点からも、ペーパー文書で行うよりも電子メールやグループウエアなどを使った電子文書での流通を第一に考えるべきである。しかしその際、ステークホルダーの情報リテラシーや、グループウエアを使えない環境にいるメンバー、使用方法に抵抗のある高齢なステークホルダーに対しても十分な配慮がされなければならない。またそれぞれのメンバーのコミュニケーションスキルへの配慮も必要である。たとえば複数の組織で構成されるプロジェクトの場合は、特殊な組織内言語や業界用語の解説書なども場合によっては用意することが望ましい。
「実績報告」と「完了手続き」は、プロジェクトの進行・終了という状態情報を共有するプロセスである。実績情報である状況報告、進捗報告、予測といった情報のほか、フェーズ毎や、プロジェクト全体の完了情報は、伝達されるタイミングが大切な生な情報である。したがって情報の更新の仕組みや迅速確実な伝達がなされるようにここでも各種電子ツールなどを用いることが有効である。
多くの失敗プロジェクト事例を見ると、そこには、必ずと言っていいほどコミュニケーションに係わる問題が存在する。「コミュニケーション計画」によって情報を共有する仕組みを計画、構築することは可能であるが、人は自分の立場に不都合な事を隠したがるという心理まで乗り越える事はなかなか難しい。したがってプロジェクトマネジャはそういったステークホルダーの心理に常に配慮する必要がある。そのためにプロジェクトを常に風通しのよい状態に保つこともマネジャの仕事の一つである。