ここ数年の間、私は、IT戦略の策定とプロジェクトマネジメントに関する仕事をしています。顧客の中に飛び込み問題解決に取り組む中で感じている日本のITの本質的な課題について考えてみたいと思います。
日本の産業は、70年代、80年代、90年代の初めまで他の国に類を見ない発展を遂げてきました。これは、驚異的なことですし素晴らしいことです。90年代に起こったバブルの崩壊以後、様々な変革に対する努力がなされてきました。しかし、この努力は必ずしも有効ではなく、いまだにバブル崩壊の影響は大きく残っています。バブル以前の発展の時期に失ってしまったものが、多くあるような気がしています。
IT業界は、バブルの影響をさほど強く受けることも無くこれまで順調に発展してきたといえます。しかし、いま、業界そのものの使命が大きく変化しつつあり、画一的な人材提供が求められる拡大期から、多様で固有のニーズへ対応するためのマネジメントと技術の提供を求められる時期に入っています。このような時期には、いままでうまくいっていたことが、まったく通用しなくなったり、いままでの常識を覆すニーズが、現れたりします。
いま、多くのIT部門、SI事業会社への変革が求められています。量的、画一的な提供者や伝統的な頭の固い組織は、滅びるでしょう。一方で、変革のリーダーシップの取れる組織は、最も重要なポジションを得る事が出来るでしょう。
これらのことは、新聞、専門誌などでかっこよく書かれていますが、本当にどのようなことをすれば良いのかが分かりません。どんな行動が、役に立つのかもさっぱりわかりません。これまでの順調な発展が、変革への能力を退化させているのです。
これらを実現するためには、何が必要なのでしょうか?
いまこそ、組織の戦略と真のリーダーシップが、必要です。多くのIT組織と関って仕事をしてきましたが、殆どの組織に共通して言えるのは、戦略が無い、変革への計画が無い、改善の意識が、経営層、管理者層にないということです。
また、個人についていえば、プロ意識が無く、ただ、不満をもって忙しく仕事に従事しているだけです。
活力のある組織には、目標があります。また、個々のメンバーには推進力と明るさを感じます。
正しく仕事をする方法を考える前に、以下のことが欠如しています。それは言うなれば、方法は存在するが、魂が無いという状況です。
(1)腑に落ちる夢・ビジョン・目標を明確にすること
(2)51%の可能性に勇気を持って望むこと
(3)目標をメンバーに納得させ、チームの力を信ずること
(4)決して諦めないこと
(5)そして、自分自身が実行主体として行動すること
なぜ具現化が、難しいのでしょうか?その答えは、リーダー自身が、これらを消化しないで部下におろしてしまうからです。変革を実現するプロジェクトは、簡単ではありません。当然です。だからこそ”プロジェクト”なのですから。もう一度、自分のビジョン・目標・役割を見直しましょう。欠けている本質的な部分を見直しましょう。中身の詰まった強いメンタルモデルを持った組織を作り上げましょう。
強く実現を欲する目標と強いメンタルのチームが無ければ、手段がいくら正しくても成功する筈がありません。困難なことを主体的に実現する人が、”リーダー”です。
<第3回につづく>